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なんかようかい?

作者: くまっ!

生命とは不思議なものである。

現時点では明確な定義付けはできず、ただ対象物が「生きている」という認識によっているあいまいなものである。


生命は光にあこがれる。

それがたとえ闇から生まれたものであったとしても。


人は闇を恐れ、畏れ。

そして毎夜闇に身をゆだねる。


今よりももっと夜の闇が濃かった頃、闇に生まれたもの達はわが世の春を謳歌していた。

人は彼らを「妖怪」と呼んだ。


夜にも人が作り出した光に溢れる今日。

彼らは一体どこへ消えたのだろうか。



夕暮れ時

朱に染まる町並みの中、二人の学生が歩いていた。



「なぁ、この前<てけてけさん>が出たらしいぜ?」

ーお前、この手の話がすきだなぁー

俺にはこの手の都市伝説って奴の面白さがわからん。

こんな話どこぞの誰かが話を「作ってる」に決まってるんだ、多分。

「相変わらずな反応だな。まぁ、いいや。また明日な」

おう!と別れの挨拶を交わし、俺は家路に向かおうとした。

「そっちの方向、<三つ目娘>が出たらしいぞ」

・・・・・・。

無視!


<三つ目娘>

最近この町でうわさになっている都市伝説だ。

といっても、ただ三つ目の見目麗しい少女を見かけたと言うだけの噂なんだけど。

それよりも、<てけてけさん>の方が危ない話で、上半身だけの人間が、下半身を求めてさまよい見かけた人間の下半身を奪うため襲い掛かる。

何を言っているかわからねーと思うが、はっきり言って俺にもよくわからん。

とにかく見つけた人間すべてに襲い掛かる危ない存在なんだそうだ。

「よう!少年!」

!?

いきなり視界の外から声を掛けられた。

「何をびっくりしているのかえ?」

後ろを振り向くと見た目だけなら俺よりもかなり年下の見目麗しい女性が立っていた。

ーいきなり声を掛けられたらびっくりもしますよー

気配も感じさせずいきなり声を掛けられたら誰でも驚くと思うのだが・・・。

この女性は<三上 光恵>俺が子供の頃からの付き合いだ。

「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ」

三上さんは時折俺に仕事を頼んでくるのだが、結構面倒なことが多い。

とはいっても、万年金欠の一高校生としては目の前にぶら下げられるささやかな 餌 の誘惑に毎度負けてしまうのだ。

なんとも早、情けないことだ。

「なぁに警戒してるのよっ!ここは黙っておねいさんのお手伝いをしなさい」

ーわかったよ、手伝うよー

しぶしぶながら承諾すると三上さんは「お小遣い弾むからねっ」と満面の笑みを俺に向けてきた。

・・・・・一体、依頼主クライアントからいくらとるのか、そして俺に幾ら渡すのか。

目の前の笑顔が小悪魔の笑みに見えてしょうがない。




「見て、あいつよ」

三上さんが指差す先には一人の男が立っていた。

「あいつが最近このあたりを荒らしている<腹這>よ。結構危ない奴だから気をつけてね」

ーはいはいー

「「はい」は一回でよろしい。・・・・いくわよ」

!?

いきなりゴリ押しかよ!

もっとこう・・・慎重に言ってもいいんじゃないか。

俺の同様もよそに三上さんは踊りだしていく。

「ちょっと、そこのアンタ!」

<腹這>疑惑の男は振り向ききょとんとしている。

「アンタの悪行はすべてお見通しよっ」

・・・・・三上さん、それじゃただの中二病だよ。


「なんのことですか?」<腹這>と言うあらぬ疑惑を勝手に掛けられた男は、わけもわからない感じで答える。

「しらばっくれる気?<腹這>アンタのことは協会からの資料に・・・」

協会の言葉を聴いた瞬間、男の顔色が変わる。

と、同時に姿勢を低くし名の通り腹這となってこちらに向かってくる。

どう見ても普通の人間の速さではない。

瞬く間に三上さんへ向かい突進してくる。

が、三上さんはとっさに横へ跳ねこれをかわす。

「ちょっと、人の話は最後まで聞きなさいよね」

せっかくの台詞を最後まで言えなかったせいか、不機嫌そうな三上さんだが、さっきと様子が少し違う。

眉間の所に目があるのだ。

「ほら、ぼさっとしてないでさっさと確保して」

三上さんへ執拗に突進する<腹這>

それを闘牛士の様にいなす三上さん。

傍観者を決め込んだ俺に向かい三上さんは手伝えと言ってくる。

・・・・・・・・・。

めんどくせぇ

「お小遣いあげないわよっ」

やらせて頂きます。

この言葉を言われると厳しい。

目先の餌に釣られる俺・・・・。

そう、俺は小銭ほしさに尻尾を振る犬なのだ。

なんて、馬鹿なことを考えているうちに、金主からまたきつい一言がくる。

「お小遣い10%off決定」

・・・・・。

額も提示しないくせに、減額けっていですか・・。

これ以上、金額を下げられてはかなわない。

手伝うとしますか。

俺は、大きく息を吸い込むと、<腹這>へ向けて大きく吐き出す。

吐き出した息は、炎の塊となって標的へ向かい。

不幸な彼に直撃した。



「よしっ!確保完了」

所々焼け焦げた<腹這>を縛り上げ得意げな三上さん。

「あんた、たまには協会の寄り合いに顔を出しなさいよ。最近出てないでしょ」

ーわかったよ。で、約束のお金は?-

「今月の寄り合いのときに渡すから」

と、言い残し三上さんは自分よりも大きい男を担ぎ去っていった。

もちろん眉間のチャームポイントは開いたままだ。



世間一般から見たら俺達って変なんだろうな。

そんなもの達が集まって出来た互助組織が「協会」だ。

協会に入らないor協会から抜け出したハグレの者たちもいるにはいるのだが、そんなものは極少数派である。

今月の寄り合いには顔を出さなければいけなくなったなぁ。

なんて事を考えながら俺は道草を終え再度家路へついた。



後日、この町の都市伝説に<火吹き男>が加わったのだが、正直言って俺には興味がない。


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