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短編集。

ウラワザ家族が異世界チート ~ 決めろ、古の力(コマンド) ~

作者: ぷちミント

『我が訴えに応じ現れよ。円卓の勇者よ!』

 丸テーブルを囲み、今まさに夕食を取ろうとしていた浦和一家は、そんな力強い声を聞いた。そして事態を理解する暇もなく、家族は足元に出現した魔法陣から溢れ出た光により異世界に召喚されてしまった。

 だが魔法陣の光に導かれる際、家族は全員喜びの表情を浮かべていた。

 

「まったく。なにをグダグダやっておったのじゃ貴様ら。ワシが呼びかけて三度目じゃぞ。三度も呼んでようやくとは、鈍いにもほどがあろうが」

 一家が気付くと、目の前の景色はかわっていた。

 少し狭めな我が家ではなく、どこかの大広間のような場所で。薄暗く、いくつかの蝋燭の火だけの灯ったそこを、一家は呆然と眺めている。

 目の前には不機嫌そうな、いかにもRPGの王様然とした、冠をかぶり宝飾品が先端についた杖を持ち、ローブのような物を着た立派な髭を蓄えた中年の男が立っていた。

「あの。えーっと。もしかして?」

 えんりょがちに、その不機嫌そうなおっさんに声をかける少年、長男のイサム。

「もしかしなくとも、貴様らグダグダ一家は、魔王討伐のため勇者としてワシらが召喚した」

 苛立たしげに床を杖で二度叩く。よく響く広がる低音が、この部屋の広さを示していた。

「おおお!」

 家族四人は、全員揃って感動の拍手をしている。そんな様子に目が点になる部屋の人たち。

「なんじゃこいつら。呼ぶ奴間違えたかなぁ」

 王様、いきなりぼやき始めた。ムードもなにもあったもんじゃない。

「魔法陣の時点で予想はついてたけど」

「うん! わたしたち、異世界召喚されちゃったのね!」

「おとうさんもおかあさんも、すっごい喜んでる」

「我が家全員サブカル大好き一家だからな。勿論俺だって実はものすんげーテンション上がってるんだぜ」

「そうは見えないよおにいちゃん」

「抑えるのに一生懸命だからなっ」

「勇者ども殿、改めてお願い申し上げる」

 話が進まないと悟ったか、王様はむりやり話を進めにかかった。

 へりくだってるんだか見下してるんだかわからない王様の物言いに、父親のタクとその妻マアサは僅か苦い顔をする。が、真剣な様子なのでとりあえず聞くことにした。

「魔王を。魔王ヘルゴルダスを倒し、この世界を覆う闇を払ってくだされ!」

「ど……土下座までしなくてもいいですよ王様。呼ばれたからには使命を果たしますって」

 躊躇なく土下座を、いきなりし出した王様に慌てて、父親のタクは決意の感じられない言葉をかけた。

「うむ。そうでなくては困る」

 土下座の体勢から立ち上がり、また横柄な態度に戻った王は、

「よし、では話を先に進めよう」

 と取り繕う。

「例の物を」

 王様が指示を出すと、「はっ!」という力強い返答と共に近衛兵が装備を運んで来た。

「おお、剣と鎧と盾だ!」

「かっくい~」

 テンションの上がる子供たち。

「一セットだけなのか?」

 タクの疑問に、心配いりませんわ、と品のある少女の声が答えた。

 第三者の登場に、一家は一斉に声の方を見た。

 金糸のような長く美しい髪、澄んだ空のような青い瞳。背筋をピンと伸ばして立つ、凛々しくも そのまなざしの柔らかな少女。純白のドレスに身を包んだ彼女が、どうやら声の主だった。

「スロリフ、なぜここに?」

 ハヨセーヤ王が驚きに見開かれた目で問いかける。

「大きな魔力を複数感じましたもので、気になって見に来ましたの。あなた方が勇者様ですわね」

 目をキラキラさせている少女。そのまごうことなき美少女に、家族は息をのんだ。

「か……かわいい」

 イサムは頬を染め、

「きれい~」

 アイナは憧れに瞳を輝かせた。

「かわいiいて、なんだよ真麻。可愛いものをすなおに称してなにが悪いんだ?」

「しりません」

 少女のように頬をふくらませてそっぽを向くマアサ。しかしそれが似合ってしまうのが、彼女の魅力であろう。

 「まーちゃんの方がよっぽど二次元だよ、この合法ロリめ」と友達からは、その若々しく愛らしい容姿について、嫉妬を交えたお遊びパンチをもらったことが何度もある。

「それで? 心配いらないって、どういうことだい?」

 タクは少々気取った口調で姫に問い返した。

「ちゃんとそれぞれに見合った装備も用意してある、ということですわ」

 スロリフ姫はクスリと柔らかに微笑する。

「なるほど。じゃあ、それらも見せてもらおうじゃないか」

「ん? ねえねえおとうさん。これ、なんだろ?」

 しゃがみこんで、なにかを拾い上げた浦和家長女のアイナ、両手を顔の高さまで上げて、不思議そうな表情で問いかける。

 その手には本のような長方形の物体が収まっていた。

「ちょっと貸してくれるか?」

「うん。はい」

 娘からそれをうけとり、タクはあらゆる角度から眺めてみた。

「本かと思ったけど、横向きが正しいみたいだな。カタカナでコマンドパッドって書いてある。なんだろうこれ?」

「たっくん、開けられそうじゃない?」

「そうだな。どうやらこれは、開けてみるしかないな」

 タクは意を決して、コマンドパッドと書かれている部分を上に持ち上げてみた。

「開いた。お、この構造、まるで軟天堂3dスーパーじゃないか」

 コマンドパッドと書かれた部分の裏側は、なんとディスプレイになっていた。そこには『コマンドを入力してください』と黒い背景に白い文字で表示されている。

「コマンド? いったいなんの……なっ!」

 下側の、ボタンや十字キーなどがついてる方にもディスプレイがあり、そこに視線を移したタクは、驚愕と歓喜の声を揚げた。

 この場にいる全員の視線が集中する。

「古今東西ウラワザ大百科」

 感激の涙すら浮かべるタク。殆どの人間が開いた口が塞がらない中、ただ一人マアサだけは夫に同調した。

「なつかしぃ。スーテンブームのころ、ゲーム雑誌にあったよねぇ、そういう奴っ!」

「おいおい、ウラワザ特集付録ならファミテンのころからあっただろ」

「そうなの? わたしそのころゲーム雑誌なんて買ったことなかったのよ」

「俺が見せてやったの、忘れたのか?」

「そだったっけ、ごっめーん」

 幼馴染パワー全開で無邪気にはしゃぐ両親を見て、兄妹は

「「おねがいだから本題に戻ってください」」

 恥ずかしくて縮こまっていた。

「おっと、そうだったな。古今東西ウラワザ大百科が表示されてるってことは、この中に載ってるウラワザのコマンドを入れればいいってことか」

「たしかこの付録ってスーテンのだけ載ってたんじゃなかったっけ?」

「だったな。となれば、スーテンソフトのウラワザコマンドなら、たいてい受け付けるはず」

 本題に行ったはずが、また夫婦で話し始めてしまい、部屋の空気がどんよりする。

 両親が話しているのを聞きながら、兄妹はひそひそとこんな会話をしていた。

「ねえおにいちゃん、ウラワザってなに?」

「なんだろうな。特定のコマンド入力で成立するってことは、デバッグ用のプログラムなんじゃないのか?」

 ジェネレーションギャップとは、かくも恐ろしい物である。

「よし。なら試しだ。効果があるかどうか」

 そうしてタクは、慣れた手つきで ーー 実際慣れ親しんでいるのだが ーー コマンドを入力し始めた。

 突如動いた状況に、部屋の空気が緊張へと急変する。

「上 上 下 下」

「あっそれしってるっ!」

「伝説のコンマイコマンド。あれもウラワザって奴だったのか」

「L R L R」

「え? LR? ひだりみぎじゃないの?」

「黄色 赤」

 すると上側のディスプレイの文字が『PRESS START』と切り替わった。

「よし、アイナ。スタートボタンを押してみてくれ」

「え? あ、うん。わかった」

 恐る恐るコマンドパッドを受け取ったアイナは、半信半疑どころか二信八疑ぐらいで、そっと こわごわスタートボタンをプッシュした。

 その瞬間。激しい閃光が召喚の間に迸り、全員が思わず目を閉じた。

「バカな! なぜあのコマンドでフラッシュが!」

「アイナ。生きてるよね?」

「なに言ってんだ二人とも、どういうことだよそれっ?」

 あわや親子喧嘩に発展しようかと言うその時、歓喜のようなどよめきが召喚の間に広がり始めた。

「なんだ? いったいどうしたってんだ?」

 これまでと違った反応に、イサムは戸惑い、そのことで怒りのボルテージはいっきにフェードアウトした。

「な、なんということじゃ」

「あの一瞬で、彼女に聖魔壁バリアに魔球の使い魔が六体。なんの契約も呪文もないというのに」

 王様と姫の表情が驚愕に染まっている。

「よかった。成功してたか」

 安堵の深い息を吐くタク。

「よかったっいきてたよぅ!」

 マアサは不安だったその表情を歓喜に染めて、愛する娘を力いっぱい抱きしめた。

 しかし言動と相まって、仲良し姉妹の抱擁にしか見えない。

「お、おかあさん。くるしい」

 そう言いながらも、アイナの表情は嬉しそうだ。そんな母娘に柔らかな笑みを見せて後、姫は真剣な面持ちで口を開いた。

「コマンドパッドといいましたわね。それはきっといにしえの力を扱う物ですわ」

「古の力? そんなオーバーな」

「いいえ、間違いありません。あの一瞬で聖魔壁バリアと簡単な物とはいえ使い魔を六体も同時に使役させるなど、ありえないことですから」

「そう、なのか?」

「それもその術の効果が消えずに残り続けています。更には敵味方の区別をもつけている。わたくしたちの技術では絶対になしえないことなのです」

 魔法という物の標準がわからない浦和一家は、姫の嘘のない瞳を信じるしかない。

「さて、では一先ずここから出ようぞ。いつまでもここにおっても始まらん」

 王様の一声で、全員が退室を始める。

「ここから、俺達の魔王討伐の大冒険が始まるんだなー。わくわくすっぞ!」

「んもぅ、たっくんはしゃぎすぎ」

「まったく、恥ずかしいなぁ」

「おにいちゃん、ニヤニヤしてるー」

 こうして、順応能力の高すぎるオタク家族は、魔王討伐の旅に出ることになった。

 

「くそ、いったいどんだけいるんだこいつら!」

 両刃のロングソードを左凪に振るいながらイサムが愚痴る。素振りにしか見えないその間合いでの一薙ぎはしかし、青白い魔力の刃が走り、攻撃の射程を劇的に延長した。

 人三人ほど離れた位置にモンスターがいたが、今の素振りで二体が青黒い血溜りを曝した。

「まあいいじゃないか」

 タクは身の丈ほどもある大剣を軽々と掲げ、

「無双アクションしてるんだと思えばっ!」

 自分でも信じられない高さまで跳躍すると、

「吹っ飛べええっ!」

 落下の勢いを乗せた一撃を力任せに振り下ろす。

 狙いはつけていない。なぜなら、その一撃は大地を抉り、叩きつけた衝撃は魔力を伴った衝撃波となって周囲を吹き飛ばしてしまうからだ。

「よし。ざっと撃破数は十五ってところか」

 大剣を肩にかつぎ、満足げにタクは頷いた。

 現在一家は、その圧倒的力によって魔王軍の雑兵を蹴散らしながら、徐々にだが着実に目的地 魔王の居城へ向かっていた。

 スロリフ姫の師事の元、簡単に魔力の扱い方を教わった一家は、魔王軍と戦うことができる戦力か否かを判断するためのテストを受けた。

 その結果。魔力の総量 一度に使える量 その威力、どれをとっても姫に匹敵すると言う結果が出た。

 一家はその結果が信じられず、余裕の合格を自分の中に落とし込むのに時間がかかった。

 近接攻撃についてもテストされ、アイナの場合は試験を請け負った兵士が間合いに入る前に、アイナの周囲に浮遊する球体からの魔弾に阻まれて話にならず。

 マアサの場合も、遠距離からの魔弾によって間合いに入ることができず近接戦闘の適正を測ることはできなかった。

 イサムとタクの場合は勇者の武具の効果によって、まるで熟練の戦士のような剣捌きで、瞬く間に勝利をおさめた。

 勇者の武具とは、装備に付与された身体能力強化の魔法によって、まるでおもちゃでも扱うかのように自由自在に武具を扱うことができるという代物であった。

「とはいったものの、2P召喚込みでも数の減りが芳しくないな」

 戦場を見渡し、タクは肩をすくめる。

 タクの言う通りなのである。現在、戦場には同じ人間 浦和一家が二人ずついる。これはコマンドパッドの力による物であり、2Pと称したとおり片方の浦和一家は装備品の色が異なっているのだ。

 自分たちのコピーが、シューティングゲームのオプションみたいに現れると期待して、タクは試しに「下 R 上 L 緑 黄色 青 赤」とコマンドを入力してみた。

 このコマンドは三種類のウラワザに対応しているため、タクはどれが発動するのか不安だった。移動速度の倍加ならまだいいが、残るもう一つ 必殺技封印が発動してしまったら目も当てられない。

 タクの願いが通じたのか、コマンドによって発動した効果は彼の期待した通りの物だった。ただ驚いたことに、2Pである彼等は自我を持ち、色どころか性格まで違っていた。

 2Pの彼等が協力的だったのは幸いと言うべきだろう。明らかに戦い慣れしているのは納得いかなかったが。

「愛菜 真麻、いけるか!」

 背後に首だけ向け、タクは大声で呼びかけた。

「これから呪文詠唱するから、場所あけて!」

「よっしゃキタ! 頼んだぞ二人とも!」

 そう言ってタクは大剣を鞘に納め、娘たちの方へと小走りした。

「2Pの方も頼んだぜ!」

 父をまねるように、イサムも剣を鞘に納めて妹たちの方へと走る。状況を理解したそれぞれの2Pも、同じく射線を開けた。

「よしっ、いくよもう一人のあいな!」

「はい、わかりました もう一人のわたし!」

 二人のアイナは頷き合うと、大きく息を吸い意識を集中し始めた。

「せんていの本よりわかれし枝葉」

 彼女たちの小さな身体の周りに、青白い光が層を形成して行く。

「我が知に届きて今」

 これはアイナが好きで読んでいるウェブ小説の魔法の一種の詠唱である。

「そうはくの怒れるてっついにて」

 少しずつアイナたちの周りの、ごくわずかな空間に変化が起き始めた。アイナを囲む空間にだけ、微風程度の空気のさざめきが起きている。

 集中を高める間の無防備を、彼女の使い魔たちが魔弾の幕を展開してフォローする。

「立ちはだかる物者を」

 風力がだんだんと強まって、桜色のローブ 白いシャツと緑色のミニスカートを見てわかる程度にはためかせている。

 ちなみに2P側のコスチュームは色合いが逆になっている。

「「のべつまくなく撃滅し」」

 更に強まった風力は、既に服がバタバタと音を立てるほど激しくはためき、栗色のセミロングの髪も激しく波打つほどにまでなった。

 ミニスカートに至っては、なぜそれでチラリとしか見えないのかというレベルのはためき方になっている。

「「晴れて今夜の安眠を!」」

 カチャリ、杖をただ右手で持っていたのから、両手に持ち替えた。杖の先の宝玉にも青白い光が生まれる。

「青王のタイラントオオー! 激攻エミッションッ!」」

 声と同時に振り下ろされる、赤紫の杖を持った彼女達の腕。少しの余韻を残して収まる強風、それをも糧として青白い塊が敵へと打ち出された。

 それは通り道全てを焼き尽くす、むせかえるほどの魔力の層。撃滅の暴力。

 おぞましい悲鳴がこだます中、多量の魔力の放出で消耗した二人のアイナは、膝に擦り傷ができるのも構わず体重を預けるように地面にへたり込んでしまった。得物である杖も、近くにカランカランと乾いた音を立てて転がる。

「はぁ……はぁ……大魔法って、たいへんだー」

「そう……ですね」

 そんなアイナたちの様子を傷かわしげに一瞥。今度はマアサたちの番である。表情を引き締める二人。

「では。まいりましょう」

 薄い青色の革製のジャケットに、黄緑色のワンピース、背中に黒いリュックを背負い十字架の形をした杖を強く握る。

 どう見ても戦いに行く格好ではないが、これでも立派に勇者の武具と同じ補助魔法がかけられた一式装備なのである。

「うん」

 真剣な眼差しで眼前に広がるモンスターの群れを見据えて、二人のマアサは詠唱を始めた。

「爛れし愚魂は混沌が内に」

「成すべき覚悟は光の只中に」

 歌うように、慰めるように優しく響くその詠唱は、まるで湖のほとりで歌う妖精のようだ。

「「分つは光。黎昏正す優浄の彼方へと誘わん」」

 しかしその涼やかさとは裏腹に、魔力によって巻き起こる風は、背中の半分まで伸ばしたマアサの栗色の髪を、逆立てんばかりに暴れさせている。

「「裁きの天光セイクリッド・ロアー!」」

 打ち出された力は膨大。呑み込まれる敵にとっては青白い初撃を超えた滅びの賛歌うた

 見た者の目を潰すほどの分厚い光の本流が戦場を無双はしる。

「すげーな」

「おいおい、これがオンゲでヒーラーやってる奴の火力かよ……」

 タクはマアサの威力に唖然とする。するしかなかった。

「ふぅ。残りはお願い、たっくん イサム!」

 左腕で額に浮かんだ汗を拭う1Pマアサに、「よっしゃ!」と気合充分に答える父と息子とその2P。

 まばらに残った数体の敵に向かって、四人は駆け出した。

「だゃぁぁぁっ!」

 持った剣を大上段から振り下ろし、ゴブリンを縦に両断するイサム。

「斬っ!」

 その死体を飛び越えたイサム2Pが、両手持ちにした剣を頭上まで振り上げ、狙いをしっかりと見据え迷いなく振り下ろす。そこにいたのは騎士鎧を着た骸骨。だがそれも青白く光る刃の前ではバターも同然であった。

「三つ目だ!」

 体を翻し右にいる二足歩行の狼に向けて、剣を振り抜くタク。しかしそれは体を断つにはいたらず腕を斬り飛ばすにとどまる。

「あまいっ!」

 腕の痛みに悶えているところに、タクの2Pが首を刎ねた。

「今ので最後か」

 敵がいなくなったのを確認したイサム。それに頷く全員。

「また呼ぶがいい」

「俺達は」

「いつでも」

「まっていますよ」

 そう言って2Pたちは姿を消した。

「ありがとう、俺達の2P」

 しんみりと呟くタクは、惜しむように鞘にゆっくりと大剣を納めた。

「それにしても、昔のゲームって不便だったんだな。同キャラ対戦すんのにウラワザが必要だったなんてさ」

 余韻なくあっさりと鞘にロングソードを納めたイサムは、感心して問うように言った。

「いやいや、トリファイの一作目だけだよ、そうだったのは」

「ふぅん」

 そんなジェネレーションギャップな会話をしていると、

「「お疲れさま~」」

 二人がねぎらいの声をかけつつ歩いて来た。

「二人もお疲れ。いやー見事な大火力だったぞ、ヒーラーちゃんさま」

「それ、皮肉で言ってるでしょたっくん?」

 むっとして言い返す妻に、

「当然じゃないか。あんなバ火力のヒーラーがいてたまるか」

 と悪びれもせず切り返すタクである。

「わたしは支援がいいんだけど、攻撃力が出せちゃうからこうなっちゃったの」

「いじけるなって。さて、ガンガンいくぞ。魔王の城までもうちょいだ」

「てきとうなことを」

 そんな親子の和やかな雑談をしながら、四人は余裕綽々で先へと進んだ。

 

「オープンセサミ!」

 走り込む勢いでもって、そのまま巨大な扉をあけ放つイサム。

 ギイイイイと言う重苦しい音が、辺りに響く。

「おっきいなぁ。屋根が見えないよ」

 規格外の大きさに、アイナが天を仰ぐ。

「魔王城、こんなにおっきいなんて。迷わなきゃいいけど」

 あっけにとられたように、マアサが目の前の巨大な建築物を見上げる。

「簡単すぎたな。正直拍子抜けするレベルだったぜ」

 タクは大きくのびをしながら扉の先に目をやった。とりあえずはなにもないごくごくありふれた玄関ホールと言う感じだ。

「それにしてもさ。あの姫様、どんだけ強いんだよ。実は勇者いらなかったんじゃないか?」

 屈伸運動しながら言うイサムは、すっかりラスボス戦と言う大イベントにテンション上昇中だ。

「ねえみんな。ちょっと聞いてほしいんだけど」

「どうした真麻改まって?」

「うん。たしか敵さんの幹部って、三魔将と魔王なんだよね?」

「だって話だな」

「だよね。それだとね、もしかしたら戦わないで終われるかもしれないって思ったんだ」

「えええ。ラスボス戦回避しちゃうのかよー」

 軽く床をトントン踏み鳴らしながら、イサムは母の意見に抗議する。

「だって、みんなにもしものことがあったら、わたしつらくて生きていけないもん」

 だだをこねるような言い方をするマアサ。だが、それがかわいく思える家族。人は見た目が100%とはよく言ったものである。

「たしかに、それはみんないっしょだ。けど、そんな方法 どこにあるんだ?」

 同意しつつも疑問を投げかけるタクに、一つ頷いてマアサはコマンドパッドを見せびらかす。

「こ~れ」

「コマンドパッド。そんな都合のいいウラワザなんかあったかなぁ?」

「あれたっくん。格闘ゲーム好きなのに忘れちゃったの? わたしは覚えてるんだけどなー」

 勝利の笑みで、小馬鹿にするように言うマアサ。

「三魔将と魔王、か。中ボス三人に大ボス一人。で、俺の格ゲー好きがヒント。……あ~! あったあった!」

「でしょ?」

 三日ならぬ三秒天下でちょっとがっかりしたマアサだが、それでこそたっくんだと安心してもいる。

「じゃあ、早速やってみようよ。ねっ!」

「だな」

「「なるほど、わからん」」

 子供たちそっちのけで盛り上がる親二人。はたして、そのコマンドとは。

「えーっと。黄色 赤 青 緑 上 左 下 右 L R。うっし成功。これでもくらえ」

 そう言って、タクはスタートボタンを押した。すると、

「「「なんなりとご命令を、魔神様コマンダー」」」

「おわっ?」

 突然のことで、イサムは尻餅をついた。

「な、なんだ!?」

 イサムが驚くのも無理はない。なにせ、突如目の前に三人の いや。三匹のモンスターが姿を現したのだから。

「我が名はブゴロス。グレートオーガのブゴロス様だ!」

 人の三倍はあろうかと言う体躯の、紫がかった緑の体色をした怪物。手には鈍く光る銀色の棍棒を持っている。

 今にも襲い掛かって来そうで、特にアイナが怖がってイサムの後ろに隠れた。

「わたしの名はアシラウデ。以後お見知りおきを」

 そう言って会釈する。黒いローブに身を包んだ、紫の長い髪と血のように紅の瞳、そして長い耳の、エルフの魔法使いと言った身なりの人型。

 声からすると男のようだ。その気障ったらしい喋り方に、家族は全員苦い顔をする。

「わたしは三魔将の紅一点、ヘイザー。よろしくね」

 妖艶に微笑む黒髪の美女。その露出度の高さとだだ漏れの色気に、男二人は一瞬にして意識を呆けさせてしまう。

「たっくんっ!」

「ぐふあっ?!」

 妻の回し蹴りでタクは我に返り、

「あ……ぁぁ……」

「おにいちゃん?」

「これは……いいものだ……」

「おにいちゃんっ!」

「ぐえゃっ!?」

 妹のスレッジハンマーで目を覚ましたイサム。

「おっと、いかんいかん。って あれ? 一人足りないぞ?」

 タクの言うことは最もである。ここにいるのは三魔将のみであり、肝心のラスボスの姿がないのだ。

「ところで、さっきのコマンダーってなんなのかなぁ?」

「あ、あの 真麻さん。さりげなーく睨むのやめてもらえませんか?」

魔神様コマンダー魔神様コマンダーですよ。我らが逆らうことを許されていない存在です」

 アシラウデの説明にも、家族は半信半疑である。

「ねえ、あなたたちみたいに魔王との戦闘をさけることってできない?」

 雰囲気から三魔将の様子を察し、マアサは問いかけてみた。

「可能なはずよ。けど、わたしたちよりも強いコマンドでなければおそらく駄目ね」

「コマンドに強弱が?」

 驚くタクに、ヘイザーは頷く。

「ええ。たとえば、そのコマンドが及ぼせる効果の強さ。いかにターゲットが絞られた効力か。そういうことよ」

「なるほど。中ボス三人とラスボス一人では範囲が広かった。そういうことか」

「あなたの言うことはよくわからないけれど、おそらくはその解釈は正しいわ。後ね」

「対象に近ければ近いほど、その効力は強くなります」

「ちょ ちょっと、あたしが説明してるんだから邪魔するんじゃないわよこの気障野郎っ」

「お、おう」

 突然荒々しくなったヘイザーの口調に、タクは言葉が出なかった。

「で? お前らは、魔王様に合ってどうする気なんだ?」

 声が、降ってきた。

「わたしたちはとある王様から魔王を討伐してくれって、異世界から召喚されたの」

 物おじすることなく、マアサは自分たちのことをブゴロスを見上げながら説明する。

「でも、世界をおびやかすような存在と正面切って戦えるほど、わたしたちは戦いに慣れてない。

だから、今こうしてあなたたちと話ができてるように、魔王を無力化したいって考えてるの。どうにかできないかな?」

 子供たちは状況についていくのがやっとで、両親のように意見を言う余裕などまったくない。だから、無言でいるのだ。

「なるほど、そういうことですか。いいでしょう、わたしが魔王様のところまで瞬間移動ディメンションカットして差し上げましょう。では、まいります」

 そう言うと、アシラウデの足元に魔法陣が出現する。

「我が息吹は常にあり。我が心は常代にあり」

「え、ちょっとまって。まだ心の準備が!?」

 広がり始める魔法陣。

「え? いっきにラスボス戦ってことかっ?」

 ようやく動けたイサム。どうやら頭はしっかり情報を受け取っていた。

「空 果てなく。時 滞らず」

 その陣は既にここにいる全員を範囲に収めている。

「おい、まってくれ。まだなんの隠しコマンド使えばいいのか考えてないぞ!」

「されど。我が身体すがた枷無きとほっすらば」

 広がった魔法陣に光が走る。

「えっ? なに? なに??」

「その可能性ゆくさき、空の写し絵にて投滴なれ。瞬間移動ディメンションカット

 その言葉の直後、エントランスが光に包まれた。それが消えた時、今の今までこの場にいた七人は、エントランスには存在しなくなっていた。

 

「ほう。貴様ら、我を裏切って人間ごときに手を貸すなど。どうなるかわかっていような?」

 気が付いたとたん、そんな重々しい声がイサムたちの耳に入った。

「お言葉ですが魔王様。魔神様コマンダー相手では、我々に逆らう権利はございません」

 アシラウデが気丈に反論する。その言葉を聞いて、魔王は目を訝し気に細める。

 いや、そう感じただけだ。今彼らの前にいる魔王は、人の形をした黒い影でしかなく、表情がまるでわからないのだ。

「ほう、魔神コマンダーと、貴様は今そう言ったのか」

「はっ」

「面白い。ならばその力、見せてもらおうか」

 魔王から、押しつぶされそうなプレッシャーが、家族全員をなでつけるように放たれた。それだけで、浦和一家の体の芯に寒気が走る。

「はえぇよ。なんでほんとに魔王の、ラスボスの目の前に来てんだよっ」

 誰にも聞こえないような小声で、イサムはガチガチと鳴る歯でひとりごちる。

 そしてついさっき、ラスボス戦にワクワクしていた自分を、全力でぶん殴りたくなった。

 アイナは恐怖のあまり無言で母にしがみつき、また母も無言で抱きしめる。戦慄に震える体のまま。

「どうする? どうしたらいい? いったいどうすれば……」

 タクは、この状況の打開策を必死で考えている。わなわなと震える自らに気付きながら。

「強き魔力と古の力を手にしておきながらそのざまか。所詮、人間など脆弱なものよ。だが、我の下まで辿り付けたことだけは褒めてやる」

 魔王は興味なさそうにしながらも、余裕と威圧を持った声で一応の賛美を贈る。

「コマンド。この化け物を大人しくできるようなコマンドは……」

「我を目の前にしたという事実を、おのが体に刻みながら、それでももがこうと言うのか」

 タクが思考を吐き出すさまを見て、魔王は失望に肩を落とす。だが、直後鼻を鳴らし言葉を紡ぐ。

「やってみるがいい人間。だが我は、三魔将のようにはゆかぬと言うことは臓腑に叩き込んでおけい」

「ラスボス。ターゲットをしぼりこむ。隠しコマンド」

「聞こえておらぬか。我と相対しただけで半狂乱とはな。まあよい、これも余興よ」

 再び興味を失ったように、玉座に座りなおす人型の影。

「三魔将よ、下がれ。魔神コマンダーの手駒となった貴様らなど見るに堪えん」

「はっ」

「では」

「失礼いたしますわ」

 そう言って、三魔将は姿を掻き消した。

「ここまで来た人間は久しく見ておらぬゆえ、いかな強者つわものかと期待したがなんのことはない。

だが、未だなにごとか譫言うわごとをほざく者。この水際のしぶとさはどこから来るのだ」

「ラスボス。隠しキャラ。スーテン格ゲーで、俺が最も印象に残った隠しコマンド。これに……賭けるしかない」

「ようやく動くか。さて、古の力。どんなものか」

 震える体でコマンドパッドを開くタク。そして、ぎこちない手つきで「それ」を入力し始めた。

「上 青 下 黄色 L 緑 R 赤」

「む、なんだ。今、頭の中に声が……」

「効果が、あった。のか?」

 ぼんやりとした意識で、タクは黒い影のうめきを聞いた。

「ならば、もう一度」

「なんだ、この脳にまとわりつくような声は」

 タクの体に。心に。熱が戻り始めた。

「効いてる、確実に効いてるぞ!」

「ぬ、人間に生気が戻り出しているだと?」

「なら、もっとだ。もっと喰らわせてやる!」

「ぐ、やめろ。耳障りだ!」

 黒い影に色が付き始めた。明らかになったその姿は、

 金髪に水色と銀のオッドアイに 返り血に染まったかのような赤黒いローブを着た、絶世の魔法使いだった。

「おのれ忌々しい! 動きを阻害する魔法であるならば、物の数ではないと言うのにっ!」

「魔王ッ! お前がッ! 泣くまでッ! 入力をやめないッ!」

「やめろ! ぐおおっ! この この声をとめろ人間ッ!」

「だが断るッ!」

 この状況を、すっかりと平静を取り戻していた三人は、間の抜けた顔をして眺めていた。

「おのれ! 魔神コマンダー、我より上位の存在がいるなど。我が無効かできぬ攻撃があるなどっ!」

 父親と魔王は一切刃を交えていない。だと言うのに、魔王はわけのわからない理由で苦しみだし、父親は喜々としてすごい速度で同じコマンドを入力し続けている。

「……ああ、そうだ。知っていた。伝え聞いてはいた。だが。こんな。こんなわけのわからぬ現象が、我を呪縛する唯一の力だなどとっ!!」

 おそらくはこちらが優勢なのだろうが、まったく意味がわからない。わかりたくもなかった。

「ぐ、お、おおっ! だまれ! 誰かは知らぬがそのカカロカカロ言うのをとめろおおおおっっ!!」

 ついに魔王が発狂した。

「おりゃーっ! 指が折れるまで! 指が折れるまでッ!!」

 浦和タクはしかし、安定した制度と速度で入力を続けている。こちらもある意味で発狂していた。

「お、の、れえええっ。こうなればっ! 真の姿で、この呪縛 弾き飛ばしてくれるわっ!」

 またも魔王の姿がかわった。今度は色が付くだけではない。

 絶世の魔法使いはその体が肥大化し、それに合わせるように肉体に罅が入る。そして美しかった肌の下から出てきたのは、どす黒い鱗に覆われた蛇のような体。

「ま、魔王って……っ!」

 腕だった部分はその形を残しながらも、腕の皮が破れて垂れ下がり、人間の皮だったはずの垂れ下がった部分が翼幕を形成。

「こ、これって……!」

 端麗な男性の顔の面影はその瞳の色だけとなり、顔面の皮膚は黒く硬質化。そして頭に二本、鼻から延びる形でもう一本角が出現した。

 綺麗に整っていた歯は、全て獰猛差を隠しもしない獣よりも鋭い牙へと変化した。

「これ、もしかしなくても」

 そうして変身の全てを終えた。

「「「ドラゴンっ!」」」

 そう。魔王の真の姿とは黒き竜だったのだ。

「ちくしょおおお! なんで我が血族はコマンドに耐性なぞもってしまったのだ! そんなばかりに我は、我はこんな恥辱を……!」

 真の姿になった直後、魔王が弱音を吐きだした。延々脳内に響き続けるカカロカカロという意味不明なうめき声。それが聞こえる限り、自分は一切動くことができないことは、今に至るまでに散々味わった。

 力を開放すれば、この呪縛は解けるだろう。そう思って姿を変じたが、ここ黒竜の姿に至っても、動けたのは変身している最中の僅かな間だけで 再びコマンドに縛される結果となってしまった。

 はっきり言ってショックだった。

 弱肉強食の魔物の世界で頂点に立つ自分が、しかしたかが人間ごときに指一本触れることすらかなわない。おまけに今を呼び込んだのは、己のやってみせろと言う言葉である。後悔しても最早遅すぎた。

 コマンドという古の力は自分の予想を超えた物であったのだ。遥か昔の技術など、今の自分に通用するわけがないとたかをくくっていた。全ては自己責任。己の失態。ゆえに誰を責めることもできず、ひたすら相手にやめろと願うことしかできない。

 剣や魔法を用いた相手との死闘の果てに打ち果たされるならそれもいいだろう、そう思っている魔王。

「やめろ人間っ! その入力をいますぐにやめろ!」

 だが、今はどうだ。理不尽に動きを阻害され、だがしかしそれ以上のことはなに一つ相手は行ってこない。生殺しもいいところである。

 魔王の精神は限界ギリギリになっていた。

「言ったはずだ。だが断る、と」

 テンションのおかげなのか、今までよりも入力速度が若干上がっている。それは時間にしてほんの一瞬。だが、それはつまり、

「き、さ、ま」

「カカロの果てに狂い死ね魔王!」

 更に魔王に苦痛を与える速度が上がったと言うことだ。

「ぐああああっっ!」

 動けない。動けないがゆえに、この不快で苦痛な状況に体をのたうつことさえ許されない。ただただ苦しみを咆哮することしかできないのだ。

「格闘ゲームにおいて一瞬は命取り。それもこんな切羽詰まった状況では、こちらの一フレの反応の早さが勝利に繋がるっ!」

 てきとうなこと言ってんなぁ、とひそかに呆れるイサム。だが、この父は自分にできないことを平然とやってのけている。それはすなおにすごいと思った。

「このねばつく声を誰かとめてくれ! 頼む!」

 ついに魔王の心が悲鳴を揚げた。

 マアサは戦わないでおとなしくしたい、そう三魔将に助力を求めた。

 だが、マアサがイメージしたのはこんな拷問まがいなことではなかった。

 彼女が思い浮かべたのは、三魔将のように戦う意志をなくした上で、

 話し合いで人間を襲うことをやめさせる。そんな平和的解決だったのだ。

 ーーだから、口をついて出ていた。

「もうやめて! 魔王のライフはとっくに0よ!」

「ぐ、そろそろこっちも肘と指が限界だ。わかった。なら。これで終わりにしてやるっ!」

 突然、タクはコマンドを変えた。それは初めにアイナに施したコマンド。だが、ほんの少しだけ異なっていた。

「お前の爪で、スタートボタンを押させてやる。さあ、自爆しろ 魔王、ヘルゴルダス!」

 タクによって、魔王は その鋭い爪の先でスタートボタンを押させられた。

「みんな、伏せろっ!」

 全員が慌ててタクの言うように地面へ伏せる。直後に激しい閃光が轟いた。

「ぐあああああああ!!」

 激しい爆音の中響いた絶叫は、痛みに苦しむようにも、解放された歓喜のようにも浦和一家には聞えた。

 かくして、魔王 ヘルゴルダスは、古の力 コマンドによって、心に大きな傷を負い、敗れ去った。

「俺達、いったいなんであそこにいたんだろう……」

「道中は無双できて楽しかったのになぁ」

「おとうさん、コワイ」

 魔王との激闘に終止符が打たれた。人々は異世界の勇者たちの健闘を大いにたたえた。

 ただ人々はその様子をこう語る。

 ーーなんであの人たち、魂が抜けたような顔してたんだろう。

 その後、異世界の勇者こと浦和一家は元の世界へと帰還した。だが名残惜しかった一家は帰る時、この世界へのパスポート代わりにコマンドパッドを持って帰った。

 召喚された世界へ行くためのコマンドは、下 上 左 右 L R。元の世界では世界移動コマンド以外は、なんの効力も発揮しない携帯型ゲーム機もどきでしかないこれを、一家は家族以外には絶対に見つからないようにしようと硬く誓い合うのだった。

 一方、魔王ヘルゴルダス。コマンドに耐性があった彼の命は、コンマイコマンドによる「自爆」でも果てていなかった。今は居城の玉座で影の姿に戻り、人間とのかかわりを断ち療養している。

 憔悴しきった黒竜の姿を見た三魔将の心中は、全員一致で「誰だよ、お前」であった。真の姿を見せていなかったことを、ヘルゴルダスはこの時初めて後悔したと言う。

 

 

 おしまい。

息抜きのつもりで書いてたのに、話の内容が三転四転、できあがるのに数日かかったorz

コメディーも視点固定三人称も難しいですね。視点ぶれまくりでごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「おのれ! 魔神コマンダー、我より上位の存在がいるなど。我が無効かできぬ攻撃があるなどっ!」 「無効化」でしたら、「化」まで漢字の方が親切かなあと思いました。 [一言] 懐かしいです…
[良い点] 一家で召喚されてしまう所!!! ドラゴンになる辺りは、勝手にドラゴンクエストのイメージで読んでしまいました。 面白かった!!! [一言] はじまして、なななんと申します。 上上下下がめっ…
[良い点] すごくいい小説ですね!参考にさして貰います! [一言] 出来ればコツ?みたいなのを教えて頂ければ嬉しいです!
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