第10話 私と憧れた日常
『正直に言うと、英雄に憧れるっていうのは、真っ当なことだとは思うよ。あっ、君には関係ないか。』
フッと、鼻で笑って私を場にする。
『いつか自分もこうなりたい。優しく強い人間になりたい。そう思わないかい?』
「…」
私は黙って、首を振った。
『あははっ、だと思ったよ。』
笑ってから、表情をなくす。
それは、私に暴力を振っていた、あの女のように思えてきて、ムカつく。
「なんで、英雄なんかに憧れるの?なれるわけがないのに。」
ぶっきらぼうに伝える。
『君が、あの担任に依存していたのと一緒さ。君は、あの女性のことをどう思った?恋愛感情でも抱いたかい?それとも、殺意?』
殺意なんか抱くわけない。先生は、とても優しい人で…私を、私たちを導いてくれて…かけがえのない人で…あれ?
「あの人は、私たちとお話をしていただけだったのに…あれ?」
なんで、私はこんなにも彼女に依存しているのだろうか?
疑問が募る。山のように、ちりのように。
『その感情が、何かわかるかい?』
「そのくらい…わかるっ…!」
これは、依存で…。
『違う、君は依存をしている。だけど、依存は感情とは呼べない。』
いつの間にか、私の前に来ている。
こいつは、私の何を知っているのだろうか。
私の何を知っていて、何を話しているのだろうか。
嗚呼、気が狂いそうになる。
汗がポタポタと落ちる。
殺したい。殺して、楽にしてあげなきゃ…!
『あっ、やっと、わかった?君のそれの名前。』
私が拳を振るその前に、ニコッと微笑んで、遠くの方に飛んでいく。
「待てっっ!!!殺してやるっっ!!!!」
『ねぇ?話くらいは聞いてあげるっていうのに、その口の利き方はひどくないのかな?』
「お前が、お前が、先生を殺したんだ…!!!だから…!」
そいつは、大きくため息をつく。
『何言ってんの?バカじゃないの?君もそこらへんの人間と一緒だったの?僕の期待はずれ?』
息が荒くなってくる。殺したいという殺意で溢れる。
『まあ、いいよ。一つお話をしてあげようかな?』
「…何?!早くしてよ!!」
殺したい、殺したい、何の理由もない。ただ、私はこいつを殺したい。
『ハッピーエンドは好きかい?メリーハッピーエンドの方が好きかい?それとも、バッドエンド?』
優しく、抱きかかえられた赤子に問いかけるような声音だった。
「その、声…やめっ」
『お姫様を救った王子様はお姫様と結婚して、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』
大好きだった本の最後。
めでたしとはなんだったのか、私の望んだは希望は来ない。
「やめて…!!不快だわ…!気持ち悪い…!!」
『君さ、わかってるの?鏡でも見てきなよ…後、叫んだら、廊下に響くよ?後ろ見なよ。』
ニコニコと、微笑んでるそいつはただ、楽しそうだ。
私を弄んで楽しいのか?
後ろにも、誰もいないはずだ。
私が気づかないはずがない。
「あ…い、り…ちゃ、ん…、誰かそこにいるの…?先生、なんで死んでるの…?殺すって…誰を……?」
冷や汗がポタリと落ちた。
次から、次へと落ちていく。
私の目の前にいるのは、逃げたはずのヤギちゃんだった。
「貴方は…本当に、あ、いりちゃん…なの?」
ああ、どうしよう。
ああ、どうしようで終わる小説好きな感じがある。




