彼らの物語 2
閑話のようなものです。
難攻不落だったダンジョン制覇とクリアアイテム取得へのご褒美は、ごちそうや勉強の休み。
新しい装備や服や装飾品。
そしてレベルアップで体を治してもらってから、彼ら三人は新しい仕事へと向かった。
今回は単純なモンスター退治。
国の中のとある鉱山へと、彼らは馬車で運ばれている最中だった。
窓から外を見れば、随伴している護衛の騎士がこちらを見返すので、自然三人は顔を見合わせて話をすることになる。
手を振っても、騎士たちはつまらなそうで応えてはくれないのだし。
「コボルト退治だってさ」
「鉱山を占領してるって、王様言ってたけど……」
「数、すごそうだね」
がたごとと揺れる馬車の中で買わされる会話は、中身がどれほど拙くとも作戦会議だ。
「魔王ってさ」
ふと言い出した黒髪の少年が手にするのは、宝玉を付けた彼自身の身長ほどの長さの杖。
魔法使いなのだろう。
それは、残る二人も同じだ。
「あと、どれくらい強くなったら、勝てるんだろう」
騒がしい馬車の中で、沈黙が落ちた。
三人が『王様』の招きでこの世界へ訪れ、『賢者様』の力で大人の体を得て、この国で戦い始めてどれくらいたっただろう。
きっとゲームの世界にきたんだ、とそう言い始めたのが誰かということすら、三人は忘れてしまった。
レベルを上げるためや、『王様』の依頼で村を取り返すためにモンスターと戦い、指定された宝物を手に入れる。
そんな生活はたしかに、彼らの知識の中のゲームの概要に合致している。
ただ、ゲームの中ならひとつの国の仕事をクリアしたら、次のエリアである国へ向かうことができるのがお約束のはずだが、彼らはずっとこの国にいた。
それに、街角で情報収集をしたり道具屋に行くことも無い。
『王様』の依頼の現場には必ず今のように騎士団の守る馬車の中。
このことについては、ゲームの中で大人の体とはいえ、馬に乗れるかと言われればお断りの彼らにはありがたいのだが、情報収集もへったくれもないし、騎士の人達は誰も彼らとはおしゃべりもしてくれない。
それどころか、彼らがしゃべったことがあるのは、お互い同士以外には『賢者様』くらいのもの。
このあたりも疑問点ではあるのだが、……彼等は何度死んでもお城の中の同じ一角で目覚める。
この現象ばかりは、ゲームの世界だから、以外で説明をつけるのは彼らには難しかった。
長いおしゃべりと、騎士の向こうの景色を見ながら揺られた馬車が止まり、扉が開く。
あれだと示された方へと歩いていくと……なんということだろう。
コボルトはどうやら、占領した鉱山をすっかり使いこなし、拠点の一つとして活動しているようだった。
『賢者様』から出発前に言い渡されていた情報通りの光景に、彼らは各々の杖を握りしめなおした。
掃討だ。