04 おなかが空いて
まちに戻ってきたポン吉。すこし歩いただけなのに……
「ああ、おなかが空いたなあ」
本当に食いしんぼうです。
「ん? あれあれ?」
おいしそうなにおいに釣られて、ふらーりふらり。そこはまちの食堂でした。テーブルにつくと、おねえさんが注文を聞きにやってきました。そこでポン吉は気がつきました。
「あのぼく、お金をもっていないんだけど……」
「ええ? それはこまるわ。お金がないと食事は出せないわよ」
ううん、残念。ポン吉がすごすごと立ち去ろうとしたとき、窓ぎわの席から大きな声がしました。男の人の声です。
見ると、ずんぐりとした体つきの、熊みたいな大男でした。立ち上がり、テーブルを叩いてどなっています。
「なんだと! オレはもっと食べたいんだ! どんどん持ってこいって言ってるだろう!?」
「ですがお客さま」
別のおねえさんがあわてています。
「お代がないようですので、これ以上はお出しできません」
「ふざけるな! 貧乏人はメシも食べられねえのか!」
ガシャン!
ならず者の大男は、お皿をぜんぶひっくり返してしまいました。おねえさんの悲鳴があがります。
そこへ、となりのテーブルに座っていたおじいさんが、
「これこれ」
立ちあがって言います。はげた頭と、真っ白なひげのおじいさんです。
「暴力はだめじゃよ。食べ物だって、そまつにしてはいかんぞ」
まったくだ。ポン吉は思いました。ですが、ならず者は、
「うるさいぞ!」
大きなこぶしを振り上げます。
危ない!
ポン吉は急いで駆け寄ります。
「ええい!」
ごちん。
ならず者のおなかに頭突きだ。
けれども、
「なんだこの小僧?」
大男はけろっとしています。尻もちをつくポン吉の前に、またあの文字が浮かびました。
『ピコーン』
【種 族】人間
【性 別】男
【クラス】無職
【魔 法】
・火 Level 1
・水 Level ―
・風 Level ―
・土 Level 4
・光 Level 1
・闇 Level 1
・毒 Level 2
・変身 Level ―
・飛行 Level ―
【固有魔法】
・赤ら顔の拳
「お前もなぐってやる!」
どうしよう、ううんと、えっと……そうだ!
ぼわわわわん――!
白いけむりとともに、ポン吉は変身します。
4本足の大きな体。黒くて短い毛並み。頭はなんと……3つもあります! そうです、森で出会ったケルベロスになってしまいました。
「がるるるるる!」
ポン吉がほえると、ならず者は、
「ひいっ! なんだこの化け物は! たすけてくれぇ!」
大急ぎでお店を出て、どこかへ走り去ってしまいました。
ぼわん!
それを見てポン吉は、もとの男の子のすがたに戻ります。
「ありがとう、たすかったよ」
おじいさんがポン吉にお礼を言いました。
『ピコーン』
音がしてまた文字が現れましたが、それよりポン吉は、
『ぐうう……』
ううん、おなかが空いた。
おじいさんもおねえさんも、みんな笑い出しました。