02 森の中から
「どうしたんだろう?」
悲鳴のしたほうにポン吉が走っていくと、女の子が座りこんでブルブルとふるえていました。金色の髪をしたきれいな女の子です。
「がるるるるるる!!」
犬だ!
大きな犬が、口をパッカリ開いています。ふと~いキバがギラギラ。今にも女の子にかみつきそうです。熊よりも大きな犬。しかも……、頭が3つもあるではありませんか! これはこわい!
3つのおっきな口からは、よだれがダラダラ、ダラダラと。
『ピコーン』
【種 族】ケルベロス
【性 別】オス
【クラス】地獄の番人
【魔 法】
・火 Level 42
・水 Level 7
・風 Level 10
・土 Level 29
・光 Level ―
・闇 Level 65
・毒 Level 59
・変身 Level ―
・飛行 Level ―
【固有魔法】
・冥王の紫炎
「どうしよう、あの子を助けないと。でも、こわいなあ……」
ポン吉はすっかりおびえてしまいました。女の子はさけびます。
「助けて、助けて!」
「ああ、食べられちゃう。ううん……」
ポン吉はすこし考えて、
「そうだ!」
ぽこん!
おなかをたたいて、ひらめきました。
「犬よりも、もっと強いものに化ければいいんだ!」
ポン吉の頭には、ピカピカのよろいを着た、ひげ面のおじさんが思いうかびました。うん、おじさんはすごく強そうだったぞ。
「えいっ、おじさんに変身っ!」
ぼわわわわん――
白いけむりがもくもく、もくもく……。するとポン吉は、あっという間にひげ面のおじさんに変身しました。
「よおし、これなら犬なんてこわくないぞ!」
ポン吉は、ケルベロスに向かって、腰につけていた剣をふりかざしました。
ピカー!
まるで太陽みたい。まぶしく光ります。
「きゃうん! きゃうん!」
3つ頭の犬は、おどろいて逃げ出しました。
「助けてくれてありがとう」
もとの姿にもどったポン吉に、女の子はお礼を言います。きらきら光る金色のかみと、とがった長い耳。宝石みたいな目。緑色のひらひらした服を着ています。
「あなたのお名前は?」
「ぼくはポン吉だよ」
ポン吉は、おなかをひとつ、ぽおんとたたいて、
「たぬきだよ!」
「たぬきさん? わたしには人間の男の子に見えるわ」
「ううん……ほんとは、たぬきなんだけどなあ……」
ポン吉は首をかしげます。
「気がついたら人間のかっこうになっていたんだ」
「変なたぬきさん」
女の子は笑って言います。
「わたしはアンリ。エルフなの」
「えるふ? ってなあに?」
「森に住むとっても長生きな生き物よ。わたしのお父さまは、エルフの王さまなのよ」
「へええ!」
ポン吉はおどろきました。まん丸な目を、もっと丸くします。
「アンリはお姫さまなんだね」
「ええ、そうなの」
『ピコーン』
またあの音がしました。アンリの頭のうえに文字があらわれます。
【種 族】エルフ
【性 別】女
【クラス】王女・弓兵
【魔 法】
・火 Level 9
・水 Level 89
・風 Level 41
・土 Level 33
・光 Level 48
・闇 Level ―
・毒 Level 26
・変身 Level 3
・飛行 Level 8
【固有魔法】
・守人の水弓
……ううん。
ポン吉は人間の文字が分からないので、頭をひねるばかりです。
まあいいや。ポン吉は女の子に、
「ぼくも森に住んでいたんだ。でもここじゃあなくって。アンリ、なにか知らないかな?」
「ポン吉さんが住んでいたのは、どんな森なの?」
「おいしい柿がたくさんできるんだ」
「他には?」
「うーんと、野イチゴもすっぱいけどおいしいんだよ」
ああ、口いっぱいにほおばりたいなあ……そう思ったら、おなかから、グゥウ――という音がしました。
「うふふ、ポン吉さんって、食いしんぼなのね」
アンリはくすくす笑います。
恥ずかしいなあ。
「ポン吉さんの森はわからないけど、わたしのお家にあそびに来ない? 助けてくれたお礼に、おいしいパンでもいかが?」
うわあい。
ポン吉は、おなかをたたいてよろこびました。