03 エルフの村へ
森の奥に、エルフの村がありました。その中でも一番大きなお屋敷に、エルフの王さまはいました。アンリによく似た、とてもすてきな男の人です。
「やあポン吉くん。むすめを助けてくれてありがとう」
金色のかみはハチミツみたいにつやつや。赤いマントを着た、エルフの王さま。
『ピコーン』
【種 族】エルフ
【性 別】男
【クラス】王・槍兵
【魔 法】
・火 Level 33
・水 Level 56
・風 Level 90
・土 Level 89
・光 Level 61
・闇 Level ―
・毒 Level 37
・変身 Level 12
・飛行 Level 23
【固有魔法】
・青生樹の槍
と、光る文字。
しかしそんなことより、ポン吉はテーブルの上が気になります。
「ここのところ、ケルベロスは暴れてばっかりでね。困っていたんだよ。まあこれにこりて、すこしは大人しくなるだろう。さあ、お礼に、たあんと食べておくれ」
そこには、焼きたてのパンやケーキが並んでいました。
「わあ、おいしそう! いただきます!」
とろーりクリームの入ったパンに、ソーセージをはさんだ香ばしいパン。ぱくり。ぱくり。ああ、お砂糖いっぱいのドーナツもあるぞ。ううん、どれもこれもおいしいなあ。
「うふふ、ポン吉さんたら、そんなにあわてなくてもいいのに」
アンリは笑って、
「ミルクティーもいかが?」
「うん、ありがとう!」
ごくごく。
ふう、お腹もいっぱいだ。
「ごちそうさまでした」
「ところでポン吉くん」
エルフの王さまが言いました。
「きみはたぬきなんだって? どうしてそんな人間のかっこうをしているんだい? たぬきお得意の変装かな?」
「ええっと、ぼくにもよくわかりません。目がさめたら、こうなっていたんです。もとの姿には戻れなくって」
「そうかい」
王さまはちょっとだけ困ったような顔をして、
「できるだけ、人間の姿で森に入らないほうがいいぞ」
「どうして?」
「エルフと人間は戦争をしているんだ」
「戦争? ケンカしてるの?」
「ああ」
王さまはゆっくりうなずきます。
「人間たちは、この森を切りひらこうとしているんだ。向こうの町へ行くために、大きな道を作るつもりなんだよ。でもここには、たくさんの生き物が住んでいる。わたしたちエルフもそうだし、鳥や鹿、熊にリス……植物だってそうだ」
「お父さま」
アンリは心配そうな声でつぶやきました。王さまは続けて、
「木を切って、花をつむ。そうすると、動物たちは住めなくなってしまう。人間は、そうして森をこわそうとしているんだ」
「それはひどい!」
ポン吉は顔をまっ赤にしました。
ポン吉だって、こことは違う森の中で育ったのです。友だちもたくさんいました。鹿のお姉さんや、熊のおじさん。キツネの女の子とはケンカもしたけれど、とても仲良しでした。どっちが早く一本松にたどり着くか、よく競争したっけ……ポン吉は思い出します。
「ぼく、人間の王さまに、やめてもらうよう話してみるよ」
「できるのかい?」
「だってぼく、人間のかっこうをしているから、きっとお話を聞いてもらえるよ」
「そうか! ありがとう、ポン吉くん」
「ポン吉さん、ありがとう!」
アンリに手を握られて、ポン吉はまた顔を赤くします。野イチゴみたいにまっかっか。
「じゃあ、いってきます!」
ポン吉は、もと来た道をもどっていきました。