お嬢様の一日
紅玉の朝は早い。
6時。
スポーツウエアに着替えて、マンションの周りを軽く走り、その後は専用のジムとプールで軽く汗を流す。
7時。
柘榴が用意した朝食を食べる。メニューは洋食と和食が日替わり。
今日は洋食だったのでオムレツにトースト。ハーブクルトンとパルメザンチーズがかかったガーデンサラダにトマトとベーコンのスープ。
7時45分。
学校に向けて車を出す。
8時15分。
学校に到着。
級友と他愛ない話をしながら、HR。
12時。
基本的には柘榴が作ったお弁当を中庭にて食べる。
15時。
迎えにきた柘榴の車に乗り込み、帰宅。
「柘榴、今日の予定は?」
「葛城コーポレーションの会長との会食が入っております」
「パパの古いお知り合いの方ね」
「お嬢様が日本にいらっしゃると聞いて、是非にご一緒に食事を、と」
「お店は?」
「ジュ・バリエ フレンチの三ツ星レストランです」
「じゃあ、ドレスね。この前パパが送ってきてくれたドレスが良いかしら?」
「パリコレの有名メゾンのオートクチュールでしたか。ではジュエリーはドュリエのものをご用意しましょう」
午後のティータイムにスケジュール確認をし、少し休んだあと夜の予定のための準備に取り掛かる。
ゴールドに黒のレースとストーンをボタンとしてあしらったカクテルドレスに着替えると、高校生には見えない雰囲気の大人の女性に仕上がる。
「イヤリング、よくお似合いですよ」
かるくカールしたブラウンヘアーにヘーゼルの瞳。大ぶりのダイヤのイヤリングを耳元できらめかせ鏡の前で立つ女性と、昼間の紅玉を同じ人物だと思うものはいないだろう。
「ありがとう」
「では車をマンションの前まで回しますので」
「わかったわ」
会食は紅玉に合わせ少し早めの18時から。
「おお、大きくなったね。お母さまに似て美人だ」
「おじさまもお変わりなくてなによりですわ」
「さあ、パリの話を聞かせてくれ」
父の知り合いである日本の色々な人との顔合わせや会食は紅玉の大事な仕事の一つだ。
母はこういったことにはまったく興味がなく、世界各地をあちこち旅行している。
最近はスイスのスパからメールが来たかと思えば、南極に豪華客船でクルーズにいってペンギンの写真を送ってきたりする。
美味しい料理に舌鼓をうちながら、22時には会食を終え、帰宅する。
夜景を見ながらジャグジーに入り、念入りに肌と髪のケア。
それが終わると紅玉の本当の仕事が待ち受けている。
「Hi そっちの準備はどう?」
「大方整った」
「こちらも同じくだ」
ネットのビデオ通話でお互いの進捗を確認し、Xデーへの準備を進めていく。
相手は紅玉が信頼するチームメイトだ。
一人は都内の有名な理系大学に通う大学生。
もう一人は有名な企業に勤める社員。
あくまでも、紅玉と同じく「表の顔」は、だ。
「では、犯行予告をそろそろ出すときが来たわね」
「ようやく日本での仕事だな」
「ヨーロッパを中心にしていたが、ようやくここまで来たな」
「そうね。二人とも待たせてしまって申し訳なかったわ。怪盗サファイアの記念すべき日本での初仕事よ。気合いれてね」
「了解」
「まかせとけ」




