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優しき修羅の愛  作者: 日向満家
悪の猛禽 ー優しき修羅の愛0ー
61/61

9話

 あれから一週間が経ったが、まだ俺の心が落ち着くことはなかった。死ぬ間際の丸山が、脳裏に何度も浮かぶ。

 死体の処理に俺は関わらなかったが、もう見つかることはないと社長が言っていた。

 丸山は、景龍会と『シン・アライアンス』を互いに潰し合わせようとしたのかもしれない。

 俺を待ち切れなくなって。


 少しでも気持ちを落ち着けようと、俺は妹がいる病室を訪れた。ここだけが唯一、俺の安息の地だ。

「あ、おにいちゃん」

 いつもの笑顔で美咲が迎えてくれた。

「体調はどうだ」

「ちょっといたいけど、まぁだいじょうぶ」

「そうか、良かった」

「さいきん、まるやまのおじちゃんこないねぇ」

 思ってもみなかった妹の言葉に、俺の心臓は跳ね上がった。

 目の前には、全てを見透かすような澄んだ瞳がある。

「丸山のおじちゃんは、もう来れないらしいよ」

「えー、つまんない。おじちゃんいたら面白いのに」

「お兄ちゃんがいるだろ。頑張って二人で生きていこう」

 そう。もう、丸山はいない。俺はさらに稼いでいかなければならない。


 悪の道を、極めてでも。


      ***


 クソ、なんで美咲をこんな奴と会わせないといけないんだ。

 俺は丸山とともに、美咲がいる病室に向かう廊下を歩いていた。

「不服そうだな」

「いえ、別に」

 妹の治療費の援助をする条件が、妹と会わせることなんて、何を企んでいるんだコイツは。

「そんなビビらなくて良い。俺は警察官だぞ」

 どの口が言ってる。見た目はほとんどヤクザのくせに。


 俺の心配を余所に、美咲はすぐに丸山に懐いた。

「ホレホレ、ベロベロバ〜〜」

 皺が刻み込まれたバカみたいな顔に、美咲もキャハハと無邪気に笑っている。

「子どもが好きなんだ」

 美咲の頭を撫でながら、丸山は言った。

「こんな仕事してるから、結婚もできねぇ」

 丸山は、それまで見たこともないような目をしていた。


「で、やってくれるってことでいいんだな?」

 帰り道、俺は訊ねた。

「ああ、良いだろう。その代わり、テメェもちゃんと俺の期待に応えろよ」

「……わかったよ」

 無茶苦茶なこと言いやがって。

「あと、妹はこの件には一切関わらせたくねぇ」

 これだけは、俺が切実に望むことだった。

「……ああ、そうだな」

 丸山も珍しく素直にそう言った。

「同感だ」

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