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あと1cmの距離

 東京駅から乗った中央線

 同僚のあなたとは新宿駅で別れる


 ほどほどに混んでいて

 一人ならすわれるけど

 私たちはいつも立っていた


 立ったまま、ドア近くの銀色のポールをつかむ


 ガタンゴト ガタンゴト

 ガタンゴト ガタンゴト


 快速列車は一定のリズムで走っていく

 新宿までなら、たった15分

 私の空想デート


 あなたは、私の正面に立ち、無言で資料を読んでいる


 言葉もなく、列車の揺れに身をまかせる

 ポールを掴むあなたの大きな手の下に、私の手がある


 その距離、10センチが遠い


 ガタンゴト ガタンゴト

 ガタンゴト ガタンゴト


 途中のホームで列車が止まる

 少し揺れて、あなたの手が下がる

 私の握るポールの1センチ先にあなたの大きな手


 手の熱が肌に届く


 アナウンスが聞こえ、扉が開いて、閉じる


 再び列車は走りはじめる


 ガタンゴト ガタンゴト

 ガタンゴト ガタンゴト


 カーブで揺れた瞬間

 身体がもっていかれ

 あなたの手が、支えるように私の手にかさなった


 暖かい手の中に消えた、わたしの手


 心臓の音が聞こえないといいけど


 あなたは素知らぬ顔で、そのまま手を握っている


 わたしは何も言わない

 下を向いてるのは


 たぶん、自分の耳が熱くなっているから


 ねえ、あなた……

 今でも思い出すことがあるの


 遠い昔の、あの不器用だった私たちのことを

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