【第二十一話】武器の新調
早い物で、俺たちがダンジョンに出入りし始めてから今日で十日目。流石にここまで来ると命の危険を感じる事はほぼ無く、安定して稼ぐ事が可能となった。
そして今日は待ちに待った【魔力供給センター】の営業日。今手元にある魔石は黄色く輝いており、色の段階で言えば5ランク。これは金貨との交換が見込めるレベルに達している事になる訳だ。
「場所は分かるのか?」
「ギルドの地図に載っておりましたので、記憶しております」
「助かるよ」
ルクレティアの案内でラプリンセの街を進み、それ程時を経ずして辿り着いてしまう。翌々考えてみるとここは街のど真ん中で、幾度となく通った道。気づかない方がどうかしている。灯台下暗しという事にしておこう。
入り口付近は中々の列となっており、中に入って終えば受付は三箇所あるようで、案外と列の進みは早い。10分ほど待ったかと思えばあっという間に俺の番となり、魔石を渡して金を受け取る。そして出口へ。さっぱりしたものだ。
だが改めて運営システムを考えるに、平然から常に窓口を解放する様々なコストやリスクに比べると、こちらの方式の方が凡ゆる面で軽減されており、効率的だと言わざるを得ない。買い取って貰う側も【文句を言う奴の魔石は買い取らない】の一言でピシャリだろう。強いシステムだ。
因みに買い取った魔石は街のエネルギー資源として様々な活用をされるらしく、その代わりにこの街に店を構えた時点で売り上げの数%をこの魔力供給センターへと【納税】する事が義務化されるらしい。結果、綺麗で快適で、冒険者たちにとって利益しかない人の集まる活気ある街へと発展していったと、そういう訳だ。
システムを考えたやつは中々のやり手だな。冒険者が魔石を売りたいが為にラプリンセへやってくる、だが営業は月に一回のみなのでこの街で飲み食い宿泊武器武具に金を使い商店が儲かる、商店が儲かると卸ている鍛治師や農家等の一次産業までが盛んに営業する、故にそれら全てから利益の一部を回収し、この街の運営コストと魔石の買取り資金へと当てる。実に見事な循環だ。そりゃこの街が栄える訳だ。
「さて、今日はー」
「装備を整えます!」
「だな、やっとこの日が来たよ」
「ご主人様の安全がより確保されますね!」
「ルクレティアもな」
「わ、私は残ったお金で最低限を、それだけでも身に余る光栄です」
「それじゃ俺が困るんだよ。ルクレティアが大事だから」
「へぁぇぅぁ……、しょの、でしたら、えっと、お、お揃いの武具が、一つでも良いので……」
「そうしよう」
「!!」
遠慮謙遜が過ぎるかと思えば、ちゃんとお揃いを要求してきたりと。コイツとの付き合いは中々に飽きがなくて面白い。ツボもある程度分かってきたから、たまにワザとそこを突いたりするとこうして慌てて本音を言ってくれる。可愛い限りだ。
そして俺たちは金を握りしめて、武器屋へとやってきた。
*
「ルクレティアはどんな剣が好みだ?」
「私はもう短剣に慣れてしまったので、ナイフの様なサイズが合っている様に思います」
「うーむ、とは言え敵の反撃をナイフで凌ぎ切れるのか?」
「あぅ、確かにそうですね。困りました」
露骨に『うーん』と悩むルクレティアが可愛い過ぎてついつい放置しがちになってしまうが、悩む彼女を十分楽しんだ所で一つ提案をしてみる事に。
「二本持ってみるのはどうだ?」
「成る程、それなら攻めも守りも幅が拡がりそうですね」
慣れ親しんだという感覚も大切にするべきだと判断し、ナイフで慣らさせてしまった以上はもう少しナイフで様子を見てみる事にした。だがこれまでの小型のナイフではなく、中サイズ程度のやや刃渡りが確保されている物を選抜する。
「この辺りだと一本で金貨一枚か」
「装飾の無いシンプルな物でお願いします。今は機能性の方が遥かに重要なので」
「確かに」
一応鑑定してみるか?
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【マシェットナイフ】
攻撃力 : 25
特殊効果なし
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ふむ、至ってシンプル。
因みに旅人のナイフだと……
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【旅人のナイフ】
攻撃力 : 10
特殊効果なし
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かなり良さそうではあるな。
因みに完全鑑定だと何か変わるのだろうか。
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【マシェットナイフ】
攻撃力 : 25
能力スロット ◯
特殊効果なし
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ん?
能力スロット?
他のナイフも完全鑑定してみると、能力スロットなる存在がある物と無い物に分かれていた。考えるに、能力スロットは完全鑑定でしか見えないのであれば、これは俺のアドバンテージという事で良いのでは?
恐らく、何かしら合成等に関わる内容なのだろう。
有る無しが別れると言うのなら、有りを買うべきか。
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【マシェットナイフ】
攻撃力 : 25
能力スロット ◯ ◯
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この店だとこれが限界らしい。同じ物が二本あった為、ルクレティアにはこれを使って貰う事にしよう。全容としては黒を基調としており、色の意味合いは恐らく暗いダンジョン等で使う事を想定しての事だろう。刃渡は40センチほど、剣身は細身でサイズ感以上に軽く感じる。持ち手部分に手をガードする装飾が施されており、機能性のある装飾は有りという事でこれにする事に。
黒いマシェットナイフを背中に横刺しするルクレティアは、既に一端の冒険者だ。後は俺の剣と、防具だな。しかしこうなってくると、武具錬成というのにも興味が湧いてきてしまう。【武器錬成】ではなく【武具錬成】とある以上、恐らく防具にも同じ仕様があるのだろう。これはまた楽しみが多くてたいへんよろしい。
その後、俺自身の剣はシンプルな鋼の剣を選択し、能力スロットも二つ確認出来た物を選ぶ事に。攻撃力は35と十分期待出来るレベルだ。俺ので金貨一枚と銀貨七十枚、ルクレティアが二本で金貨二枚。漸くまともな武器を手にできた事で少し気分が高揚してきたな。
この勢いで防具も揃えてしまおう。




