夢の終わり
一生見続けるのではないかと思っていた夢に突如終わりを迎えた。
遠征から戻り労いのお祭りが開かれた。
街の人々は豪快に料理や酒にゆかいな演奏、魅力的なダンスに面白い曲芸などて疲れてへとへとになった騎士達をもてなした。
しかしその場にルメリアの姿わない。
彼女は教会で祈りを捧げていた。
「此度の遠征で僅かではあるが死者がでた。死者がでてしまったのは私が団長としての力が未熟だったからだ。死者に私から出来る事はあの世で幸せになる事を祈る以外ないから。」
彼女は黙々と女神像に祈っていた。
俺も同じように死んでいった勇士に祈りを捧げた。
暫くして俺とルメリアは祭りに参加した。
お腹いっぱいになるまでたべて散々笑い、祭りを楽しんだ。
その晩俺はルメリアの部屋を訪ねた。
コンコンと扉をノックするとルメリアから「どうぞ入って」と返事を貰い入室した。
「こんな夜更けに何の用事?もしかして異世界での愉快な話しとかしてくれたり?」
ルメリアが期待の眼差しをむける。
「いやっその…」
言いたい言葉が喉に引っ掛かってなかなか声にできない。
ルメリアはきょとんとして首を傾げた。
「俺はお前のっ…」
息を整えて続きを口にしようとした。
その時警報音が高らかに鳴り響いた。
「敵の侵入だとっ国の守りは完璧でそう簡単に侵入できない筈なのにどうして。支度を済ませて早く出撃するぞ。」
俺は思いをルメリアに打ち明ける事できずに侵入した敵のもとに向かった。
昼間の間賑やかで笑いの耐えなかった街中から無数の悲鳴が聞こえる。幾つかの建物は崩れ、火を放ち幾人かの死体が地面に転がっていた。
敵は魔王軍の軍勢が四集を囲い次々と進撃する。
疲弊していた騎士は敵の軍勢に蹂躙され僅かな戦力が進軍する魔族達を止めていた。
その中に白い光が次々と闇を払う姿を目にした。
光の正体は騎士団長ルメリア。彼女の剣舞は魔族数十体をあっさりと散らしていた。
俺もルメリアに続いて剣を振るう。
「我ら騎士団はこのような奇襲などでは決して屈しない。武器を握れ、振るえ、蹴散らせ、進めー。1つでも多く敵を討ち取り武勲を立てよー。」
ルメリアの一声で騎士達は叫びをあげて敵の進軍を押し返し始めた。
このままいけば何とかなるかもしれないと思った矢先禍々しい閃光が希望を貫いた。
ルメリアが地に膝をついた。
ルメリアの右腹部から鮮血が流れていた。
「ルメリアー」
俺はすかさずルメリアの所に駆け寄った。
「馬鹿だな私は…敵の遠距離攻撃の警戒を怠ったあげくに地に膝をついてしまうとはなっ…ごふっ」
ルメリアの瞳から雫が流れる。
ルメリアの怪我は重症だが安全な所で手当をすれば助けられるかもしれない。
俺はルメリアを担いだ。
「何を…」
俺は彼女を背負いながら走りだした。
騎士達は俺を庇うように武器を振るっていた。
熟練の厳つい騎士が叫ぶ
「団長を守れ!彼女は我が軍の象徴であり守りの要だ。俺達の代わりはいても彼女の代わりなどいない。すなわち彼女の為に命を使うは騎士の誉れである。ケイン!ルメリア団長をたのむぞ。」
俺はあらゆる敵の攻撃から切り抜けて城の裏にある森に身を潜めた。
ここは俺がルメリアと始めて出会った場所だ。
ルメリアの鎧を外してポーションで濡らした布を外傷に押し当てながら回復魔法を使った。
だが血は止まらない。
「くそぉっ」
俺は何回も回復魔法を使った。
「ケイン…私はもう助からない。だから私を置いてお前だけでも」
俺はルメリアの言葉を遮った。
「俺はお前の事が好きだ。だから好きな女を見捨て逃げるなんて選択は俺にはない。全力でお前を助ける。」
ケインは剣を握りしめた。
ケインの周りを魔族数体が囲んでいた。
「はぁーー」
魔族を蹴散らしたケインは返り血と自分の出血で体を真っ赤に染め上げていた。
「ルメリア…」
ケインは静かに眠るルメリアの前で膝をつき倒れた。
そして深い闇にに沈んだ。