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優しき修羅の愛  作者: 日向満家
悪の猛禽 ー優しき修羅の愛0ー
57/61

5話

「亀岡ねぇ……」

 丸山がそう言いながら、顎をなでる。

「それで? その社長を騙したと?」

「ああ、そうだ! 俺もようやく〝ダマシ〟を任せてもらえるようになった」

「バカかお前」

 丸山は少し浮き足立つ俺に、さっき渡した報告書を投げつけてきた。社長に提出したのと同じものだ。

「俺はデケェヤマの証拠を掴んでこい、って言ってんだ。こんなもんテメェみてぇな小物一匹捕まえて終わりじゃねぇか。何のためにリスク冒してお前飼ってると思ってんだ!」

 今まで関わってきた人間の中で、この男の声が一番ドスが効いている。組織で一番の強面である社長も、ここまでではない。

「ま、待ってくれ! 『Muse』だ! 麻布の『Muse』って店で皆カモられてる! 裏で経営してるのはウチの会社だ! そこを張れば……」

「お前なぁ……」

 丸山が半ば呆れたようにため息をつく。

「そんなこと皆わかってんだよ」


 今まで『Muse』で行われた詐欺の物証を全部掴んでこい。そう言い捨てて、奴は去った。

 丸山は俺を飼ってると言った。

 そりゃあ、あいつだってリスクはあるだろうし、もうこの関係も長い。相当な出費だろう。

 だが、俺だって相当の危険を冒してる。俺達の関係は対等のはずだ。

 だがそんなことを思っても虚しいばかりだ。今、俺は拒否できる立場にない。それだけは確かなのだから。


      ***


〝ダマシ〟の仕事をした現場には、向こう半年は近づくことが許されない。それがルールだった。

 しかし『Muse』が唯一の望みだった。俺の知る限り、本社には一切証拠が残っていない。社長室には何故かキャビネットの類はなかったし、俺が提出した報告書も、目の前でライターで燃やされた。


 改めてこの会社の、そして社長の恐ろしさを思い知った気がした。

〝ダマシ〟を任されるようになったらどうにかなると思っていた。ある程度自由に情報を引き出せるくらい信用されると思っていた。

 だが、決してそんなことはなかった。状況は今までと変わらない。何なら悪くなってるようにすら思える。

 マルチのようなグレーな範囲ではなく、れっきとした犯罪行為。ついにそれに加担してしまった俺の言動は今までよりも遥かに、制限されている。そんな空気を感じた。

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