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12、人間は敏感で繊細なの

お楽しみください。

 言葉の罠に気付いてから、渋々超絶露出の多い衣裳に着替えた私だが、どうしても着替え部屋から出られないでいた。

 少し前からメイドがどんどんと扉を叩いて安否を確認してくるが私は反応していない。反応したくないのだ。

 胸元がスースーする。背中もだ。

 何で私がこんな衣装を着なければいけないのだ。もしかして毎日着ることになるのだろうか。

 「ラノン!? いるなら出てきて!」

 リンカの声だ。

 リンカの焦りに焦っている声を聞くと、私は自分が何をしているのか実感した。

 私は人を困らせている。心配させている。だかが衣裳のことで。

 着替え部屋にあった鏡で自分をもう一度見てみる。

 そこにはショートヘアーで身長がそこそこな女子高校生がいた。

 その何の華やかさもかわいさもない顔は衣裳のせいか更に酷いものとなっていた。何かとてつもなくまずいものを食べた時のように。

 高校生になっても膨らみのない胸は大胆に開け放たれている。

 私は散々自分に対して厳しい、否、当然のコメントを放つと、もしかしたら、と笑ってみた。

 酷かった。

 頬は引きつっていて、目は笑っていなかった。

 私は当然と思いながらもさすがに自分が心配になって、両手を使って無理矢理自分の中で最高にかわいい笑顔を作ってみた。

 かわいかった。

 お世辞ではないし、頭がおかしくなったわけではない。

 確かに私が両手で無理やり作った笑顔はかわいい。リンカには及ばないがかわいい。

 少し自信が出てきたので覚悟を決めてもう一度手を使わず笑ってみた。

 これまたかわいかった。

 どうしたものかとニヤ付きながら私は頭を抱えた。

 すると勝手に涙が出てきた。悲しいわけでもないのに。

 私は後ろを向くと着替え部屋の壁にどんどん頭を何回も付けた。

 「私はおかしくなったわたしはおかしくなったかわいくなんかないはずだ」

 お経のように言い続けた。

 そしておでこが痛くなり始めると再び前を向いて鏡を見た。

 そこにはショートヘアーで身長がそこそこな女子高校生がいた。

 その柔らかそうな頬をもっている顔は笑顔で、衣裳は良い飾りとなっていた。まるで花畑の花でも見ているかのよう。

 高校生になっても膨らみのない胸は良いアクセントとなっていて、こっそりと顔を覗かせていた。

 「これが私? 信じられない」

 私の頭はおかしくなんてなかった。正常だった。

 私は靴を脱いでハイヒールを履いた。

 そして再び鏡を向いた。 

 ハイヒールを履いた足は履く前よりは細く見え、美しかった。

 「ラノンってば!!」

 私は自身満々な状態で扉を開けた。

 「ラノン!? 大丈夫?」

 「ごめんごめん。衣裳に夢中になちゃって」

 リンカは汗をかいていた。頬は真っ赤。

 「心配させちゃったみたいだね」

 「ほんとよー。うんともすんとも言わないんだから」

 リンカも私と同じような衣裳だった。

 やはりリンカはいつ見ても何を着てもかわいい。似合う。

 でも今回は私の方がかわいかったりして!

 「今日にラノンかわいいね。派手な衣装が似合ってる」

 「ありがとー」

 私は上機嫌に言った。

 するとリンカは意外な顔をした。

 「珍しい! いつも髪型変えた日にかわいい、っていうと嘘でしょ? とかお世辞ありがとー、とか言うのに! 素直に感謝した!」

 「たまにはね! うふふ」

 「上機嫌ね! 行こ、食事会場」

 「うん!」

 私はハイヒールを履いているのを忘れ、スキップした。最高にメイドに怒られたけど。

 人間ってのは気持ち次第で八割方変われる便利な生き物である。

 だから気分転換はとても大事。

 でも便利じゃない時もある。

 人の気持ちを悪くさせる発言をされた時だ。

 気持ち次第で八割方変わってしまうのだから、そんなことをいわれたらあっ、と言う間に悪い方向に変わる。嫌でもだ。

 だから良くいじめや誹謗中傷はダメと言う。

 結局人間は敏感な生き物。繊細なのだ。

 気持ちは大事。大切。だがガラスより更にもろくて、良く狙われるもの。そして良く狙うもの。

 お母さんに無理矢理読まされた本にこんなことが書いてあった気がする。

 先程のような状態になってしまう私にとっては、これから気持ちのある人間として生きていくために肝に銘じなくてはいけないことだと思う。

 私はすっきりした状態でリンカと腕を組みながら夕食会場へ向かった。

 ハイヒールなのにスキップしながらね。もちろん注意された。

いかがだたでしょうか。今回はラノンの気持ちと考えを中心としたお話になっています。

ラノンが一人で葛藤する姿、注目です。

最後に。読んでくださった方に史上最大級の感謝を!

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