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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
二章 道無きダンジョンと双子の奴隷
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【第二十四話】vs ブラッディミノタウロス

 今考えるべきは俺とルクレティアの安全、そして退路と手順。特に退路は無い可能性までを視野に入れる必要があり、その場合は目標が撃破に切り替わる。出来れば御免被りたい。


「畜生クソギルドめ!! 何がEかDクラス以下のダンジョンだ!! Bでも危うい場所じゃねーか!!」

「クソクソクソ! 騙された!! コイツらを囮にして逃げるぞ!!」

「だな、あんなのとやり合えるかってんだ!」


 向こうも似た様な判断ではあるみたいだが、どうやら奴隷は見捨てる方向性らしい。


「ヒッ、や、やだ……」

「ハァハァ……」


 ……やれやれ、寝覚めの悪い状況だ。これで生き残ったとしても後味が悪い。俺とルクレティアの安全は絶対だ。だがその範囲内でなら多少は、な。


「ルクレティア」

「はい」

「主人が死んだ場合、奴隷はどうなる?」

「……殉死します」


 だよな。じゃなきゃ奴隷が主人を殺せば解放されるって流れが当たり前になっちまう。命令遵守を踏まえて考えれば当然の事か。恐らく、命令に反いた場合の身体的ペナルティや逃亡時のリスクなども盛り込まれていると考えるべきか。


「なら奴隷の所有権を放棄させるには?」

「主人が自ら進んで奴隷紋に触れ【解放】を宣言すれば可能なはずです」

「成る程な」


 自ら進んで、が肝だな。手順を間違えれば奴隷の立場や扱いを考えるに、命に関わりかねない。上手く立ち回らないとな。


「では奴隷紋の効力は何処に効いている? やはり心臓か?」

「え? あ、えっと……答えとして適切かは分かりかねますが、奴隷紋を刻まれた時点で脳を含む全身へとその効力が根付き、所有者との契約は心臓と成される、と聞かされました」

「十分だ、助かるよ」

「助かるだなんてそんな、ありがとうございます」


 少し考え違いをしていたな、危ない危ない。

 ーとは言え。

 当面の問題は敵であるミノタウロスがどう動くかだ。


「ルクレティア、こちらは気にせずに探索を始めてくれ。ヘイトがそちらに向いたならカバーする、兎に角防戦に勤めて探索を最優先に」

「分かりました、では早速」


 流石話が早くて助かるよ。素早くその場から移動したルクレティアは、放っておいても巨大な円形を模したこの室内を虱潰しに探索してくれる。そっちは彼女に任せて大丈夫だ。むしろ俺はー


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!!」


 猛進するミノタウロス。その手には不気味な程に漆黒の刀が握られており、アレを喰らったなら即死だろうと容易に想像が着いてしまうのが嫌になる。


 狙われてたのは、向こうだ。


「そら行け一号! お前の晴れ舞台だ!」

「嫌っ、痛っ!? き、キャァァァ!!」


 チッ、ここで助けに入っては俺もどうなるか予想がつかない、だがあのまま放置すれば……?

 何だ、ミノタウロスの気配が?

 まさかアイツ……!?


「嘘だろ!?」

「クソクソクソ!! 最悪だ!!」

「グォッ!? 死ぬ気で避けろ!!」

「ブモッ!!!!」

「……へ?」


 巨大な空間の片隅、剣士三人衆がいたその場に強烈な打撃を仕掛けた。その圧巻の一撃は地面を容易に砕き、衝撃波が周囲に迸る。


「グッ!?」

「生きてっか!!」

「オゥ、だが喰らうとヤベェぞ」

「あのヤロウ、奴隷共を無視しやがった!!!」

「ブロロロ……」


 そう、ミノタウロスは奴隷少女の横を素通りし、戦士たちへのダイレクトアタックに出ていた。奴の視線が明らかに少女達へ向いておらず、違和感を覚えたのだが。どうやらその勘は当たっていたらしい。


 だからといって、見逃される訳ではなさそうだ。


「この野郎……何おっ立ててやがんだ!!」

「キメェ……まさか俺らを殺した後に?」

「汁が溢れてやらァ、最悪だ」

「ヒィィィィ!!?」

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い……」


 ミノタウロスは血に塗れた様な赤褐色のマダラ模様となっており、その赤い部分が薄らと光を帯びている。そして目は真紅に染まり、やはり光を帯びてその存在を強調していた。


 全長は三メートルくらいか。脚力も申し分なく、想像以上に素早い移動をしてくるから注意が必要だ。


 そして、何よりも今不気味なのは、やはり猛り狂った様に天を仰ぐその男性器にあるだろう。悍ましい程のサイズを誇り、まるでそこに心臓が宿っているのかと勘繰りたくなる程に脈打っているのがこの距離でも視認出来てしまう。


 あんなものをぶち込まれては、大抵の奴は死ぬだろうな。

 ……だから頑丈な冒険者の雌を狙っているのか。

 チッ、変な所で納得してしまった。


 ミノタウロスは少女達へと視線をやると、その馬とも牛とも形容し難い表情を歪ませ、口から大量の唾液を惜しげもなく溢れさせる。今から犯す時を想像して楽しんでいるのだろう。


 実際、ここにいるメンバーそれぞれはコイツの敵にはなり得ない。明らかに突出している。それ故に、俺たち雄の冒険者を皆殺しにした後に、ゆっくりと愉しむつもりなのだろうな。


 こっちとしては、奴隷少女共を護衛する必要が無くなる分、また少しだけ生存率が上がったと言える。となると、かなり状況は飲み込めてきたな。後は……脱出経路くらいか。


「オイ三馬鹿」

「ンダコラ!!!」

「殺すぞ!!!」

「俺は逃げる、達者でな」

「は!?」

「待て待て待てコルァァァァァ!!」

「逃げんのかテメェ!!」


 逃げるっつってんだろ。

 何の為の耳と頭だ、ちゃんと聞け。


「俺の速度ならコイツから逃げきれる。それが全てだ」

「こんの野朗……」

「糞が……」


 実際は微妙な所ではあるが、多分本当に逃げ切れるだろう。

 ()()()()()()()な。


「だがお前ら良い奴隷を持っている様だな。そいつらを手放すってんならここに残って戦ってやるが、どうする?」

「アァ!?」

「戯れるな、二度言わせたら先に殺すぞ」

「……チッ」


 生き残るには俺の存在は欠かせない、だが俺は単独でなら逃げ切れる。引き止めるには奴隷を引き渡すしかない。


 さて、どうする?


「分かった、後でやるよ。それでどうだ?」

「ダメだな、今寄越せ。でなければこの話はこれで終わりだ」

「クソが!!」


 そんな手に乗るかよ、とっとと腹を決めろ。

 全員死ぬか、手放すか。


「……クソッ、解放するからフォローしやがれ!!」

「ま、それくらいなら協力するさ」

「ブモオオオォォォォォォ!!!」


 ノッてきたな。

 これで後は退路だけか。

 頼むぞルクレティア。

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