【第十二話】ルクレティア、初めての戦い-その2-
「ギギィィィー!」
「キャッ!?」
正面から迫り来るゴブリンを跳ね除けられず、後ろにのけぞったままその場に転倒してしまうルクレティア。ゴブリンにとって格好の好機。
「ケケケケケ」
「こ、来ないで下さい……、来ないで下さい!!」
「グフッ!?」
弱そうな雌を目の前にしたゴブリンは下半身の衣服を一部膨張させながらルクレティアへと迫った。だが彼女はこれを腹部への前蹴りでしのいだ。
「あれ? 何だか思ったより……」
「ギギギ!」
「ヒッ!?」
未だ恐怖心が勝る中、ルクレティアは怯えながらも【攻撃が当たればもしかすると】という可能性を持ち始めている。
「ギギ!」
「いやっ!」
「ギ!」
「来ないで下さい!」
「ギギ!!」
「ヒッ」
怯えている様相からは想像し難い程に回避に成功しているルクレティア。段々と躱せるイメージが出来てきたのか表情から恐怖が陰り始める。それと同時に、攻撃のイメージが湧き始めているのだろう。目が、何かを狙っている。
「ギギ!」
「もう!」
「ギッ!」
「私に!」
「ギギギィィィ!」
「迫らないで下さい!!」
「ゴフッ!?」
綺麗な回し蹴りがゴブリンの頭部へと直撃する。そして倒れたまま上手く起き上がれないゴブリンに対して、ルクレティアはー
「えいや!」
「ゲギャッ!?」
俯きに倒れたままのゴブリンにトドメの一撃見舞うべく、その心臓部へとナイフを突き刺した。それとほぼ同時にその場で霧散したゴブリンは、足下に魔石を置いて完全に消滅した。
「ハァハァ、ハッ!?」
「やったな、ルクレティア」
「おかしいです、私、勝ててしまいました。あれ? ゴブリンに、勝てた?」
「そうだ、お前が倒したんだ」
「初めて戦って、初めて倒しました」
「だろうな、良くやった。流石ルクレティアだ」
「あの、私……」
「あぁ、お疲れ様。素晴らしかったぞ」
「ごごご主人様、わた、わわ私、ゴブリンを……!」
「大丈夫、お疲れ様」
動揺するルクレティアを抱きしめ、落ち着くまでただ言葉をかけながら頭を撫でてやった。そうだよな、初めてだもんな。無茶させて悪かった、だがこれで始まった。
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【ルクレティア・ウルフェンヌ】
レベル : 2
HP:20
MP:10
筋力:6(×4)
敏捷:7(×4)
耐久:5(×4)
精神:8
魔力:8
装備
【旅人のナイフ】
属性魔法
【白魔法 : G】
スキル
【神域の天稟】
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脳筋ルクレティアの、武の歴史が。
*
「こんなものか」
「そうですね、かなり集まった様に思います」
「あ、あそこにラージがいるぞ?」
「お任せ下さい」
スッと近寄ってサッと躱して、シャッと斬り伏せる。彼女の身のこなしは今日初めて戦闘の場に立ったとは思えぬ程の流麗さを帯びており、見るものが見れば圧倒される事だろう。何せ彼女は武の方面に於いて、人の四倍の速度で成長する化け物だ。初めての戦闘でレベルを3も上げられたのであれば、彼女の換算では12程の成長に相当する。
「これで宿も食事も問題ありませんね」
「とは言えその日暮しではな。明日からはダンジョンとやらを開拓してみよう」
「はい! ご主人様に見出して頂いたこの力、必ずやお役立ててみせます!」
「お、おう、よろしくな」
気迫が凄い。恐らく信じ難い速度で成長する自身の身体に心が追いつかないのだろう。それを無理矢理正当化する為にアドレナリン辺りがドバドバと彼女の脳を麻痺させて興奮状態へと追いやって、なんとか成立させているといった所か。神域の天稟に【精神】への恩恵も含んで貰いたかったものだな。
この調子だと何処かにイカれた野生の武神が存在したとて不思議はない。俺としてはやたらめったらこんなスキルの所持者が居ない事を祈るばかりだ。紛いなりにも【神】の名を冠すスキル、まぁ所持者など殆ど居ないだろう。
「他にゴブリンは居ませんか?」
「この辺りは狩り尽くしたやもしれんな。戻ろうか」
「そうですか……、ではそう致しましょう」
言葉の上では納得しているも、表情では残念そうな雰囲気を漂わせるルクレティア。試したくてしょうがないといった雰囲気だな。気持ちは分からんでもないが。
やれやれ、それにしても本当に。
初めから面白い仲間を得たものだ。
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【ルクレティア・ウルフェンヌ】
レベル : 4
HP:36
MP:27
筋力:19(×4)
敏捷:21(×4)
耐久:20(×4)
精神:23
魔力:24
装備
【旅人のナイフ】
属性魔法
【白魔法 : G】
スキル
【神域の天稟】
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