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私の____な日常  作者: 百合烏賊
17/20

第17話 夢に落ちていく。

血液表現注意です。

「あの子は、とってもいい子だわ」

「いいえ。あの子は、いい子に見せたいだけだわ」

そう言うあいつの声は、嫌いだ。

「空っぽの死体ね」

あいつは、僕をそう例えた。

(そうだ、僕は死体だ。)

ならば、動いてはいけない。

立ち止まって、座り込む。

時間は流れていく。

顔を隠して、うずくまったまま。

影が僕の前に来た。

あいつだろうか。

それとも、救いだろうか。

「大丈夫?」

来たのは、救いだった。

同時に、あいつだった。

「あ…あああ…」

僕が”可哀想”だということをあいつは、

母親は理解していた。

僕は、その”可哀想”が嫌いだった。

「い、や…ごめんなさい!ごめんなさい…!」

母親の口から、出るのは懺悔の言葉ばかり。

僕は、母親に触れようとした。

手を伸ばす。

消える。

母親が、消えた。

「お母さん?」

初めて、口に出す言葉だった。

「お母さん、どこ?」

口からは、疑問ばかり出る。

それは一瞬だった。

母親は僕を視界に入れると、微笑んだのだ。

そして、口を開こうとした。

だが、口からは呼吸を求める音しかしない。

僕は、涙を流した。

生まれて初めて泣いた時のような気分。

解放された嬉しさではない、もう少しあそこにいたかったという悲しみからの涙。

あれが母親の愛だったのだ。

僕を見て、嬉しそうに微笑む母親の表情が脳裏に焼きつく。

「ア”ァ”ァ”ァァぁ”」

声が掠れてきた。

僕には、愛が足りない。

母親がいないから。

あの時きた救いが持ってきたのは、穏やかな日常ではなく。

「縄だった。」

母親が死んだのは、彼女のせいだ。

彼女が持ってきたのは、縄だった。

母を殺し、僕を悲しみに縛り付ける縄。

あの日から、僕の中で彼女は、

地獄から救ってくれた恩人であり、自分の母を殺した憎い存在となった。



「だって、いつまでも終わりの幕が降ろされていないから。」

彼女は、酷く悲しそうにそう呟いた。

やめてくれ。

母親と同じ目で僕を見ないでくれ。

憎しみと悲しみが入り混じり、胸にモヤモヤとした何かを残す。

「岸辺哀歌、私の名前だよ。」

「愛莉なんて、偽の名前で私を呼ばないでね。」

そんなこと、僕はずっと前から知っていたんだ。

僕と同じ存在であったことも、僕と同じ、大事な人を亡くした人。

(違う、彼女は彼女の意思で殺した。)

「憎悪と愛を示すのは感情ではなく、人間である。」

聞こえた?と彼女は微笑んだ。

先ほどから、話が変わりすぎだ。

ガラス片を強く握りすぎたのだろうか。

僕の手は、ジンジンと痛む。

脳みそもガンガンと痛む。

「もう、やめてくれよ…。」

彼女の襟をつかむ。

「僕は疲れたんだ。早く、彼らと同じように終わらせてくれ。」

「まだだよ、終わりの幕は降りてないの。」

先ほどから、何を言っているのだろうか。

「まだ。私たちには、まだ夢がある。」

夢とは何だろうか。

「まどろむ暇がないくらいに、あの画面を悲しませないようにするために。」

パッと手を離す。

それは、彼女に恐れたからだろうか。

いや、違う。

ガラス片からは、血がポタリと落ちた。

それは、じわりと地面に滲む。

今の自身の温度すらわからない。

その一連の流れに義視感を覚える。

前にもあった?

いや、なかった。

僕は何を血迷ったのか、血の流れる手を彼女の真上に置いた。

ぽたりぽたり、頬に、髪に、肌にに血が落ちる。

「ひっ…!」

予想通りだった。

彼女の瞳には、畏怖が浮かび上がる。

それをずっと眺める。

僕の胸は、少し傷つき果てていく。





これは、全部。

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