【第十五話】ダンジョン攻略へ向けて
昨夜はなんだかんだとあって、ナニがあったかと言えばナニがあったのだが、断じて俺はまだ童貞だ。だがまさかルクレティアがあそこまで積極的に……いや、やめておこう。朝から収集がつかなくなってしまう。
アレがエレクトしてから賢者の卵から晴れて賢者となった俺の頭は、昨日一日を振り返り、色々と考えた。
まず今まで過ごしてきた世界での俺は既に死んでいると言う事実。これはもう確定であると受け入れていこう。寝て起きて同じ世界なのだから、考えた所で不毛だ。
さて、そうなってくると最初に貰ったスキルややり取りが肝心になってくるという話で。
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冒険者ギルド : Fランク
レベル:6
HP:55
MP:∞
筋力:41(×2※天賦の才)
敏捷:56 (×2※天賦の才)
耐久:42 (×2※天賦の才)
精神:∞
魔力:∞
属性魔法
【白魔法 : G】
スキル
【・天賦の才・大賢者の卵・艶福家・性豪・統率者・限界突破・無限魔力・合成魔法・状態異常完全耐性・武具錬成・完全鑑定・完全解錠・超集中・異空間収納・ステータス完全隠蔽】
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俺の今のステータスはこんな感じだ。
考えるに、精神が無限とされている辺りのせいでゴブリンの襲撃に際して身体が動いたり、殺したと言う事実が尾を引いたりしない理由になっているのだろう。俺としてもイチイチ凹んでいてはキリが無い程に戦闘している訳で、日常に戦闘が組み込まれた世界に生きるのならこれは有り難く享受しておこう。
そして【大賢者の卵】、これは恐らく【魔法習得難易度の簡易化】に影響している様で、ルクレティアに白魔法を実践して貰った所、息をする様に習得してしまった。成長速度にも影響があるのかどうかは要成長の確認と言った所。
次に【艶福家】と【性豪】、これは無くて良かった。正直言って貰うべきでは無かった様に思う。艶福家というのは安直に言えば女性が俺に惚れやすくなるというスキルで、もしかするとルクレティアもこの影響下にあったのかもしれない。彼女にその自覚が無いのが救いだが、何とか出来るなら何とかしたい所。性豪に解説のコメントは必要あるまい。
【統率者】はかなり有用なスキルで、どのカテゴライズであっても、自身の直下に入った存在は俺のスキルのコピーをギフトとして受け取る事が出来る様だ。ルクレティアを脳筋にしてしまった事は申し訳ないが、初期メンバーとしての生存率で言うのならこれもまたアリだろう。もっとメンバーが増えたなら、後衛に合ったスキルを渡すも一興、といった感じか。
欠点としては大きく二つ。安易にパーティが崩せなくなった事と、他者のパーティに組み込んで貰えなくなったという点か。これは気合いで乗り切るしかあるまい。パーティの人数上限は自分を含めて九人までだそうだ。今暫く心配はしなくて良さそうだ。
【限界突破】はレベルやステータスの上限が無くなるらしい。成長に終わりが無いのは楽しみが多くて大変よろしい。
【魔力無限】や【合成魔法】は魔法が増えなければその恩恵を得られる機会も少なく、今の所未知数だ。【状態異常完全耐性】もまた場面で意味を為すスキル故、所持している事に意味がある。もしかすると精神が無限になっているのもこいつの作用かもしれないな。
【武具錬成】は俺の情報不足で、ルクレティアも門外のジャンルだったらしく、これから探っていく予定だ。
【完全鑑定】は鑑定と完全鑑定が別のスキルらしく、ステータス完全隠蔽を突破できるのが完全鑑定だそうだ。今これらのスキルの効果を知れているのもこいつに寄る所。これからも活躍するだろう。
【完全解錠】は投獄でもされない限り意味がないだろうと思っていたが、まさかこんな形でさっそく使うとはという。結果的には場面に際して必須の働きを期待出来るので、中々に有り難いスキルだ。
【超集中】は魔力を消費して一時的に体感速度を遅くするスキルといった雰囲気か。感覚的には敏捷性を【認識敏捷性と行動敏捷性】に分けた場合の【認識敏捷性】が向上している感じだな。勿論俺自身の動きもスローにはなるが、速過ぎる動きにもこれがあれば対応できるだろう。ただ本来は魔力による制限があるスキルにも関わらず、魔力無限の副作用によって無限集中が可能となっている。使っていると頭が痛くなる気もするが、やはり上手く使う必要のあるスキルと言えるだろう。
最後に【異空間収納】と【ステータス完全隠蔽】は有り難いスキルだがそれ以上でも以下でもない。
一応念の為に片っ端から鑑定していった結果がこんな感じだ。
まだここに来て1日。何をすれば良いのかもどう生きれば良いのかも、何を目標として過ごせば良いのかも、何も分からない。大学を卒業し、良い企業に就職し、良い給料を貰い、良い嫁さんを探し、子供に恵まれ、良い父親となり、我が子には俺の人生を断ち切った明るい未来を歩んで貰いたい。そんなささやかな夢を持っていた俺の人生はつい先日幕を下ろしてしまったそうだ。
「んん、ご、ご主人しゃま……」
隣でスヤスヤと眠るルクレティア。行き擦りの関係とは言え、俺はコイツの人生に介入してしまった。それに、こちらの思惑で役割も与えてしまった。何が何やら分からぬままに行った事とは言え、そこには責任を持たなければならない。
「あぅぅ……♡」
寝惚けながら、頭を撫でていた俺の手を胸元へと誘い、大切なものを抱き締める様に笑顔を浮かべるルクレティア。彼女を見つめていると、どうにも腑抜けそうだった自分を捨て去る必要がある事を確認させられる。俺はまだこの世界の素人でルーキーだ。どうせ生きていくのなら、悔いの無い様に生きよう。
*
「今日はダンジョンですね!」
「妙に張り切ってないか?」
「え、そんな事……ないですよ?」
「ナイフをしまえナイフを」
「えへへ」
ナイフを見つめながらニヤニヤしていたルクレティア。怖いからやめて欲しい。狂気に沈まない様にしてやらないと、彼女は突然得た力に呑まれている節を感じさせる。気をつけよう。
さて、今日はダンジョンだ。ダンジョンというのは、突然出現し、誰かが踏破する事によって消滅するランダム探索ポイントといった印象の場所だ。中には魔力を帯びた品々が眠っているらしく、それを使うなり売るなりして冒険者としての腕や格を上げるらしい。
またダンジョンを踏破したと言う事実は、そも近隣の安心安全に繋がる様で、それ自体がギルドの昇格理由にカウントされていたりする。
またダンジョンの浅い地点に出現する魔物は、今の俺にとっては昇格理由になり得る魔物が多数出現しており、俺としてはその辺りも狙い目だ。
まずは着実にレベルやランクを上げていこう。
ついでに、周辺の皆々のステータスを覗き見て、強さの相場の様な物も調べておきたい所だな。
楽しみが多くて大変よろしい。
*
「すまない、この辺りで確認されているダンジョンの位置が知りたいんだが」
「ダンジョンですね、こちらの地図をご覧ください」
ダンジョンの位置を確認すべく、俺たちはギルドを訪ねていた。そこで渡された地図はどうやらこの辺りの周辺マップらしく、ラプリンセの街を中心に据え、どこにダンジョンが存在するのか一目瞭然となっていた。
と、ここで一つ気になる所が。
「ここだけ印がしてあるのには、何か理由が?」
「はい、こちらのダンジョンは階層や領域自体は狭く、出てくる魔物も比較的低レベルなのですが」
そこまで軽快に話したギルドの受付が、少しだけ奇怪な表情をしたと思うと、奇妙な話をし始めた。
「四階以降へ続く道が見当たらないそうなのです」
「……成る程」
行き止まりのダンジョン。これはきっとあり得ない話なのだろう。ある程度探索されているにも関わらず、道が見当たらない。なるほど低レベル階層しか無いのであれば、今の俺たちには丁度いいやも知れんな。棚ぼた的に道が見つかれば儲け物でもある。
「適正ランクは?」
「こちらはEもしくはDランク向けのダンジョンとなります」
「助かったよ、ありがとう」
「また何でもお聞き下さい」
ギルドで貰った周辺地図に、先程見たダンジョンの位置関係を記していく。全部で五箇所あるダンジョンだが、俺が気になったのはーー
「さっきの【道の無いダンジョン】に行こうと思う」
「分かりました! 前衛はお任せください!」
「いや脳筋二人で前衛も何も無いだろうよ」
「あぅ、そうでした」
「だからさ、背中を頼むよ」
「!? はわわわ、お、お任せ下さい!! 私の命にか」
「替えるな替えるな。二人で生き残るぞ、勝手に死ぬのは許さないからな」
「ご主人様……」
脳筋二人にヒーラーが二人。バランスが悪いがバランスが良い。場合に寄っては勝てない敵もいるだろうが、その時はその時だ。
ルクレティアはフンフン言いながら徒手空拳で歩き始めた。どうやらナイフは俺の身の安全に使って欲しいそうだ。少しお金に余裕が出来たら装備も揃えたいものだ。
いざ、ダンジョン攻略へ。




