彼らの物語 5
レベルアップ?も割と不穏です。
必要な物であるとはいえ、レベルアップの儀式が好きな者は、三人の中にはいない。
形式的には寝ている間に終わってしまうのだが、死ぬほど痛いし、何をされているかまったくわからない。
『痛い』の中身が毎回変わる。
そして寝ている間とはいうものの、傷みに失神している間、という方が正しいくらいだ。
それでも終わりさえすれば、レベルアップ前にあった体の不調はなくなっているし、怪我だって小さなものから大きなものまで消えてしまう。
この世界では回復魔法を使えるのは珍しいし、このレベルアップを利用せざるを得ない……そういうものだった。
そして今回も、三人は目隠しをされて石の寝台の上へと載せられた。
『賢者様』が額に触れると、目隠しが取れたとしても完全に何も見えず、塞がれておらずとも何も聞こえなくなってしまう。
ぽっと、胸の上が温かくなる。
すぐさまそれは温かい、から熱いに変わって全身を巡る。
いやだいやだと泣いても、熱いとわめいても、彼らの声は彼ら自身にも聞こえない。
熱も痛みも、彼らが意識を失うまで続き。
熱の中でもがいているのか、そうしていると思い込んでいるだけで身体は動いていないのか、もうわからない中で、一人は思った。
どうして。
どうして。
こんな風に、してまで。
「……ッ」
目を覚ませば、そこはいつも通りの三人の部屋だ。
「ナオ、起きた?」
呼びかける少女は、目覚め際のうめき声を聞いたのだろう。
木のコップに水をついでくれている。
「はい」
「ありがとう。ケンは?」
「少し前に目を覚ましてた。今は寝なおしてるよ」
水が喉を通るのに、ナオは安堵した。
生きてる。
それから、ちゃんとこの部屋で目を覚ませた、と。
「今度のも辛かったね。なんであんなに痛いのかなぁ」
「ケンは、急激な成長で身体が痛くなるんだろうって言ってた」
コップを持つ自分の手は、ちゃんと大人の手だ。
ミヤはともかく、ケンと同様にナオも『ゲーム』は知っている。
実際にやったことはないけれど、レベルアップしたら数字がポコポコ上がるのは知っている。
一気に背が伸びるみたいなもんなんだろうとナオは理解していた。
だったら、痛くってもしかたない。
ゲームの中では普通に動いてたけど、あれはきっとゲームの中だからなんだろう。
現実の中じゃ、転んだだけでも痛くてしばらく動けないくらいなんだから。
ナオはベッドから起き出して、鏡を見てみた。
大丈夫、どこにも火傷とかはない。
レベルアップすると身体が新品みたいになるのは、もう恒例だったが、ついつい前の作戦で怪我をしたときの癖で調べてしまう。
「今日と明日はお休みなんだって」
「そうなんだ」
「その間に騎士団のひとたちが、あっちこっちの町でゴブリンが出てないか調べてくれるんだって」
振り返った一瞬、ナオの目に友達がまったく別の姿に見えたのだけれど、そのことは心の中から泡のように一瞬で消えてしまった。




