一日目 その1:主語はちゃんとつけよう
■自宅玄関 AM11:12
春休み4日目のことだった。
僕宛に郵便物が一つ届いた。それは宛先不明な小包。
かなり怪しいそれを僕は何の警戒もなく開けてしまった。今更後悔。
中にはブレスレットらしきものと、黒い紙切れと青い紙切れがが入ってあった。
黒い紙を手に取る。
それに書かれていた内容はこうだった。
『おめでとうございます。
貴方様は見事101人の中の1人に見事選ばれました。拒否権はございません。
しかし、勝ち残ればそれに見合う地位と財産が手に入るでしょう。
尚、同封されているブレスレットを3月30日午前11時までに装着しない場合は、執行人が貴方を始末します。
ブレスレットの詳しい使い方については、青い紙の方をご覧下さい』
………………
…………
……
…
まっ、次いこ。
今度は青い紙を見ることにした。
取扱説明書
・右手にはめる(左手でも可)
』
だけかよ!!!!!
少ないし、詳しくないし、意味ないし。これいらねぇし。
………まぁいいや。
さて、と。まだこれに書いてある期限まで4日あるな。
わからないものは、丁寧且つ慎重にと言ってたからな。
誰が言ってたんだろ?
……まぁいいや。
寝よ。
有言実行と言うことで、僕は自室に戻って寝ることにした。
◆
■自室 AM11:19
さてさて、これはどういうことなんだろう?
僕の部屋に見知らぬ少女がメイド服を着て、正座をし、さらにこちらを睨んでいるではないか。とりあえず、
「失礼しました」
ぎぃー、バタン。
一度ドアを閉めて深呼吸。
すーはー。すーはー。
よし、確認。
ここは僕んちあれは他人。ここでえらいのは僕。あのメイドじゃない。
「よし!!」
気合いを入れていざ出陣!
再びドアを開けるとさっきと同じ位置で鋭い眼光で睨んでいる。
しかし、この状況を打破しなければ、
「……なんで、僕の部屋にいるんでしょうか」
つい敬語になってしまった。
気合い負けした証拠だな。うん。
「見たか」
「えっ?」
急な問いかけで反応できなかった。
「見たかと聞いている。早く答えろ」 あくまで、正座を崩さず、それでいて命令口調。……というより、なんで命令されてんの僕?最初の敬語がいけなかった?
「貴様早く答えぬと斬るぞ」
わぁー、帯刀している。
絶対銃刀法違反とかなんとか言ったら斬られるだろうな〜。
「貴ぃ様ぁ〜、ここまでシカトされたのは初めてだ。後10秒与えるそのうちに答えなければ斬る。嘘じゃないからな。絶対だぞ」
いや、逆に嘘っぽいでしょ。『じゅ〜う』
『きゅ〜』
突っ込みどころ満載なんだよね、この状況。
『は〜ち』
『なな、ろ〜く』
なな普通だし!
『ご〜』
『よ〜ん』
とりあえず、
『さ〜ん』
正直に言ったほうが
『に〜ぃ』
いいだろう。
『い〜ち』
『ぜ〜ーー
「あのー」
「なんだ」
「すいません、見ました」
「別に謝る必要はない。で、どうだ」
「えーっと、あおとしろのしましまもいいと思うけど、僕的には、清楚な感じの純白がいいと思います」
「?」
あれ?違ったかな。あの子の顔がだんだん赤くなっていく。うん、斬られるな僕。
「………っ。死ねぇー」やっぱり。
ぐさっ。
僕の後ろのドアに彼女が投げた刀が刺さった。 ふー、間一髪。
冗談はさておき、このまんまじゃ埒があかないな。
では、
「結局、なにを?」
「………なにがだ?」
「主語がわかんないよ。それじゃ」
「うむ、確かに。すまなかった。だがな、さっきの件は許さぬからな」 ちょっと涙目で睨みつける少女に少しドキッとした。