【第四十話】武器合成
「さて、今日はいよいよ集まった素材を使おうと思う」
「わーパチパチー」
「……まぁ良い。お前もなんだぞルクレティア」
「はい! ……え? 何の話でしたっけ?」
「素材を使う話だ」
「わーパチパチーイェーイ」
「……」
日増しに素を解放していくルクレティア。雑になる俺への対応の一方で、そんな彼女の在り様を心地良く感じる自分が居る。やはり飾り気のない状態が一番だと言う事か。
「時にご主人様、錬成技師のドワーフに知人でも居られるのですか? えっと、確か前回聞いた時にそれらしい事を仰られていましたので」
「あーそれか」
そう言えばそんな話もしたな。
すまない、それは少し間違いが含まれている。
「俺が錬成出来るかもしれない。まず今日はそのチャレンジからして、無理だったらドワーフを探そう」
「……え?」
今にも「そんなまさかー」と笑い出しそうな表情をしているルクレティア。声が顔に出ているぞ。
「確か材料はウィンドバットの翼にサイクロンウルフのツノ、キラーホークの爪だったな。改めて見ると、中々に骨の折れる作業だった」
「全てレアドロップですからね」
そう、素材を探し始めて今日で五日目となる。当初予定していた感じでは二日もあれば全て揃う物だとばかり考えていたのだが、かなり見立てが甘かった様だ。特に最後の一つとなってからが中々ドロップしなかった。何というか、そんな物なのだろう。
宿も同じ宿の別の部屋へと移動させて貰い、ここでは倍ほどのサイズのベッドと空間が広がっている。せせこましい思いとはオサラバ、かと思いきや。やはりベッドの真ん中で俺を中心に皆が集合して眠る日々が続いている。簡易的で幸せな檻に閉じ込められている気分だ。
それはさて置き。
「では、始める」
ダンジョンコアを取り出し、素材の中心に置いてみた。ここがしっくりくるからここに違いない。恐らく超集中や鑑定の時の感覚で使えば発動するのだろう、そう安易に考えていた事が予想通りに発動し、緑色の発光を見せたかと思うと、素材はその場から消失し、ロッドだけがその場に残った。だが、ロッドの先端にあった無色の球は、今はハッキリとした緑へと変色している。
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【魔法樹のウィンドロッド】
攻撃力 : 20
能力スロット 魔 風 ◯
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鑑定でも確認したが、どうやら上手くいったらしい。
「ななな何故ご主人様が錬成を!? まさかドワー」
「断じて違う。ただ少し特殊なだけだ。他言は無用で頼む」
「はぁー、秘密が増えていってしまいます」
「そうだなルクレティア。お前達だけが知っている俺は、お前達の中だけ、という訳だ」
「ハァァァァンご主人様キスさせて下さい、ちゅー」
「待て待て待て、今のは俺が悪かったから。先にやるべきを済ませよう」
そしてドサクサに紛れてダンジョンへ行こう。
「ほら、これがお前だけのロッドだ」
「私の……ロッド」
渡されたウィンドロッドをマジマジと確認し、自身の周囲に僅かに風を発生させたリーシャン。涼やかで綺麗な風が頬を撫で、それを受けて改めてリーシャンの表情を見ると。
何とも感慨深い雰囲気を見せ、心無しかワナワナと震えており、何ならやや泣きそうにも見えてしまう表情だ。嬉し泣きだと信じたい。
「さて、次の材料はー」
こうして俺はローメイのロッドも錬成に成功した。二人のロッドにはまだ空きスロットの枠が一つ残されている。二人のスタンスに合わせてまた改めて何かを合成しよう。
「これが、僕だけの……」
「大切にしてくれよな」
「もも勿論です。た、宝物です……」
「そう言って貰えると俺も嬉しいよ」
アースロッドをギュッと抱き締めるローメイの頭を軽く撫で、そして改めてダンジョンコアを見遣る。コアの発光が薄くなっているも、未だ崩れずに健在である事から、後一度の合成には耐えてくれる様だと安堵する。
次の錬成は素材【幻影剣の宝玉】だ。これは武器に錬成する事で、魔力を消費する事で剣の上下に実体を持った剣閃を作り出す事が可能な宝玉。道無きダンジョンの下層に出現する魔物からのレアドロップだ。
「成る程、ご主人様の剣が更に強くなるのですね」
「いや、これを合成するのはルクレティアの剣だ」
「そうなのですか。……え!?」
「ん? ……兎に角、ナイフを出してくれ」
「え、あ、はい。これでよろしいでしょうか」
イマイチ状況が飲み込めていないルクレティア。ここ数日リーシャンとローメイの合成素材探しが続いたから、まさか自分の分まであるとは思わなかった様だ。
コアとナイフと宝玉を一箇所に纏め、そして錬成を意識する。やはり錬成自体には何も問題なさそうだ。無事に成功だ。ナイフの見た目は何一つ変わらないが、
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【ミスリルマシェットナイフ】
攻撃力 : 48
能力スロット 硬 幻
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スロットは埋められている。大丈夫そうだ。
「見た目は変わらないが錬成には成功している。ルクレティアの剣だ」
「わ、私も錬成をして頂けるなんて……」
ルクレティアまでも渡されたナイフをギュッと抱き締め、皆がその装備を大切に扱ってくれている。渡した側としては嬉しい限りだ。
「ルクレティア、その幻影剣は恐らく【必殺】の働きをする場面でこそ輝く技だ。ダンジョンの魔物でしっかりと鍛錬を積み、ここ一番でしっかり決めてくれ。一撃必殺が肝となるだろう」
「わ、わかりました。私、必ず鍛え上げて一撃必殺を為してみせます。必ず、必ず!」
「一撃……必殺」
三者三様ではあるが、それぞれが自身の相棒となる武器を大切そうに眺め、改めて鍛錬を心に誓っている様だった。何故かローメイが一撃必殺に感銘を受けている様だったが、真意はよく分からない。だが彼女もまた、アースロッドを嬉しそうに眺めてくれている。
本当に俺は、得難い仲間を得られたよ。有難い事だ。




