なんか押し付けられた
『・・・ャァ・・・』
草を掻き分けて音の鳴る方へ行く程に、音ははっきりと聞こえてくる。
やはり聞こえてくるのは何かの鳴き声の様で、絶え間無く鳴いてその場所を教えている。そしてその音源の方角から漂う臭い、薄く解かり辛いが肉の焼け焦げた臭いと馴染み深い血の香り。
もしかしたら危険なのかもしれないが、脚が止まる事は無く鳴き声に向けて進み続ける
『・・ォギャァ・・・』
何だろう、この間食べた鳥頭の猫、確か谷の魔女がグリフィンとか呼んでた気がするそれの鳴き声とも違う。アレはピィピィ言ってたし
『・オギャァ・・ァ・・』
だいぶ前に襲ってきた緑色の小さな人間?たしかゴブリンとも違う。あれはゲギャギャギャって喧しかった、肉も硬くて不味かったし
『オンギャアァ・・・』
前の住処だった岩場に来たアレ羽の生えた角トカゲ・・・は全然違う。初めて死ぬかと思った奴だし間違え様が無い
『オンギャアァッ』
人間は・・・なんか良くわからない事言いながら襲ってくるけど、決まった鳴き声とかあげてなかった・・・様な気がしないでもない。ヒィとかピギャアとかアヒンって鳴き声なのかな?あ、もしかしてあのオークモドキの人間のンギモヂィィィッっって人間の鳴き声だったのかな?意味は解からなかったけど不快感半端なかったアレが人間の鳴き声かぁ
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「おっと?」
考え事していたら目的の場所に着いていた様で、すぐ目の前からけたたましく鳴き声が聞こえてくる。
鳴き声の周りは森の開けた場所になっていて、だいぶ昔に人間が置いていった白い長岩と小さな池、そして人間達の巣に続く道しかない場所だった。
そこに今は長岩にもたれかかる様に座る人間と、その人間に抱きかかえられた鳴き声の主が居た。
「どうやら鳴き声の正体は人間の赤子だったようだね」
どんな生き物も成体と赤子の時は少し違いが出るものだが、人間は体の大きさ以外に鳴き声も変わるのかと、新しい知識に頷いていると、人間の成体がこちらに気付いた用でノロノロと頭を動かしている。
『・・・どなたか、いらっしゃるのですか・・・』
「何か言ってる様だけど、人間の言葉はわからないんだよなぁ」
まるで暗闇に居るような動きで頭を動かしている人間だが、自身と人間では使う言葉が違うせいで何を言っているのかはわからなかったが、消えそうな声と動きで何と無しに理解する。この人間はもうすぐ死ぬ、大方何かに襲われ致命傷を負ったのだろうせいで、目が見えてはいないと
『ああ、何処の何方かわかりませんが、どうか、どうか!』
「うおぉ?」
同族でも居ると思ったのか凄まじい勢いで這いずる様に近づいてきて、ここに来る理由になった鳴き声の主を押し付けてくる人間
死にかけとわ思えない力強さと勢いに思わず、赤ん坊を受け取ってしまう
「うわっ、何?私人間食べないんだけど」
『盗賊に襲われて皆死んでしまいました、私ももう駄目でしょう。・・・ですから、死に逝く私を哀れに思うならどうか!どうかこの子を・・・』
「だから言葉がわからないんだって!何言ってるの?!」
『お願い、しま・・・す』
「あ、死んだ・・・・・え、何これ、捨てていいの?」
『あんぎゃあ』