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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
一章 異世界転生と奴隷の少女
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【第一話】神の手違い

今作では異世界転生に挑戦です。

比較的ありがちなストーリーではありますが、やはりこれが一番好きな流れであり、こうあって欲しいという物語。よろしくお願いします。

 目が覚めるとそこには何もなかった。


 自身が最後に過ごしていた瞬間すら思い出せず、何一つとして手がかりの無い現状況が只管(ひたすら)にもどかしい。仮にここが自室なのだとたら、布団もなければ天井もなく、なんなら床もなければ家もない。極端な話、世界すらないのかもしれない。

 けれど、今俺がその事実を【違和感】と捉えないのであれば、恐らくこれは夢なのだろう。夢の中で夢だと気がつく、所謂(いわゆる)明晰夢(めいせきむ)ってやつなのか?


「強ち間違いではないな」

「……」


 誰かが話しかけている気がするのだが、自身の状態が把握出来ない。何と言うか、自分は存在するのに身体が見当たらない様なイメージ。フワフワと空中を浮遊するアメーバの様な、得も言えない気分だ。


「ワシを無視するでない。まったく、神をなんだと思っておるのじゃ」

「……」


 耳も無いのに聞こえる不思議はさておいて、口が無いので返事の仕様が無い。


「あ、口が無かったのじゃな」

「……あ、あーあー。これは話せているのか?」

「うむ、これで良かろう」


 不思議空間で神を自称する老人と二人きり。口を得たからといって何を話せば良いのやら。


「端的に話すぞ。お主を死なせてしもうた」

「……は?」


 ん?


「最近は歳のせいか指が震えてのぉ。お主の隣に居た犯罪者を神罰で滅してやろうと思ったのじゃが、うむ。そういう事じゃ」

「成る程な、そういう設定か」

「うむ、物分かりが良くて助かるわい」


 成る程。俺は死んだというノリで別の世界かそこいらに飛ばされて、そこで新たな生活を満喫させてくれるとか、そういう設定の夢って訳だな。


 夢だけに、夢があって良い話だ。


「うむうむ、流石にお主の努力量を考えるとな、知らぬ存ぜぬを決め込むのも気が引けてのぉ」


 仮に今死んだとするのなら、眼前の老人が言わんとしている事は理解出来る。不幸な奴が不幸なまま死んだ、そういう事なのだろう。

 俺は恵まれた人生を過ごしていた訳ではなく、客観的に見ても底辺を這う様な人生を過ごしていた。


 発端は喧嘩ばかりの両親の下に生まれた事。俺がまだ幼い頃、両親はそうなるべくして離婚した。その挙句、全身アザだらけの俺の親権を揃いも揃って放棄。問題児の子という事もあって親戚一同誰一人手を挙げず、巡り巡って施設に入れられた。


 だが俺は折れなかった。その環境下で勉学に励み、中高と特待生で進学し学費免除を勝ち取った。更にはバイトと勉強を両立し、見事難関大学に合格。後は大学生活を無難に乗り切れば漸く苦労が報われ始める、というタイミングではあるな。


 ここで死んだ、と言われるなら人生まるっと大損だ。


「じゃ、じゃからの、特待生としてワシの管轄する別の世界へ送り込もうと思うのじゃが、どうじゃ?」

「良いんじゃないか。因みにどんな特典が付くんだ?」

「うむ、ちょっと待っとれよ」


 夢にしては妙に細部まで再現され過ぎているな。ビジュアル出来過ぎじゃないのか。髭の一本一本の質感がまるで本物だ。


「よし、頭に直接流したぞい」

「ん? ……成る程」


 リストが頭で直接理解できてしまう妙な感覚。

 この辺りは実に夢らしい。


 ・天賦の才

 ・大賢者の卵

 ・艶福家

 ・性豪

 ・統率者

 ・限界突破

 ・無限魔力

 ・合成魔法

 ・状態異常完全耐性

 ・武具錬成

 ・完全鑑定

 ・完全解錠

 ・超集中

 ・異空間収納


「この中から好きな物を選ぶが良い」

「全部」

「……は?」


 当然、即答。


「全部だ、それなら許す」

「……むぅ」


 どうせ夢なんだ、豪快に行こう。何が何やら分からないが、貰えるというのならば全て貰っておくべきだ。


「しかしのぉ、幾らお主の頼みと言」

「俺は両親に恵まれなかった」

「ぇ……」

「だが曲がる事無く努力を重ねた」

「ぁぅ……」

「恨みや妬みではなく、いつの日か俺を捨てた事を後悔させてやりたくて、だれも傷付ける事無く、ただ努力した」

「……」

「ゲームを買う金も、漫画を買う金も、参考書を買う金もない中、特待生制度で貰った教科書のみで乗り切った。中学も、高校も」

「……」

「間も無く、良い会社に就職して、漸く素晴らしい人生だと謳歌タイミングだった。自慢するつもりは無いが、誓って手は一切抜いていない。そう言い切れる」

「……」

「その俺が、なんだって?」

「分かった、お主の言う通りにしよう」


 流石は夢、良い感じに思い通りになってくれる。


「じゃがその代わり、赤子からやり直すのではなく、今の続きとして享受して貰う。努力を反映するという体でいくからのぉ」

「それで構わない」

「よし、後このスキルの並びを他者の完全鑑定で見られるとかなり拙い。ステータス完全隠蔽も付与するぞ、好きに操作するのじゃ。それで良いか?」

「何でも良いよ」

「うむ、暫くは転生の影響で頭が麻痺するじゃろうが、一日もすれば治るじゃろうて。では武運を祈る! すまんかった!!」


 そして俺の意識は無の空間の彼方へと霧散していった。

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