監視カメラ、増やしました
視界共有型術式を組み込んだゴーレム、見張り二号から十一号、つまり十台を私は森のあちこちに設置した。
まだ動かしていなかった園丁用の、指があるゴーレムを設置他の外での作業に向けて改良。
命令を組み込むときに操作型にした。
操作型、便利なんだけどなんというか、自分の体と差異があるからか、小さいのはともかく大きいタイプは本当は動かしにくい。
それでもそうせざるをえなかったのは、修理一号に行動を組み込む命令が、操作するよりめんどうくさかったから。
ナオを後追いさせたり、あの子を乗せて帰還させたりは割と楽にできたんだけど。
狼の悪戯を避けるために、樹上に埋めて高さを出すようにもしてみた。
人間が見るとあからさまに怪しく見えるから、やや高めに、ちょうど見上げたら見つかるくらいか。
……いっそ遺跡か何かを装って、街灯みたいに仕立てたらよかったかもしれない。
さすがに一気に設置はできなくて、一基置いては次をという形で、少しずつ設置していった。
もうひとつ、設置はできるだけ散らばしたかったのだけど、森の地図なんてないし、入り口付近に距離を置いて少しずつ、という形になってしまった。
わき道から来られると、心配ではある。
まぁ、入ってくる前の様子を見るのと、侵入者が来るのを察知するのが主目的だし。
動作チェックも兼ねて、片目を見張りゴーレムたちにつないでみる。
順番に視界を『送る』。
エントランスにいる見張り一号から順番に、古いテレビのつまみを回してチャンネルを送るような動作をする。
異常なし。逆回しも異常なし。
次は同じく、テレビのチャンネルを切り替えるように、場所を切り替えていく。
これ、全部で十一台にしておいてよかった。
これ以上増やしたら、慣れないうちは大混乱間違いなしだわ。
順送りにしたって、なかなか速度上げられないだろうし。
一通りのテストを終えると、一度動作を止めておいた園丁ゴーレム改、工事一号をダンジョンに戻すために動かしはじめる。
視界切り替えに必要な魔力も少ないし、これ石化魔法一回分くらいで一日中使えるな、うん。
あとは樹上に埋めておいたから獣の心配はいらなそうだけど、蜘蛛のたぐいに塞がれると厄介だなぁ。
ダンジョンの中に入ってきた蜘蛛が好き勝手した時のことを思い出した。
今はスライムが入り口あたりもうろついてるから、そうそう大物は入ってこなくなったけど、森の中にはまだまだいる。
工事一号がダンジョンの入り口をくぐるその時にも、目の端をすっと黒いものがよぎったくらいだ。
地下一階、整備室で座っていた私本体の隣に座らせて、操作を離脱する。
さて、今日はまだ時間も魔力も余裕があるから、二階のスライム待避所でも作ろうかな。
そう思ったとき、森の入り口、つまりダンジョンから最も遠いところに設置した見張り二号から感アリ、の報が入った。
視界を切り替えると、五人ほどの男が森に入ってくるところ。
その中の一人に見覚えがある。ナオを追いかけてきた片割れだ。
なるほど、それなりに準備してきたか。
見た所、武装がそこそこ重いから、魔法を重点的に使うタイプじゃなさそう。
重武装する魔法使いがいないわけじゃないけど、ただでさえ重い鎧を付けた上で戦いながら魔法を使うというのは難易度が跳ねあがる。
普通の勉強と運動の文武両道でさえそうなんだから、戦闘になればいわんや。
ステレオタイプというのは、あれでなかなか合っているものだ。
で、その点で見ると、今回の連中はそれができてそうなタイプはいなかった。
うん、魔法の心配はいらないし、第一この見張りゴーレムに気づいていないなら、その程度だ。
私は男たちが入ってくるのを待つことなく、立ち上がる。
さて、まずは庭園に鍵をかけて、この地下一階を閉ざして。
私はしなきゃいけない、戸締りと用心の手順を頭に思い浮かべた。
戸締りが全部終わったら、ゴーレムに起動命令を出すか。よし。
ナオと皇女様にはひとまず何も言わず、庭園と地下の階段を閉ざし、二階以上のゴーレムを起動させて、しばらく。
どこまで来たかな、と私は見張り二号から順にチャンネルを切り替えて行ったら、まだ区画二つ分くらいしか進んでいなかったんだけど、……何アレ。
傭兵たちは大きな檻を、苦心惨憺運んでいる最中だった。
中にみっちり入っているのは生き物だ。
その容量からして、檻が飼うためのものではなく、運ぶために詰めているだけとわかる。
生き物はおとなしくすることなく、なんとか出ようとしているのかガタガタと暴れているのだが、腕を振り回すだけの余裕すらないのだから。
傭兵の人数、増えてるな。さっき見た時の二倍はいる。
そうとう重いらしい。
森の中だからね、台車みたいなものは使えなかったんだろうと想像はつく。
それにしても、あれなにが入ってるんだろう。
なんかこう、人間っぽいかたちしてるな。
やだなぁ。囚人か何かに、釈放と引き換えにこのダンジョンクリアしてこいってやつかしら。
でも、ちょっと中身の色……服の色にしてはおかしいかも。
もう一区画先のゴーレムにチャンネルを変える。
正面に近い角度になったけど、まだ遠い。
準備は終わったし、と私は近づいてくるのを待ちながら、じっくりとその片目に見える光景を観察していた。
見覚えのある男以外は、一見装備品がばらばらに見えたけど、二人ばかり揃いの鎧がいて、指図をしているようだった。
国の正規兵を派遣した?
ナオの境遇を聞くに、あの子たちは機密みたいなものだから、……殺すにしても見届け人とか首実検役みたいなものが要るんだろうか。
そう考えて納得はしても、内臓も無いのに吐き気がした。
……あれ?
その間にも近寄ってきた物が見えるようになってきた。
檻に入ってるの、ゴブリンだ。でも、あれ本当にゴブリン?
あんなのいる? かなりでかいけど、オークとかじゃないよね。
人間よりでかいし、筋肉でむくむくしてるんだけど!
吐き気が吹っ飛んだ代わりに、めまいがするような思いがした。
ゲームでいう所の進化とか、そういうものにしか見えなかった。
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