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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
三章 嘆きのダンジョンと双子の過去
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【第三十一話】報償金の用途

「流石はご主人様です。私は嬉しくて嬉しくてちょっと今泣きそうです、泣いてました! うぇーん」

「落ち着け」


 冒険者ギルド、その奥の間にて、支部長を名乗るベルモンドからギルドランクにおける【B】扱いとなる事を言い渡された。


 これも薄々そんな気はしていたが、いざ現実にこうなってみると、経験に紐付いた物では無いという観点から【要注意】だと言えるだろう。調子に乗れば即死亡、という訳だ。


 現に先日、安全に安全を重ねて活動していたつもりがあの顛末。何か一つでも違えば全滅もあり得た場面だった。引き続き気を抜かぬ様、励まなければな。


 と、奥の部屋から出入り口を目指す帰り道すがら、受け付けに何やら強そうな奴を見かける。これは流石に今鑑定したならばまず以ってバレるだろうな、スルーしておこう。あんなのに目を付けられたらたまったものじゃない。


「なんやあのアホ共死んだんか!?」


 ん? なんだ、騒がしいな。


「俺がしばいたろー思た矢先にか? ハァーこんなんばっかや、やり切れんなー。ほならアレか、奴隷は殉職か?」

「えっと、それに関しましては……」


 ……リーシャンとローメイの知り合い、なのか?

 いや、藪蛇にはなりたくない。

 聞かなかった事にしておこう。


 そしてその後、俺とルクレティアはダンジョン攻略の成果報酬として金貨百枚を受け取り、ギルドランク【B】の称号を得て、その場を去る事となった。


 まさかコアだけでなくダンジョン自体にも報酬があったとはな。どうやらダンジョンは放置する事で、やがてその中から魔物が溢れてくるらしく、魔物の駆除の中でも上位に位置する依頼扱いとなるそうだ。


 これでコアを売る必要も無くなった。

 ひとまず宿へ戻ろう。



 *




「すまない、遅くなってしまった」

「「ッ!」」

「……すまない」


 宿の自室へと帰還すると、そこには怯えた二人の少女の姿があった。どうにもこちらをジロジロと見ており、どちらが品定めされているのか分からない気分になってくる。まぁそれは気にしないのだが。


 額や身体に汗を滲ませており、何かしらの緊張感を思わせる。俺と対峙する事を恐れたにしては反応が過剰に思えるな。夢見が悪かったのだろうか。


「さて、まずは二人の必要な物と、ルクレティアの装備を買い直そう」

「そんな!? 昨日ご主人様に買って貰ったばかりなのに!?」

「そうは言うがなルクレティア。気持ちは分かるし、俺も悲しくはあるが、その装備では流石に無理があるだろ?」

「うっ。うぅ……確かにその通りなのですが………」


 そう、何を隠そう昨日ルクレティアに買い与えた装備一式は、僅か一戦にして信じられない程に削られていた。もうボロボロだ。そしてその中でも特に酷いのが武器だ。ミノタウロスへ斬撃を加えた事で刃先がほぼ死滅している。こんな状態では戦えまいて。


「こ、これはご主人様に初めて買って貰った物なので……」

「分かった、それは異空間収納に残しておくから、な?」

「うぅ……、分かりました。本当は私も分かっているんです。流石に無理がありますよね、この状態では」


 鞘から取り出したナイフを見て、改めてそう発言するルクレティア。にしても、本当に削られたなこれ。次の一撃をミノタウロスに放っていたなら、そこで間違いなく折られていただろう。


「研ぎ直すにしても時間とお金が掛かりますしね」

「そういう事だ。どうせならもう少し上のランクの物を探そう」

「ありがとうございます。ご主人様とまた買い物が出来るなら、それはそれでとても楽しみです」

「調子の良い奴だ」


 あ、そうそう。一つ思い付いた事があったんだ。

 これも聞いておかなくちゃな。


「ルクレティア、金を輸送する手段というのは存在するのか?」

「お金を輸送ですか? 荷物の輸送ならお金を支払えば可能な筈ですが、お金のみの輸送は聞いた事がありませんね」

「ふむ、成る程」

「?」


 そりゃそうだよな、流石に無いか。ならば解錠の魔法をコントロールする他ないな。何とかしてみよう。


「【条件解錠】、発動。これでどうだろうか。二人で開けてみてくれないか?」

「え!?」

「え!?」


 突然俺に箱を渡されて困惑する二人。そして、言われた通り箱を開けようと必死になるも、開けられず。


「私の筋力なら開けれますかね?」


 脳筋が何か言い出したがやめてくれ。

 と言うかお前の箱なんだぞこれは。

 壊そうとするな壊そうと。


「いや、ルクレティアが触れたら勝手に開く筈だ」

「えっと……え!? 何もしてないのに開きましたよ!」

「「え!? 嘘!?」」


 よしよし、これなら大丈夫そうだな。

 上手くいって良かった。


「ルクレティアと近しい魔力の性質をした人が触った場合にのみ【解錠】が働く様に作ってみたんだ。恐らくルクレティアの母や妹にも開けられる筈だ」

「はぁ、私のお母さんですか? 何故その様な必要があるのでしょうか」


 ルクレティアは本当に分からないと言った表情をしているが、この件に関しては、俺の懸念材料の一つだったからな。これを機に試して解決しておきたい。


「ルクレティアの母親、及び家族へ送金しようと考えている」

「成る程、えっと、えぇぇ!!?? それって……」

「確か父が不在故の困窮でかなり切羽詰まっている、って聞いた気がするんだが」

「そ、それはそうなんですけど……」

「金貨二十枚程入れておけば暫く保つか?」

「金貨二十枚!!?」

「やはり足りないか、三十枚にしておこう」

「さささ三十枚!!? え!? そ、それはどの様な扱いのお金になるのでしょうか?」

「扱い? あぁ、貸付の条件や利子についてか?」

「は、はい」

「強いて言うならプレゼントだな、気にするな」

「プレゼント!!?」

「「えぇ!?」」

「ん?」


 こちらとしてはこれから暫くルクレティアを拘束する故、稼ぎ手を借りる身として当然の事したつもりだ。それに俺としても、ルクレティアの家族に懸念があってはやり辛いだけなのだが……。


「そ、そんな、良いのですか、私、その、まだ何も……」

「そんな気負わなくても。たまたま手に入った金なんだし、今急を要する点はそこくらいだしな。使い道も装備を整える程度の事。明日を生きる金も心配なし。なら問題ないのでは?」

「ありますよ!!!」

「ん?」


 この後、何故か俺がルクレティアを説得する流れに。


 何故なのか。

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