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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
三章 嘆きのダンジョンと双子の過去
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【第三十九話】一夜明けて

 目が覚めると、俺を中心に右左にリーシャンとローメイ、そして俺の上と言っても過言ではない胸板の辺りでルクレティアが眠っていた。起き辛い、起きて良い物だろうか。


 うわぁ、身体中ベトベトだ。こりゃまたタオルと布団を買い取りか……やれやれだ。


 俺はまず腕にしがみ付いていたリーシャンとローメイを優しく解くと、次にルクレティアと自身の位置を入れ替える様にその場を離れた。


「んん……」

「ご主人様……」


 すると、リーシャンとローメイが俺の代替えにルクレティアの腕を絡め取り、再びしがみつき始めた。微笑ましい光景だ。


 まだ深く眠る彼女らの髪をそれぞれ優しく撫でてみる。ルクレティアの髪はツヤツヤしていてとても触り心地が良く、やはり耳周辺の感触の秀逸さはピカイチである。


 それとは対照的に、リーシャンとローメイの髪は少しパサパサしており、何というか、あまり詳しくは無いが水分や栄養が足りていない様な印象を受けた。


 俺に必至に尽くしてくれた二人の身体は、どこか痩せ細っており、肋骨や鎖骨が形状として把握出来てしまう程の見た目で、栄養の欠如が如実に出ていた様に思う。


 あのクソ三馬鹿どもめ、どんな扱いでこの二人との時間を過ごしていたらここまでの状態になると言うのか。次会ったら殺……、いや、奴らは死んだのか。報いは受けた……と考えておけば良いのだろうか。それで良いか、これ以上は不毛だな。それに今の俺に出来るのはそんな下らないことでは無く、この二人に温もりを提供する事だ。履き違えないで居よう。


 よし、朝飯の準備だ。



 *



「ご主人様、今日は何をしますか? もぐもぐ」

「食べながら話すな馬鹿野郎。今日は昨日の続きだ」

「え、朝からですか? 私は構いませんが……んっ」

「勘違いするなよ、ダンジョンだ。ダ ン ジョ ン だ!!」

「あ、そっちれしたか。もぐもぐ」


 朝っぱらからお盛んでお花畑全開のルクレティアは、何が何でも(しも)の話に結びつけたいらしい。「私は構いませんが」などと言いながら、服の首元を人差し指で引っ張る事で確認した後、自身の胸を軽く揉みしだいてそう言ったのだ。俺が構うっての、朝から艶かしい声を出すな。

 勘弁してくれ。


「えっと、あ、あの……大変なのでしたら、その、僕が動きましょうか?」

「私が、口でー」

「そこまでにしておけ。違うっつってんだろ馬鹿野郎共」

「ぁぅ……」

「ぅぅ……」

「あ、いや、怒っている訳ではないんだ。すまない」

「あーあー、ご主人様ったら酷いんだー」

「誰が発端だ誰が。決まっている、お前だルクレティア」

「私? 私がー」

「もう良い、先が読めた」


 一晩過ごして分かったのは、この二人が尋常ならざる経験者であったと言う事。その麗わしい見た目と、細っこい身体、そして未発達かの様な胸囲に対して、その中身は対照的と言っても過言では無いものだった。


 まずこの二人はそもそも年齢が四十六歳なのだ。俺と比べるとダブルスコアで年上だと言う事になる、聞いた時は本当にたまげたよ。その上で、エルフという種族の特色である長寿の効果から身体の発達が人のそれに比べて緩やかなのだと言う。


 そして、これを経ずして何も語れない根幹。それは奴隷期間が【総計十四年間】だったという事。途方もない時間だ。彼女らの一生からすれば僅かな時間だと、自分達の口でそう言っていた。だが俺の人生とほぼ同じだけ苦痛に塗れた時を過ごして居たと言うなら、俺はそれを看過出来そうにない。


 エルフでは無い俺の一生は、彼女らと同じ速度では無い。せめてこれが僅か一時の事であったとしても、何かを残してやれればと、つくづく思う次第だ。


 それと、彼女らの父親こそ死んでしまったらしいのだが、母親は生きていれば何処かで奴隷をやっているらしい。十四年前に別れたきり消息不明故、早々に見つかりはしないだろうが、叶うなら何とかしてやりたい所。どこから手を付けたものやら。


 ……っと、我ながら中々に賢者モードだな。

 しかしこの状態を【賢者】とは良く表した物だ。

 正に言い得て妙という奴だろう、少し笑えるな。


「ダンジョンで素材集めだ。まずは足場固めから、一つずつきっちり行こう」

「装備を充実させる訳ですね、流石ですご主人様。では残りの土属性の素材集めに向かうダンジョン、それを絞っておきます」

「頼むよ」


 通常モードだと頼りになるのだが、どうも調子が狂うな。彼女との付き合いはまだ二週間程度、そりゃ分からないのも無理はないか。


「あの……私たちは?」

「どうすれば良いですか?」

「二人は魔法の感触を確認して欲しい。最終的には本当に手強い敵が出現した時、反射的に発動できる所までだ」

「わかりました、がんばります」

「やってみます」

「二人も頼むよ」


 慌てる必要は無い。俺たちは今、時間的な制限に追われている訳でもないからな。それにルクレティアも新しい剣に慣れてきたのなら、剣に合成素材を入れてみたい話も残っている。


 まずは全員ゆっくりと慣らして、それからしっかり鍛えよう。それは、俺も同じ事だ。

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