【第十六話】初めてのダンジョン
「ここが入り口か」
「私も初めて見ました」
大きな木の根本部分、そこに暗黒に染まった闇が鎮座し、まるでその先に奥行きがあるかの様に佇んでいる。少し周辺も見て回った俺たちは幾人かの冒険者とすれ違い、それらを軽く鑑定してみる事に。
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【スティーブン・ウィリアムズ】
冒険者ギルド : Cランク
レベル : 21
HP:218
MP:27
筋力:184(×1.2)
敏捷:142
耐久:205(×1.2)
精神:51
魔力:24
装備
【・鉄の兜・鉄の斧・鉄の胸当て・鉄の盾】
スキル
【戦士の心得(筋力耐久1.2倍・魔法成長低下)】
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お、強いなこの人。というか冒険者を生業としているならこれくらいにはなるのだろうか。他にも何人か鑑定してみたが、この人以上に強い人はこの場には居なかった。やはりある程度スティーブンが強いのだろう。
【鑑定が行使されました、隠蔽に成功】
【対象者 ゾフィー・スミスキー】
っと、こちらも鑑定してるんだ、そりゃ鑑定もされるよな。さて、当の本人は何処に……アイツか。
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【ゾフィー・スミスキー】
冒険者ギルド : Cランク
レベル : 17
HP:92
MP:124(×1.2)
筋力:62
敏捷:53
耐久:61
精神:81
魔力:123(×1.2)
装備
【・魔法のバンダナ・ウォーターロッド・魔法の法衣】
属性魔法
【水魔法 : D(武器補正×1.1)】
スキル
【・魔法使いの心得(魔法1.2倍、物理能力低下)・鑑定】
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成る程、魔法寄りのステータスの人だったか。しかし鑑定持ちがパーティに居るのと居ないのとではかなり話が変わってくるだろうな。鑑定はそこまでレアでは無さそうだが、有用さは見て取れる故、場合に寄っては引き合いに出す事もあるだろうな。
なんせこいつもCランクだ。スティーブンならまだしも、このステータスでCランクってのは、流石にパーティに重宝されているとしか思えない。
……待てよ。
「ルクレティア、相談があるのだが」
「必要ありません、御随意に」
「ふむ」
今日は初めてのダンジョン。俺自身スキルには恵まれていてもステータスとしてはいつ死んでもおかしくないレベル。加えて眼前のゾフィーは【水魔法】持ちだ。折角の機会だしな、上手く利用していこう。
「すまない、少し良いだろうか?」
「なんじゃ? 何か用でもあるのか?」
疑いの眼差しを向けるゾフィー。そりゃそうだろうよ、弱者のタカリにしか見えないだろうし、実際そうなのだから。
「俺たちは新人で、今日が初めてのダンジョンなんだ。もし可能であれば貴方達のパーティと組ませて貰いたい」
「ふむ、そこに何かワシらのメリットはあるのか?」
そらきた。
「俺たちは助けて貰う必要はない。ただ着いて行かせて貰いたいだけだ。その上で今日の宿代である銀貨十枚も稼げれば、残りは全て献上する。魔道具やレアドロップの所有権も一切主張しない。仮に手に入れたなら譲ろう。それでどうだろうか?」
「銀貨十枚か。悪くは無いな、ちょっとまっとれ」
ゾフィーはそのままゆっくりとスティーブンへと近寄っていく。なんとなくそうだとは思っていたが、奴らパーティだったんだな。
二人は別のメンバーも含め何かを協議した後に、やがて全員が頷き、その後ゾフィーのみがこちらに向かって歩み寄って来た。
「ええぞ、但し死なんようにせいよ。ワシらもここは今日が初めてじゃ。何かあってもお主らを助けんからの」
「それで構わない、よろしく頼む」
よしよし、有り難い限りだ。
*
この日の探索は初日だったにも関わらず、実に安全そのものと言える内容に終わった。ダンジョン内の構造、敵の出現頻度やパターン、出現場所から種類に至るまで。在りと凡ゆる不明な点が解消され、次回探索時の凡ゆるリスクを激減させてくれる一日だったと言えるだろう。
俺とルクレティアは目立たぬ様に最低限の能力で雑魚狩りに徹し、銀貨十枚分の稼ぎを得た時点でそこからは全ての取得物を別で集め、最終的には謎のドロップも含めて全て献上した。特にトゥーレットという魔物から魔法樹という木の棒がドロップし、それを渡した時には喜ばれたものだ。連れて来て正解だったと少し騒ぎになった程だったな。どうやらゾフィーの武器であるロッドを新調するに当たり、これがあるとかなり安くで仕上げられるらしい。役に立てて何よりだ。
スティーブンたちのパーティは前衛が二人、後衛が一人、そしてヒーラーが一人といった構成で、どっしりと安定した立ち回りが可能となる布陣を採用していた。特にヒーラーは前衛が傷を負う度に回復していた為、戦っていた魔物からしたら地獄の様な戦いだっただろう。無限に再生する戦士なんて相手にしたくないものだ。
そして俺たちに於ける最大の成果といえば、【水魔法】の取得に成功した事に他ならないだろう。僅かとはいえレベルアップも出来た、正直言ってこの上ない収穫だ。
ふとした瞬間に水魔法などという面白そうなオモチャを獲得した事を思い出し、ついつい笑みが溢れてしまう。
水魔法に於けるゾフィーの戦い方を考えるに、水を意のままに操り戦うといった雰囲気で、魔法を詠唱するといったタイプでは無さそうに見受けられた。故にゾフィーが使っていた技はゾフィーが開発したり練習したりしたもので、皆が使えるという訳ではないのだろう。『アクアランス!』などと叫んではいたものの、それが詠唱のキーワードという訳ではなく、仲間に「これを使うぞ」と知らせる為の声掛けの様な印象だったな。
なら俺の水魔法は俺が独自に開発するしか無いという事。
これはまた、楽しみが多くて大変よろしい。




