秋深し隣は何をする人ぞ
僕はしがないエンジニア。
今日からスクラム開発の現場にジョインすることになった。
さて、スクラム開発というのは何回か経験してきたし、前回はスクラムマスターだったけど、今回はメンバーとして参画したわけだ。
前回のプロジェクトのように、不真面目なメンバーに切れたりしないように注意して働きたい。
「小倉です。よ、よろしくおねがいします。」
指定された時刻に指定された東京ミッドタウンビルの受付前で、先方(と思っていた)人に挨拶する。
「高田です。よろしくおねがいします。」
若いお兄さんが僕に合わせて返事してくれる。
大体受け入れ担当の人というのは人当たりが良いから全く緊張する必要が無いのだが、なにせ、今をときめく日本一の企業の現場に入るのだ、緊張するなというのが難しい。
「じゃあ、仮の入館証を受付に発行してもらいますね。正式な入館証発行は木曜日の予定なので、それまでは仮でお願いします。基本的には正式なものと変わりありませんが、実は仮の物のほうが入れる場所が多いので、出来るだけ一人で行動しないでください。出禁になることがあります。」
「え?出禁ですか?どういう理由で?」
話の途中で咄嗟に聞いてしまった。今まで20年働いてきた現場で、出禁があった現場なんて聞いたことが無い。
「(当時)社長がエンジニアの服装に激怒して出禁になったことがあるのです。目の敵にしてる競合他社のブランドマークがデカデカと出てる服は控えてください。」
困ったように説明する高田さん。
「あー。それは・・・。いらっときますね。」
そういうエンジニアも多いのがSES業界というもの。僕のように背広で来てる人も少ない社風だから大変なのかもしれない。
「なので、お客さんは背広で来ないでって言ってるけど、ND社のアンダーは出来るだけ背広です。」
((あかん、スクラムの話までいかない。巻いていこう。))
するすると、誘導されて現場に到着すると、何やら1チームが全員立って話している。
広い室内の大半が座ったままだ。
「ではデイリーを始めましょう。今日のアイスブレイク担当は?」
若いのか年取ってるのかわからない人がメンバーに話しかける。
著者:
スクラム開発に対する誤解や誤用が多い昨今に対して、一つずつ実例を提示していきたい。