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私の____な日常  作者: 百合烏賊
20/20

後日談「俺の初恋」

無理矢理進めた感のある、恋愛です。

注意です。

母と仲直り?をして、精神メンテナンスをしてから退院、後日作家として復帰した。

俺の新しく作った小説は『夢の中の悪夢』というもので。

ポツポツとだが、自分が出してきた本の中で一番売れている。

その物語は少年少女が夢の中に入り、悪夢の根源を見ていくという話である。

「母さん、おはよう」

「おはよう、鉄矢」

今は笑顔の母と共に暮らしている。

身の回りの世話などをすかさずやってくれるので、一人暮らし(でだらしない)だった身としてとても助かっている。

そんな母が言い出した。

「鉄矢、そろそろ、彼女作りなさいな。」

「え?」

「あら、彼女はもういたの?」

意外そうな顔で見てくる。

いや、失礼な。

彼女ぐらい…と言いたいところだが、今まで無精髭の生えた、バサバサした髪の毛のおっさんであった俺は、彼女なんて人生で一回も作ったことないし。

青春時代は、母親に見放されたショックでそれどころではなかった。

せいぜい、成績を上位にあげて、母を振り向かせようとした程度だ。

「作れないのは、私のせいかもしれないけど…だけど、貴方を支えてくれる人は何人いてもいいと思うわ。」

カタンと母が目玉焼きの乗ったトーストの乗った皿を置いた。

三段活用だ。相変わらず美味しそうにつやつやと光っている。

「というわけで、こういうのに応募してみたからやりなさいね。」

母がお皿の隣に置いたのは、婚活用紙。

…婚活?こんかつ…。

「とんかつ!?!」

「婚活よ!!?何言ってるの?!」

いや、そんなまたか的な目線で見ないで…。

違うんだよ、頭の中に出てきて…。

別に婚活に出ること自体を否定してはいない。

順序というものがあるわけで…。

こう、テレビとか見てるとガツガツした女性や高年収を求める女性の声が多いわけで…。

俺(不定期年収、ヘタレ)

うん、明らかに避けるであろう性格だ。

俺も夢の中の僕だったらいいんだけどな。

そう言いたくて、ヘラッと少し笑った。

「とにかく、女性一人くらいとは話してきなさい。もし、彼女が出来なければ、お母さんの世話お願いね。」

「それくらいなら、まぁいいけどさぁ…。」

二つ返事で了承すると、母さんは何言ってんだこいつという顔をしだす。

「お母さんの年は?」

「…52です。」(言っていいのだろうか…?)

「貴方の年は?」

「23です…。」

「若いうちに恋をしてきなさい!!」

そう言って、口に目玉焼きトーストをブチ込まれ、この後本屋に行く予定だった俺は既に着替えており、その服装のまま、外に出された。

23歳男性が、外に出されるという状況はいかがなものかと思うが事実である。

「はぁ…」

一体、どこでやっているんだ…?

アパートの階段をカタンカタンと音を立てながら、降りる。

ポストの中身を見て、本屋のクーポン券付きのチラシを見つけてラッキーと鞄にねじ込んだ。

「あっ、それちぎれると使えなくなりますよ。」

「えっ」

慌てて、チラシを鞄から引っ張る。

慌てたのがいけなかった。クーポンはちぎれて、風の赴くままに飛んで行った。

「ああ…」

マジかぁ…とつぶやきそうになったが、先ほど声をかけてもらった女性の笑い声が聞こえた。

どこかで聞いたことがあるようなぁ…。

「ふふ、変わってないね。鉄矢くん」

その女性ははっきりと俺の名前を呼んだ。

どこかであったことがあるだろうか。

俺は覚えていない。

「ドジっぷりが一周回って清々しいくらい」

ふふふと未だに笑っている。

手提げ鞄の中から、瓜二つのチラシを出すと俺に渡してくれる。

「…いいんですか?」

「ええ、風で飛ばされた可哀想な人を見てしまいましたからね。」

と微笑みながら、言った。

風がほんのりと吹くので、彼女の真っ黒な髪の毛がゆらゆらと揺れていた。

「私のこと、覚えてますか?」

そういった女性の目の奥が、とても、とても薄暗くて。

それは、そう、俺を救った、あの子に似てて…

「愛莉…」

ボッーとしながら、小さな声で言ってしまった。

彼女はぽかんとした顔でこちらを見つめていた。

慌てて、手を前に出し、左右に振る。

「ご、ごめんなさい!違くて…」

「あはは、まだ覚えてたんだね、その設定…」

「せ、設定?」

「あれ?覚えてなかったかぁ。よく出てきたねぇ」

本当にわかっていなかったのだ。

この子と、愛莉の事で話したことがあっただろうか。

「私は笛吹愛佳。昔は違う漢字の哀歌とか愛莉とか言ってたけど…、正直言って、黒歴史なんだよね。」

えへへ、掘りおこされちゃった…と少し頬を赤く染めている。

頭の中でほんのりと、中学三年くらいの話が掘り起こされる。

*

「愛莉って呼んで!」

「…愛佳さんじゃなかった?」

「あと、勉強教えてくれないかな?」

「唐突すぎない?」

僕はため息をついた。

それが初対面での態度だろうか、ましてや三年だ。

成長して、配慮の一つくらい出来ただろう。

「名前は?」

「は?」

「わっとゆあーねーも?」

素晴らしいほどに間違っている英文をドヤ顔で言い放っている。

「What your nameって言いたいの?

ねーもじゃなくネーム。……僕の名前は、鉄矢。」

「鉄矢くん…鉄矢くんだね!名前かっこいいね!よろしくね!」


*

俺は不覚にもその笑顔に胸が高鳴った記憶がある。

そうだ。

愛莉ちゃんじゃなく、哀歌ちゃんでもない。

この子はあの子じゃない。

「この紙はなぁに?」

そう言って、少し気持ちが沈んでいた俺の(チラシを持っている方じゃない)手から、婚活用紙を取る。

「あっ!」

だめ!と奪い返そうとしたが、残念ながら、彼女の顔を見て、動きが止まった。

怒っているような顔だった。

お金だと思っていたのだろうか。

何かの引換券とか、欲しかったのだろうか。

こちらが悪いことをしたわけではないのに、悪いことをしたという気分になる。

「ねぇ、今から婚活?」

先ほどの上機嫌そうな声から一転して、不機嫌そうな声だ。

いや、自分がそう願っているだけかもしれない。

その声は明らかに不快を表した声だった。

「ご、ごめんなさ…い。」

本能的、反射的にその言葉が出た。

「…謝ってなんて言ってないよ。大丈夫だよ」

次に出た言葉はとても優しそうで、母親のように安心する声だった。

「今から、意味わかんない事を言っていいかな?」

返事はしない。

「私、嫉妬しちゃったの。鉄矢くんと結ばれる人。」

その言葉に思わず顔を上げた。

彼女は顔を耳まで赤くさせた。

「これ…結構勇気いるね…えへへ…。」

そう言って、手で顔を仰ぐ。

「鉄矢くん、よければでいいの。昔言えなかった事を言いたい。」

先ほどの笑顔を少し残したまま、彼女は真剣そうに言った。

「私と付き合ってくれませんか?」「ずっと、あの時から好きでした。」

彼女の声と俺の声が重なった。

本能的に叫んだ。

俺の気持ちだ。

彼女はびっくりしたのか、目を丸くした後に、涙を流した。

風のせいで、花が散った。

それは彼女と俺を彩っているかのような感覚に陥れる。

「ぜひ。」「私も。」

お互いがお互いの言葉に返事をした。

僕たちは微笑んだ後にお互いに照れた。


*

一年生の時に一目惚れをした。

初恋だった。

愛佳は初恋が遅いだなんて、散々言われた。

念願の初恋だった。

「好きだです…好きでぅ…」

練習しても何度も失敗をする。

うぅぅぅと赤いほっぺを抑える。

それを繰り返して、気づけば、私は三年生だった。

なんということだろうか、好きだった彼と隣の席。

挨拶なんかして、勉強を教えてもらって、最初は冷たくって悲しかったけど、

慣れれば、この人は本当に優しい人であるとわかった。

だからこそ、今、彼と結ばれたことが笛吹愛佳として、最高潮の幸せであることが私にはわかる。

彼を…私たちが今後ずっと幸せになることを誓います。



ありがとうございました。

よければ、他の小説を読んでいってください。

初の完結作品です。

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