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私の____な日常  作者: 百合烏賊
9/20

第9話 私の忘れてしまった日常

本文じゃなくて、前書きに本文を写そうとしました。

「広樹くん…ウズラちゃん…?」

「なぁに?愛莉ちゃん」

「可笑しい話だよな、ここのことは一切分からないのに、君のことだけは鮮明に思い浮かぶんだ。自己紹介した後だけど、僕らって友達だったのかな?」

名前を呼ぶと、にこりと微笑みながら、返事は返ってくる。

私は、その笑顔にホッとする。

「鉄矢く、」

私は、無意識に言葉を飲み込んだ。

彼の目から、流れるそれは、涙。

そして彼から、放たれるそれは、憎悪。

「ねぇ…鉄矢くん?」私は、震える足で立つ。

そして、トンとゆっくり足をあちらに向けて、私は歩く。

それは初めて立ったクララのように、ゆっくり、震えて。

だが、この震えは、恐怖によるものだった。

手を伸ばすと、彼は、大きく手を挙げた。

「っ!!」

思わず、バッと構える。

「大丈夫だった!?」

振り下ろされた手は、下され、私の頭へ。

優しく撫でられて、少し気恥ずかしくなってきた。

「わー、私も撫でちゃおう!」

「じゃあ、僕も…」

いつもの雰囲気に戻っていく。

異様さだけは変わらずに。

先生を殺した犯人を見つけなくちゃ、いけない。

「きたよー」

「うぅ、怖いぃ…なんか、肌寒くないぃ?」

「さっきから、これなんだよー、助けてくんな…い?」

彼の顔はすぐに、蒼白になった。

私はすぐさま、思い出した。

『うわぁ!校長先生の頭は絶好調!』

「う、ウワァァァァァァァッッッッ!!!!」

「ま、待って…!!や、ヤダ、置いてかないで…!!」

普通なら、ふざけるなという場面を彼は変えた。

そう、普通ならば。怒られるはずだった言動、ずっと不思議だった。

私はあの異常な場面を、笑って、過ごした。

そして、受け入れてくれたと喜んだ。

おかしすぎた、あの場面は明らかに。

『そう、可笑しいんだよ。先生、生徒、学校の存在、全部』

ケラケラと笑う、まるでチェシャ猫のようにそいつは話す。

『話を変えよう、英雄に憧れたことはあるかい?』

汗がポタリと落ちた。

私の眼孔はきっと、開いている。

それは、この声を聞いたことがあるから?

いいや、この顔を見たことがあるからだろう?

違う、これはきっと、驚愕という感情とはかけ離れた、恐怖という感情。

「違う、きっと、これは…」

『質問の返しは、無言?…お友達さん、きみ悪がってるよ。まぁ、僕もだけど』

私は、バッとそちらの方を見た。

「あ、愛莉ちゃん…?」

怪訝そうな目、不気味そうにこちらを見る目。

そうか…お前もか…。

私は、そいつらに笑顔を向ける。

「ごめんね、考え事してて…八木ちゃん、大丈夫?」

「だ、大丈夫…前言撤回…腰ぬけちゃった…状況説明お願いできるかな?」

にこりと微笑む彼女に手を貸す。

すぐさま、立つ。だが、足はガクガクと震えている。先ほどの私のように。

「ええ、是非。」

私は、全員の顔を確かめる、一人足りない。

『僕も幽霊見えるんだ、よろしくね。あっ、名前は、木下夏樹!』

跳ねたくせっ毛の茶髪が印象的なあいつ、何故逃げた?

『僕も幽霊見えるんだ』

その言葉が、頭を木霊する。

「そっか…」

私は一言、小さくそう呟くと、鉄矢くんの方に目を向けた。

「ねぇ、お願いしてもいい?」

「…何を?」

「夏樹くんを探して欲しいの…二人も…きっと手かがりが見つけられるから。私は八木ちゃんに、状況説明するから。お願いしたいなぁって…。」

私は、伏せ目がちにそう言った。

お母さんを騙した時のように。

「それなら、もちろん!二人とも一緒に行こう!」

「う、うん。」

「大丈夫だといいね」

「そうだね!」

ニコニコと未だに笑う、鉄矢くんは私を一回見る。

「夏樹と…菜月も探すね!」

「お願いしますね。」

「わ、私も手伝うよ!あの二人の安全確保とか皆の安全確認とかしたいし…」

「あっ、保健委員だったよね、じゃあ、お願いしたいなぁ。」

私は、またもや微笑む。

「状況説明は皆が揃ってからでいいか!私は、この教室で待ってるよ!教室に来る人もいるだろうから。」

言い終えると、うんと言って、皆が出て行く。

足音が遠くに行ったのを聞き終えると、私は、また話しかけた。

「ねぇ、英雄ってそんな偉いものなのかな?」

『さぁ?僕には分かりかねるモノだからね。』


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