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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ミレイおばあちゃんの昔話

ミレイおばあちゃんの昔話

現在連載中のユラ家騒動が最終章に突入しました。

次の物語を書こうと思ってパパッと思いついたもののさわりになります。なので1話完結の形でぽつりぽつりと書いて行こうと思っています。

出会いのお話



「ミレイおばあちゃーん、来たヨー!昔話してー。」

 私のあばら家に元気に姿を現したのは孫の…みわ。

 今年5歳。

 ん?ひ孫だったっけ?

「これ!上女王陛下に失礼な……。」

 続いて現れたのは3男の嫁のウィダ。

「いいんですよ。もう10年も前に隠居した婆なんだもの。」

 みわが私の膝に座ってくる。

 するともう一人いた男の子、るいも私の膝に座った。

「これ!」

 私は泡を吹きそうなウィダを片手で静止すると、二人を抱きかかえる。

「そうだね、今日は私が神様と会った時の話をしようか。」

「かみさまー?」

 みわが私の顔を見上げてくる。

「そうだよ。」

 私と一緒に撮られた写真を指差す。

「フレイおじいちゃん?」

「むかしむかし…………………。」


___________________________________


 ミノタウロス族と人間が呼ぶ種族がある。

 牛と人間の特徴を持つ二足歩行種族をひっくるめた呼び方だ。

 実際には大まかで6種類くらいに分類される。

 特に頭がまんま牛なミノタウロス族は他種とは交配すらできない。

 しかしそんな我々の都合など人間にとっては如何でも良い事らしい。

 

 80年前の私の種族、ジャシ種の特徴と言えば…。

 元来大柄なミノタウロス族なのに最小、つまり種族の特徴が最も薄い種族。大きくても身長200cm位にしかならない。

 姿は人間と90%変わらない。異なっているのは頭に角と牛耳、それにお尻に牛シッポが生えている程度だ。

 そして最大の特徴が……鈍重、愚鈍、のろま。

 何で生まれたか分からないそんな種族の国はさっさと滅ぼされ、与えられた役目は、奴隷しかなかった。


 3歳の頃にようやく私の記憶が残り始める。

 毎日腹をすかして糞尿にまみれて…生きているのか死んでいるのか分からない生活をしていたように記憶している。


 この運命の日、一人の老いた人間が市場に奴隷を買いに来ていた。

「…何だこれは。汚い、臭い、生気がない。」

 しわがれた老人の、しかし元気な声。

「旦那、クラス5の奴隷なんてどこもこんなもんですぜ。」

 対応するのは人相の悪い奴隷商。

「まあ良い。納入の時は洗ってくれるんだろうな。」

「へい。で、どれにします?」

「……。」

 顔をしかめて私達の檻の中を見る老人。

「そいつ、死にそうじゃないか。」

 私を指差して言うが特段思う事は無い。

 この苦しみから解放されるならそれでも良い。…その方が良い。

「…あー…そうすね。確かに。」

「あの比較的元気そうな奴を買うから、そいつをおまけに付けんか?」

「うーん。まあ良いでしょう。それで手を打ちましょう。」

 商談がまとまると私ともう一人の男の子は首輪のリードを引かれる。

 汚い水槽に入れられブラシで擦られる。

 その間に売買契約書が作られ…、

 私、ミレイは売られた。


 私は馬車の後ろに荷物と一緒に括り付けられた。

 お腹空いた…。

 つらい……。苦しい……。

 目が覚めたら少しは楽に……。



「おい、起きろ!」

 ガン!!

 頭に衝撃を受けた。

 どうやら杖で殴られたようだ。

 ヨロヨロ立つ私に老人は大きく舌打ちをする。

 見れば大きな屋敷。周りは広大な畑…。

 豪農のようだった。

「こっちだ。早くしろ!!」

 連れていかれたのは小さなあばら家。

「お前はここに居る乳児の面倒を見ろ。分かったか?」

 コクリと私は頷く。

 実際は分かっていなかったけど、とりあえず頷いておけば殴られないと思った。


 …………………。

 あれ?何だろう?

 その小さな家から凄まじいオーラが立ち上っている。

 え?

 あれは何ですか?

 聞いたら殴られるだろうか?

 悩んでいる間に私は扉の前に立った。

「ジョー。奴隷を買ってきた。赤ん坊の世話を替われ。」

「やっとですか!まったく言う事は聞かない夜泣きはひどい、散々でしたよ。」

 出てきたのは30後半くらいの太った女性。

 でもそんなのはどうでも良かった。


 赤子、いや、この方は…天使様?

 天使様がこちらに手を伸ばしてくる。

「ちょいと大旦那様、こんな子供に育児が務まるんですか?しかもこれ、ドンミノですよね?」

 どんくさい(ドゥム)ミノタウロス族。私達は通称どんミノと呼ばれている。

「知るか!どうせ孤児院が引き取るまでのつなぎだ。こいつもいつ死ぬか分からん。」

 あとで知ることだけど、赤子はどうやら使用人同士が作った子らしい。しかも母親は出産後死亡したとの事。

 しかしそれよりも、何よりも……。

 立ち上っていたオーラが私に流れてくる。

 力が…、沸いて来る。この赤子の何か力……。

 この赤子、普通じゃない。

 ……こんな力を持っている存在………………神様?

 抱いた赤子が私の胸をぺちぺち叩いて来る。

「そっちにヤギが居る。哺乳瓶はそこだ。」

 言って老人とジョーと呼ばれていたおばさんは去って行った。

 私は哺乳瓶を取ると、ヤギの乳を搾って授乳させる。

 授乳なんてしたことない。でも、何故かやり方が分かった。

 赤子は相当お腹が減っていたのかゴートミルクをごくごく飲む。

 ……………。

 ぐーー…。

 私のお腹が鳴る。空腹を忘れてた…。

「お腹空いた……。」

 つぶやく私に赤子が視線を向けてくる。

「ん。」

 言って赤子が私に哺乳瓶を向けてきた。

「私に、飲め、と?」

「ん。」

 ………………………。

 涙が頬を伝った。

 初めて…。初めて…、人に、心配してもらった…。

 優しく、してもらった……。


 この子は神様。

 私の中では、私の理解では神様。

 この先、どのくらい生きられるか分からない。でも、私が生きる間は…微力だけれど…守り抜こう。

 私の命に代えても、守り抜く。絶対。

 赤子はじっと私を見る。


 と、赤子が私の茶色い髪を引っ張って反対方向を指差す。

「何?」

 指さす方に歩いて行くと……。

 目の前に野いちごが生っていた。この時の私は野いちごを知らなかったけど、食べられるものだって、分かった。

「甘い。」

 沢山生っていたけど20個くらい貪り食べたところで今度はまた赤子に髪を引かれた。

「今度は、何?」

 10m位行ったところの倒木にシイタケが生えていた。

「んま…。」

 噛むとエキスがあふれ出てくる。

 貪り食べた。

 ああ…。

 これは多分、偶然じゃない。

 奇跡を当たり前のように………。


 この日、つくしやゼンマイ、山菜をたくさん食べた。お腹いっぱい食べられたのはこれが生まれて初めてだった。

 けぷ…。

 お腹いっぱいになると眠くなって……。

 私は赤子を抱いたまま体育座りの格好で眠ってしまった。


 夕方頃目を覚ますと怠さや身体中の痛みが全て消し飛んでいた。

 栄養不足が解消したためか、それともこの子が…。

 …………………。

 腕の中の赤子は眠っていた。

 ちょっと膝の上に置いて伸びをしてみる。

 バキバキ音が鳴る。でも、なんだろう、疲れ、凝りが全て綺麗に消し飛んでいく…。

 立ち上がるといつも感じるめまいが無い。

 私は赤子を抱き上げ小屋へ向け歩き始めた。

 足も、なんて軽い……。

「ちょいと、どんミノ!」

「…は…はい。」

 ジョーおばさんが腕を組んで小屋の前に立っていた。

「暗くなる前に帰ってきな。次遅れたら、夕メシ捨てるからね!」

「はい。ごめんなさい。」

「ったく。ホレ。」

 言って私にマズそうな(山菜を食べる前だったら美味しそうな)スープと黒パンを渡してきた。

 ……まだお腹は減っていない。

 あ、そう言えば…。

「あの、この子の名前は………?」

「あ?ありゃしないよ。アンタが勝手に付けな。」

 ゾワッとした。

「良いんですか?」

 神様に名を付ける?

「構やしないよ。ウチじゃ誰も関わりたくないんだから。」

 言っておばさんはどすどす歩いて行った。

 ……………………。

 その背が見えなくなって………。

「神様。私が、名前つけて、良いですか。」

 神様はキャッキャと笑う。

「では、…恐れ多いのですが…、…フレイ様。」

 私の名前、ミレイをちょっとアレンジしてみました。

 キャッキャ笑うフレイ様。

「お気に、いって、…召しましたか?」

 ぺちぺち私の胸を叩く。

 良かった。お気に召してくれたようだ。


 と、ひゅうと風が薙いだ。ちょっと寒い。

 けれど、何だろう、風も祝福してくれたように感じた。

「………そろそろ寒い。家に戻りましょう」

 私はヤギを一匹小屋に連れ込む。

 春とは言え夜はまだ寒い。乳しぼりの為いちいち扉を開けては赤子にはきついだろう。



 翌日、フレイ様は私にスコップを持たせると裏の森に入るよう促した。

 きっとまた山菜があるのだろう。

 通り道で昨日と同じ山菜があったので食べながら歩く。

 ウキウキしながら森の中に入って行くと………。

「んー。」

 …?

 何もない土を指差すフレイ様。

「もしかして………。」

 持って来たスコップで土を掘ると、蔓が引っ掛かって…芋がゴロゴロ出てきた。

 泥を落としてかじってみる。

「むー。」

 何か伝えようとするフレイ様。

 ……。

 思わず吐いた。

 食えたものじゃなかった。

「ぶー、ぶー。」

 何だろう?料理しなきゃダメって事かな?

「んー、んー。」

 次に土が盛り上がっている場所を指差すフレイ様。

「ここ?」

 直ぐにタケノコが見つかった。

 そして近くに何個か同じような盛り上がっている場所を掘る。

 タケノコを三個掘ってその日は家に帰った。

 とりあえず芋を煮てみた。

 塩をまぶして食べると………。

「甘い。美味しい。」

 タケノコは生でも美味しい。茹でても美味しい。

 うう、美味しいよー、幸せだよー。

「神様、ありがとう。」

 フレイ様を痛がらないように抱きしめる。

 フレイ様はキャッキャ笑う。

 守らなきゃ。絶対に、守らなきゃ。

 決意を新たにさせられた。


 こんな幸せな生活をしばらくしていたら、5日目の朝、フレイ様がスコップの他にナタだのロープだのを持つようにと…、言ってはいないんだけど、理解できた。

 森に入ってしばらくするとフレイ様が目の前の木の枝を折るように伝えてくる。

 しばらくするとまた大きな木の枝を今度は二つ折るように指示。

 何キロ位歩いたろうか?2時間位は歩いているだろう。

 普通こんな森の奥深くに入れば不安が沸いて来るだろうがそんなものは微塵も感じなかった。

 やがて、そんな指示を10度、つまり一つの木の枝を10折った後。

 私は生涯二人目の重要な出会いを果たした。


 森が少し開けた。

 その中心。

 大きな桑の木がそびえて居た。

 そんな大きくならないはずの桑なのに10mを超える高さだった。

 フレイ様が桑の実を採って私に渡してくる。

「っ!!甘い!美味しい!!」

 巨大な桑の木にはたくさんのドドメが生っていた。

 慌てて食べていたら桑の葉が口に入る。

「葉っぱも美味しい!!」

 種族的に私は葉物が大好きだ。でもやっぱり人間に近い味覚なのでレタスとかほうれん草とかじゃないと…贅沢は言えないけど……。

 甘くてクリーミィ。

 この桑の葉は多分特別なんだろう。


 ………そう、特別だった。


 この日…次の日もなんだけど、私は断金の友と出会っていたのに気づかないと言う……てか私、腹いっぱい食べてんだよね……。

 まあ、ほら、私、どんミノだから……。

 改めて思い返してみると…。

 ゴメン繭華。


 この桑の木がただの桑の木じゃないと私が知ったのは3日目だった。

 その日も美味しいドドメと桑の葉を食べるためにウキウキして目的の桑の前に………。

「今日も来たのねミレイ。そして、いらせられませ我が神、フレイ様。」

 美しい女性が膝まづいて私達を出迎えてくれた。

「だ、誰?!」

 私の名を知っている。

 この子を奪いに来た?

 守らなきゃ。

 逃げようとするも腰が砕けた。

「私はフレイ様に繭華と名付けられた、元、木の精。今はこのお方に樹妖精へと進化を促された桑の木よ。」

 尻餅をついた私の手を引いて立たせる繭華。

「えっと、その桑?」

 昨日私が食い散らかした桑。

 …………。

 汗が…たりーーー…………。

 怒ってはいない、みたいだけど……。

「ええ。この桑の木が私の本体。貴女が私を食べてお腹いっぱいになって寝ているとき、フレイ様が私の能力付けをしてくれたの。」

「能力付け?」

 何それ?

「ええ。貴女もされてるはずよ。貴女も普通のミノタウロス族、ジャシ種から牛頭鬼に進化しているみたいよ。」

 ゴズキ?何それ?

「…………えっと……。」

「それに、私には隠者アイジトラとして能力付けされてる。知識や知恵を蓄えるのが得意になるみたい。専門が学者。そして貴女は統率者フューラが能力付けされてるわね。民衆を率いるのが得意になるみたい。専門は老農。」

 ぺらぺら喋り出した。

「あの、何を言ってるのか分からないです。」

 私、3歳なので。

「……ふむ。貴女、フレイ様と出会った時、死にかけていたそうね。」

「……はい。」

「フレイ様に感謝しなさい。貴女を生かすために必死に導いたって……。」

「感謝、してます!フレイ様、神様。」

 繭華は柔らかく笑うと私の頭を撫でる。

「そうね。私達の、神様。ミレイ、今後は我々でフレイ様を守りましょう。」

 繭華が手を差し伸べる。

 繭華の手は…木の感触だった…。


「さて、貴女は先ずご飯にしなさい。」

「ご飯…。」

 私は目の前の大きな桑の木を見る。

 頷く繭華。

 良いの?

「心配無用。昨日一昨日食べられたくらいなんともないわ。むしろ陽が良く当たって調子が良くなったくらい。ドドメはむしろ栄養を取られるものだから食べられても全然困らない。」

「そうなの?」

「アメリカシロヒトリとか飛んで来たら踏み潰すけど。」

「何それ?」

「……知らなくていいものよ。」

 憎々しそうな表情の繭華。

 あまり触れると怒りだしそうだ。

「あの、じゃあ、頂きます。」

「ええ。その間に私はフレイ様に今後の事を尋ねておきます。」

「尋ねるって…。え?」

「…え?」

「会話、できるの?」

 ……………………。

「もしかしてミレイ、貴女フレイ様の言葉を理解していないの?じゃあどうやって導いたと…。」

 フルフル首を横に振る繭華。

「そう。じゃあ神様の国、日本の話もまだ聞いてないのね。」

「ニッポン?」

「昨日フレイ様に聞いたの。日本と言う世界に住んでいた頃の記憶があるって。」

 神様の世界?


____________________________________


「おばあちゃん、ニッポンて何?」

 みわが目をキラキラさせて聞いて来る。

「神様の世界だよ。この世界からお爺様が来てくれたんだ。」

「おじいちゃんが?」

「そう。お爺様は言ってました。いずれこの世界から誰かが来るかもしれない、と。」

「私達を導いてくれるの?」

「どうかしらね?その時、その神様を桑原家のハイエルフ達が見極めるのよ。」

「見極める?」

「そう。良い神様なら今後も私達の国を発展させてくれる。ならば知識の全てを開示する。国の財宝も全て捧げる。」

「悪い神様だったら?」

「桑原家の当主には代々繭華が残した禁書が受け継がれるようになってるわ。真っ先にそれらが灰になるでしょうね。」

「それってコクホーなんでしょ?」

「そうだね。大事な大事な難しい知識だよ。私にはまったく理解できないご本さ。でもね、そのご本にはこの世界を崩壊させる技術すら書かれているそうだよ。」

「大魔法のご本?」

 目をキラキラさせるみわ。

「そうだね。多分ね。だから、邪神様に持っていかれるわけにはいかないんだよ。」

 と、るいが大きくあくびをする。

「今日のお話はここまでだね。夕ご飯の後、またお話してあげるから、ママのお手伝いしておいで。」

「はーい。」

 私は眠ってしまったるいをベッドに寝かせる。



「正義の名の下にこの技術は使われてはならない…、か……。

 ほんと、意味わかんない。」

続きが読みたいと言う方が一人でもいて下されば、続きを書くつもりです。

ただ続きは現在連載中の話が完結した後、もしくはコロナでの自宅待機みたいに暇を持て余してしまった時に不定期に書こうかと思っています。

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