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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
二章 道無きダンジョンと双子の奴隷
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【第二十二話】平穏の崩壊

「あぅ、こんなに買って頂いて。私自身が銀貨五十枚の価値しか無いというのに……」

「やめろ、俺の宝物を悪くいう事はルクレティアとて許さんぞ」

「へぁ!? た、宝物!?」


 その後、防具も新調し、鉄板入りの胸当てに腕や足のサポーター、そして額当てと。俺もルクレティアもスピード重視で戦うタイプ故、戦士系の装備に比べるとかなり軽装に仕上げる結果となった。


 ゴテゴテした装備は強いかもしれないが、どうも感覚的に違和感を覚える。俺としてはこれくらいの装備の方が戦い易い。


 靴もつま先に鉄を仕込みつつ比較的軽い冒険者向けの靴を購入し、全身合わせて金貨八枚の出費。持ち金をほぼ使い切る結果となったが、むしろ足りた事を喜ぶ事にしておこう。


 ダンジョン自体もかなり慣れてきている。四階層へも滞りなく辿り着ける上、現地で狩りをする事も可能だ。この分だと、俺たちもそろそろ階層の続きである『未確認の道』を探し始めても良いかもしれない。それくらいの余裕は既にあるだろう。


 とは言えまだ武器武具のテストがある為少し慎重に動く予定だが、早ければ今日の午後からでもテストに向かい、明日は朝から探索作業をしてみるも良いだろう。


 かなり状況が進展してきたな。


「さて、少しダンジョンへ向かおうと思うのだが、どう思う?」

「うへぇぁ、私がたかりゃもの……」

「……オイ」

「はい勿論! 所で何と仰られたのでしょう?」

「ダンジョンに行」

「行きましょう!!」


 よし、今日は装備の試運転だ。

 ある程度探索したら早い目に引き上げよう。



 *



【道無きダンジョン 4F】


「ルクレティア!」

「お任せ下さい! ハァッ!!」


 低い姿勢で駆け抜けるルクレティアは振り下ろされた棍棒を軽く回避すると、お礼を返すと言わんばかりに首へ一閃。何が起こったのかも理解できぬままその場で塵と化したゴブリンファイターだが、奴の後には後二匹のゴブリンファイターが控えている。


「ギギィィー!!」

「ハッ!」


 横薙ぎに繰り出された棍棒を背面跳びで回避してみせると、空中で反転し伸び切ったゴブリンの腕を右手のマシェットナイフで切断。更にもう一体から繰り出された棍棒は彼女の左手に握られたナイフに進行を阻止される。そしてガラ空きになった胴体を右手のナイフが悠々と通過した。それによって重量の掛からなくなった左手のナイフが自由となり、直ぐ様もう一匹のゴブリンの首をも空へと跳ね飛ばした。


 綺麗な戦闘だ。元々敏捷性に優れたステータスをしていたが、事現在に至っては彼女の攻撃は舞にも映る美しさを誇っており、見ているこっちとしては関心させられっぱなしでついつい見入ってしまっている。


 と、よく見ると。消滅したゴブリンの居た場所に、魔石ではない何かがドロップしている。見た目は丸く綺麗な石の様だが、レアドロップか?


 ━━━━━━━

 ・鑑定の結果

 合成素材【幻影剣の宝玉】

(魔力を消費する事で剣の上下に

 実体を持った剣閃を作り出す)

 ━━━━━━━


 合成素材、か。初めて見たな。恐らく低層階の魔物ではレアドロップであっても落とさないのだろう。四階層の、しかもゴブリンファイターからのレアドロップ。これはなかなか使い道がありそうだ。と、ひとまず異空間に収納しておこう。


「剣の感触はどうだ?」

「凄く良い感じです。前よりもリーチが伸びた事で動きに余裕と幅が出来ました。更に両手に持つ事で前に出る場面での危うさが激減した様に思います」

「確かに、それは見ていてもそう感じる」

「ありがとうございます。なのでもう少し訓練は必要ですが、前のナイフの時よりも遥かにお役に立てそうです」

「そりゃ何よりだ」


 ルクレティアのナイフは嬉々として閃光を紡いでいる。今まで以上にやれる事が増え、本人の感情も良い感じにノッており、眩しい程だ。


「ご主人様はどうですか?」

「普通だ、良くも悪しくもな」

「成る程、ではまだ要観察ですね」

「だな。正直もう少し変化が欲しい所ではある」


 一方俺の剣はと言えば、リーチが伸びた事と攻撃力が増した事により、確かに撃破時間の短縮などは見られる。だが敵が既に倒せる範囲の魔物だからか、イマイチ変化による恩恵は感じられ辛い。もう少し何か欲しくはあるな。


 先程の合成素材を剣に入れてみるか?

 いや、アレは多分俺以上にルクレティアに適正のある内容だった。二刀流に慣れてきたタイミングで彼女の剣に組み込むべきだろう。


「ナイフの癖は大方掴めたか?」

「大丈夫だと思います」

「なら明日からはいよいよ探索だな」

「はい! 私たちもベテラン勢に加わるのですね!」

「ルーキーには変わり無いんだ、油断はするなよ?」

「あぅ、そうですよね。申し訳ありません」


 そう彼女の言う通り、探索を始めるという事は俺たちもいよいよベテラン勢と同じ動きをし始めるという事だ。ルクレティアの気持ちも理解出来る。俺と出会い、奴隷として付き従う道を選び、後衛かと思いきやバリバリの前衛をさせられて。そしてそれが通用すると知って。他者の強さを知り、この数日間という短い期間に、彼女はそこに届かんとする勢いで成長している。ベテラン勢に一泡吹かせる事が出来るとすれば、それは道無きダンジョンの【先】を見つける事になるだろう。気が逸るのも頷ける。


 だがやはり無理をしてまで危険に飛び込むのは極力避けたい。ある程度安全を確保した上で、着実に進めよう。


「ご主人様、あそこ見えますか?」

「何だ?」


 と、そんなタイミングでルクレティアが何かに気が付いた。彼女に促されるがままに示した先を凝視するに、何やら小石の様な物が天井から落ちてきていた。


 あそこの壁に何かあるのか?

 まぁ貴重な手掛かりではありそうだ。


「少し確認してみよう。ルクレティアは周りに警戒しつつ後をフォローしてくれ」

「分かりました、お任せ下さい」


 警戒を怠らず壁面へと辿り着き、その場を軽く調べてみるも、特に変わった点は無さそうだ。


 この壁に変わった点が無いとするのなら、この小石は何処から?


 そんなの決まっている。

 上からだ。

 ならば今まで何も起こらなかったこの場所の上で、どういう事が起これば小石が落下する様な状況になるのか。


 そんなの決まっている。

 そう、思い至るのがほんの一呼吸分だけ、遅かった。


「ルクレティア!! ここから離れるぞ!!」

「え?」


 俺の発言と同時に、天井の岩が崩れ落ち、まるで岩雪崩の如く俺たちの真上から降り注いだ。

 恐らく、回避は間に合わない。

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