第11話 私の…私は?
ラヴクラフトの小説より、邪神を何匹かつれだしてます。
宗教要素、邪神要素、意味不明要素があります。
お気をつけてください。
「み、みんなは?」
私は、にっこりと微笑みを浮かべた。
なるべく、不自然にならないように。
「みんなは…ね、ここ、変なのがいるんだよ…本みたいな…」
なんとか話をそらす事ができただろうか…?
それなら良かったと息を吐いたが、変な本とはなんなのだろうか。
「愛莉ちゃん、私…ね、その本にね…追いかけられてたの…」
やぎちゃんは、ドアと鍵を閉める。
「なんで…鍵かけたの?」
「いやだよ…私、死にたくないの…まだ、おとうとおかあの事…思い出してないのに…」
「だから、なんで…」
私の脳がガンガンと鐘を打つ。ひどい頭痛だ。
思わず、頭を押さえて、応答する。
やぎちゃんは、言葉を続ける。
「その本がね…ぁあ、みんなは?どこ?殺…され…る」
どうやら、錯乱しているようだった。
彼女の額から、汗が流れる。
私は、近づいていく。
「いやぁぁ!!!近づかないで!」
「安心して…」
彼女に一歩一歩近づいていく。
恐怖で顔が引きつっていくのを見る。
そうか、そんなに私は化け物なのか。
「ひっ、開けて!誰かぁぁぁ!!!!開けてぇぇぇぇ!!!!」
こんなにも叫んで、彼女の喉は潰れないだろうか。少し心配だ。
それにしても、自分で締めた鍵を必死にこじ開けようとしているのは、なぜだろうか。
「ヤギちゃん」
ドアをガチャガチャとこじ開けようとしている彼女の頭上に、私がいることに気づいたのだろう
やだっ…と絶望の声を出している彼女を真っ暗闇の私の双眼がじっと見つめる。
彼女の澄んだ茶色の目が羨ましくて仕方ない。
いいな、いいな…。
「安心してってば…」
抱きしめる。
ヤギちゃんの生きているという証の暖かさは、私も安心させる。
「…っ」
ヤギちゃんが息を呑むのを、感じた。
「離して…」
望み通り離す。
瞬き一つ。そして、彼女の瞳をじっと見つめる。
黒と混ざりと濁ってしまった瞳。残念だ。
彼女は、自分の腕で自分を抱きしめて、カタカタと震えだした。
「冷たい…怖い…」
ポソポソと呟くその姿に、私はとどめを刺した。
「貴方も私と一緒…それと私、愛莉じゃないの、ごめんね」
「えっ」
ひょうきんな声をあげて、顔を上げた。
「そう、私は哀歌。夜月哀歌。貴方とおんなじ…人殺し」
にっこりと、ポケットにあった物を取り出す。
『僕は君の幻想で、彼らもまた君の幻想。』
「殺しても、問題なんて起きない。」
そう、現実の彼らには害はない。
私が彼らを殺そうと、彼らが私を殺そうと、この殺害現場は誰にも推理のできない密室。
そう、無理難題な問題を馬鹿が解こうとするもの。
「バカには解けない問題、私が解いてあげる。貴方の記憶の居場所も全て…」
『救いたいなら、殺さなくちゃ、彼女の閉ざされた記憶の奥底を見るために。』
そいつは私に囁いた。
殺せ、殺せと。
私は、手に持っていた縄で彼女を縛る。
「ここは、私の妄想で、想像で、幻想で…もうどれかもわからないけれど、ここがどこであったかも忘れそうなほどに暖かい気持ちで溢れるの。」
彼女は、無抵抗で縛られていく。
その顔は、殺されることを受け入れるかのようで。
「私が…なんとかしなくちゃいけない。私が、救わなくちゃいけない。」
暗示。暗示のみ。
『まるでゲームのように、屍は積み重なるんだ。』
「まるでそれは敗者のように、地に這いつくばる。」
『君は、僕の人形で』
「私は、貴方の殺害者」
「早く、助けて」
うわ言交じりに呟いた彼女は、もはや殺されることを願っている。
「嗚呼、神よ。私がそちらに行くまで、彼女をどうかお救いください。」
『神を信仰する者のみが見ることの出来る風景、僕はそれが気になって仕方がない。』
「アザトース様、私は貴方のみを信じます。」
私は…私の…。
暗転。




