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奥津城守の帰還  作者: みかか
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彼らの物語 4

「彼ら」の話は割と不穏です。

 彼らに下された『ゴブリンの群れ』の退治の難易度は、ゴブリンという『魔物』のイメージから与えられるものよりもはるかに高いらしい。

ゴブリンたちはそれまでの略奪で得てきた物を、武器や防具として利用する。

それはなにも、本物の武器や防具に限るものではない。

鍋を被り、服は腕に巻き付け、油は火とともに使ってくる。

粗末なものであっても、腐ったものを塗った矢を打ちこみ、やはりこれも服地を裂いた投石器で石をぶつけてくる。

それでも一対一であれば、騎士たちで十分撃退可能だ。

だが、ゴブリンは必ず一人に対して複数で襲ってくる。

結果、押し切られて、押しつぶされ……その持っていた武器なりを奪われるはめになる。


 だから自分たちが派遣されたのだろう、と強化された馬車の、その隙間のような窓から三人は怠らず外を警戒していた。

窓の外から見えるのは、森の木々。

この森を通り抜ける道が、ゴブリンの縄張りにされ、商人たちが帰らないのだという。

もちろん、『王都』に通じる道は他にもあるが、物流の一本が止められること、なにより『王都』に訪れることが危険であるという噂がこれ以上広が

らぬためにも、街道の安全を取り戻すことは必須であった。


 すでに、この街道を使わないようにとの王命が出されて、ゴブリンは獲物を得られぬ状態に追い込まれている。

そこを通りがかれば獲物として認識されるのは当然。

ゴブリンを誘い出し、そのまま退治するという計画だ。

そのために、特別な馬車一式が彼らには貸し出されている。

三人の知らぬ言葉ではあったが、この馬車は小型の装甲車のような造りになっている。

表面に鉄板を張り、窓も隙間の細い格子。

それを引く馬にも、矢除けの馬鎧に耐えられるような大型の馬を使っている。

もちろん、この馬車を動かす御者も同じように武装していた。


「まもなくです」


 その声が聞こえるとほぼ同時に、カンカンと硬い音が外から響いた。

それとともに馬車が止まる。


「敵襲!」


 むちゃくちゃな狙いの矢や、石が弾かれている。

「……炎、炎、火の花よ」


 細い隙間から、細い指先がわずかに出て、森の一角を示す。


「赤く赤く、咲き乱れよ」


 その指先から生まれた火は、まっすぐその示された先へと飛び……爆発した。

それこそ、花開いたように。

木陰から狙っていたのだろうものたちが、それに巻き込まれて悲鳴をあげる。


「あ、火はやめろよ。山火事になっちゃうだろ?」

「あいつらの装備も燃えるから、効率よくないか?」

「もう! ここ道路よ? 水よ、流れよ、押し流せ!」


 今度の指もまた細く、同じ場所を示す。

先ほどのものを火種が飛んだとあらわすなら、今度は水が大量に現れた、だ。

悲鳴ごと、水が炎を押しつぶした。


「渦巻け、逆巻け、風の壁」


 そうしている間も止むことの無かった、別方面からの衝突音が風の音に掻き消される。


「おし、外出てもOK。近寄られないようにだけ注意な」

「えー、中に居た方がいいって」


 そう言いながら、三人の一人は反対側の窓から指を差し出した。


「打ち上がれ!」


 これならいいだろ、と仲間を見る彼の魔法の範囲にいたゴブリンたちは、そろって高く風に『打ち上げられた』。

森の木よりも低いとはいえ、立ち上がった大熊二匹を重ねても足りない高さへと。

上昇はすぐに落下に変わる。

真っ逆さまに落ちた、それと同時に体に付けていたり、手に握っていた物が、すべてゴブリンたちの体に刺さる凶器に変わる。

落下の衝撃と、それらの凶器によって、憐れな犠牲者たちはすべてがおかしな方向に体や首や四肢が折れ曲がってしまっていた。


「あー、なるほど。これなら森は大丈夫か」

「やだ……」

「じゃあ、ミヤは矢を伏せいでてくれよ」


 短いやり取りで、役割は決まる。


「じゃ、片付けよう。全部で三十だっけ?」

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