イントロデュース
「何でこうなったんだ!」
僕は叫びつつ、ギアをセカンドに入れ急旋回、イルメンマルターン。
「ぐずぐず言うな! 後ろを取ったら撃て!」
後ろから檄が飛ぶ。ギアを三に入れて加速しつつハンドルのトリガーをスイッチ、耳障りな音とともに機関砲から弾丸が吐き出される、メーターの残弾ゲージが減っていく。
「落ちろよ!」
眼前を飛ぶ巨大な甲虫は三十七ミリの徹甲弾を全て弾き返し、鈍重そうな見かけからは想像できない素早さで旋回し、僕の機体の後を取る。
「ダイブだ! ギアを四まで上げろ!」
パワーダイブだ、旋回性能が高くったってその図体じゃまともにダイブなんてできるはずがない。
ダイブのGで昼に食べたラーメンをもどしそうになる、このままじゃアレが最後の晩餐になってしまう。
「ギアを一に入れろ!」
ギアを三つ落とす、激しい減速で機体はひらりと宙を舞い、一瞬の無重力が僕を襲う。
「立て直せ! スロットルを開けろ!」
スロットルを全開、重心を落として機首を水平にしつつ加速。
「よくやったな」
後ろのシートに乗った少女は僕にそう告げる。
「ヤツ、自分の急降下性能がちゃんと把握できていなかったらしいな、地面に直撃だ」
身を乗り出して地面を見てみる。彼女の言ったとおりだ、地面につややかな甲虫の外骨格と内臓がぶちまけられていた。先ほどの急降下と無重力、そしてこの光景で吐きそうになる。
「降りよう、やり方は指示する」
後ろに乗った彼女は飄々と言ってのける、まるで『こんなこと日常茶飯事だ』と言わんばかりに。
僕はこの偉そうな口調の、どう見ても年下としか思えない少女の指示に従って機体を地面に降ろすことにした。




