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奥津城守の帰還  作者: みかか
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実家の防犯はトライアンドエラー

やはり武器の携帯、大事…

 防犯カメラ、もとい見張りのゴーレムはなかなかにいい調子で動いていた。

とりあえず、仮に名付けて見張り一号。

そのまんまではあるけど、わかりやすさ第一。

増えたら二号三号にしていけばいいし。

苦心惨憺、一晩掛けて(もちろん途中で、決められた時間に皇女様へのお勤めは果たしたけど)がんばって削った甲斐あって、底はまったいら。

上下の太さの差があまり無い三角錐のてっぺんあたりをすっぱり切って、すり鉢状にしたいるところに球が載ってる……そんな形をしている。

頭はころころ、すり鉢の中で自在に転がるようにしたから、さすがに頭に動作プログラムをした魔石を仕込むと削れそうで、胴体に埋めることにした。

あとは目を設定しないといけないから、線彫りで一本二本、線を引く。

正直、これをゴーレムと言われたら首をかしげる人間の方が多いだろうけど、いいんだ、役割に合うようになってれば。


 機嫌よく?頭をころころ動かし始めたゴーレムに視界共有の魔法をかけたあと、私はそこから離れた最上階、どうがんばっても入り口が伺えない場所まで下がって片目を閉じた。


 んぇ?

なに、これ。

閉じた片目に、入り口が映る。

ただしその入り口はさかさま、かと思ったらいきなりぐるりと反転する。

あれ、なに、これ、   あ、ちがう、これ、 動作としては、正しい。

だってあのゴーレムの頭、左右に振るんじゃなくて……台座の上で転がってるんだ。

よくインテリアである、水流で石の玉が転がりまわるアレのように、ゴーレムの頭は縦横無尽に転がる。

「プログラム」として仕込んだ命令は、「周囲を見回す」。

正しいけど、間違ってるぅ!

「左右を見回す」イメージを仕込むの忘れてたぁっ!


 視界は上下左右、カメラ、もといゴーレムの目に設定した溝の向く方向へと変化し続け、一向に止まる気配はない。

……わたしのなかに、いぶくろがあったら、とんでもないことになってる。

共有の接続を切ると、ようやく視界が落ち着いた。

うぁ。

身体は動いてないのに、視界が動き回る、もとい転がりまわるって、違和感がすごすぎる。

うーん……実機として考えても、ずーっところころころころ、石が転がる音がしてたらどうしてもそっちに注意がいっちゃうし、下手したら仕掛けの元に思われるかな。

この人手不足の状態だと、たとえその音が小さくてもずいぶん目立つ。

これは必ず発見されるな。

もうちょっと滑らかに動くようにするか、動きを小さくするか。

滑らかにするなら、頭と胴体をもっとつるっつるになるまで磨き上げるのが一番早いかな。

動きを小さくするなら、プログラム仕込み直しだ。


 そんなことを考えながら、入り口の見張り一号を回収しに階段を降りている途中で、その一号から報せが入った。

私は足を急がせながら、片目を再度、一号の視界と接続した。

ころころころと、転がる視界。

天地がせわしなく入れ替わる中、その中心点には入り口から中をうかがう、大蜘蛛の姿がある。

入り口の大きさからすると……だいたい、人間くらい、ありそうだ。

そういえばこの近くに巣を張っていた蜘蛛は、待ち伏せ型も狩り型も、コボルトたちが狩り尽したんだっけ。

なるほど、よそからの流入で、ここが人気が無いから営巣に最適に見えたわけか。


 かさかさと音がしそうな動きで入ってくると、さっそく蜘蛛は見張り一号に目を付けたらしい。

片目の視界の中、蜘蛛は近づいてきて……


「……」


 私は再び、接続を切った。

アニマルパニック映画は、あんまり好きじゃない。

この角を曲がれば入り口が見える、というあたりで、私はそっと角の向こうを覗き込んだ。

接続を切ってからのわずかな時間で、見張り一号は真っ白にみえるくらいに、糸を巻き付けられていた。

たぶん今接続したら、視界も真っ白だろうな。

このスピードなら、単独のコボルトならやられちゃうのもわかる。

さて、これをした張本人は、どこにいった?


 悪寒、のようなものに、私は咄嗟に横にと飛びのいた。

べしゃ、と濡れたぞうきんを叩きつけるのにも似て、しかしもっと軽い音。

私のいた所、その床に、白く粘るものがぶちまけられている。

いや、これ投げ網だ!


 そのまま前へ走り、身を翻して後ろを、そして上方を、見た。

いる。

でっかぁ……間違いない、狩りタイプの蜘蛛だ。

あれだけでかい体だっていうのに、天井からじっとこっちを見る視線を感じる。


 第一階層は表玄関としてのフロアだから、天井が高い。

それで気配がわからなかった反面、ほんの少しだけ投げ網の着弾が遅れたんだろう。

第一階層の構造はわりと単純だ。

廊下と、部屋。

ホテルの客室階のように、廊下の両側に部屋の入り口がある。

そしてここ、入り口と庭園の入り口の間の空間は、エントランスと呼べるだろう。

ここは、天井を支える柱以外何もない。


 さて、どうしてやろうか。

お互い同じことを考えているのは、手に取るようにわかる。

近くに武器になりそうな石は、無い。

武器のたぐいでも作っておくか、石を持って来てればよかった。


 蜘蛛が動いた。

前脚二本の間に糸が垂れて……さっきのは床にぶつけたから、動かなかったのは網を作るためか。

ゴムが伸びるように、網が広げられる。

編み物が一段落したから、見てとばかりに。

まるで、それを着せかけようとでもするように、蜘蛛は一気に下がって来た。

後ろに飛んで、死のヴェールに包まれるのを避けると、また蜘蛛は糸をたどって上に戻っていく。

天井という絶対有利な位置を手放す気はないらしい。

入り口近くの残骸、片付けるんじゃなかった!

壁は登れなくはないけど、蜘蛛との速度差は歴然。

登り始めたところで、上から襲われるだけだ。

 ふと……使えるものがあったのを、思い出した。


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