9話
あれから一週間が経ったが、まだ俺の心が落ち着くことはなかった。死ぬ間際の丸山が、脳裏に何度も浮かぶ。
死体の処理に俺は関わらなかったが、もう見つかることはないと社長が言っていた。
丸山は、景龍会と『シン・アライアンス』を互いに潰し合わせようとしたのかもしれない。
俺を待ち切れなくなって。
少しでも気持ちを落ち着けようと、俺は妹がいる病室を訪れた。ここだけが唯一、俺の安息の地だ。
「あ、おにいちゃん」
いつもの笑顔で美咲が迎えてくれた。
「体調はどうだ」
「ちょっといたいけど、まぁだいじょうぶ」
「そうか、良かった」
「さいきん、まるやまのおじちゃんこないねぇ」
思ってもみなかった妹の言葉に、俺の心臓は跳ね上がった。
目の前には、全てを見透かすような澄んだ瞳がある。
「丸山のおじちゃんは、もう来れないらしいよ」
「えー、つまんない。おじちゃんいたら面白いのに」
「お兄ちゃんがいるだろ。頑張って二人で生きていこう」
そう。もう、丸山はいない。俺はさらに稼いでいかなければならない。
悪の道を、極めてでも。
***
クソ、なんで美咲をこんな奴と会わせないといけないんだ。
俺は丸山とともに、美咲がいる病室に向かう廊下を歩いていた。
「不服そうだな」
「いえ、別に」
妹の治療費の援助をする条件が、妹と会わせることなんて、何を企んでいるんだコイツは。
「そんなビビらなくて良い。俺は警察官だぞ」
どの口が言ってる。見た目はほとんどヤクザのくせに。
俺の心配を余所に、美咲はすぐに丸山に懐いた。
「ホレホレ、ベロベロバ〜〜」
皺が刻み込まれたバカみたいな顔に、美咲もキャハハと無邪気に笑っている。
「子どもが好きなんだ」
美咲の頭を撫でながら、丸山は言った。
「こんな仕事してるから、結婚もできねぇ」
丸山は、それまで見たこともないような目をしていた。
「で、やってくれるってことでいいんだな?」
帰り道、俺は訊ねた。
「ああ、良いだろう。その代わり、テメェもちゃんと俺の期待に応えろよ」
「……わかったよ」
無茶苦茶なこと言いやがって。
「あと、妹はこの件には一切関わらせたくねぇ」
これだけは、俺が切実に望むことだった。
「……ああ、そうだな」
丸山も珍しく素直にそう言った。
「同感だ」




