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私のモステト人生録  作者: 沽雨ぴえろ
第一章 一つ屋根の下
2/4

アシュマルと出逢いました!

アシュマル出てきます!(・ω・)


ユズは大食いですよ、多分(*´∀`)




ぐぎょぎょぎょぎょぎょ



「……うんー…」



寝てたみたい、今自分の腹の音で起きました。いつの間にか寝てた、っていうか、気絶してたんだろ?

私は目をぱっちりとあけて(モステトやってると襲われたりすると大変だから、寝起きはぱっちりですよ)寝転がりながら首をひねった。


うーん…って、あれ。なにこの天井。めっちゃレース。


私の目の前には白くてきめ細かなレースが沢山ぶら下がっていた。もちろんこの世界にきてから一度も見たことのないソレ。まぁモステトですからねー。当たり前ですわな、うん。

とにかく、一応は怪しむわけですね。ゆっくりと物音たてずに起き上がって、その場を確認することにした。


え、物音たてずになんて布の上でできるのかって?ふっふっふっ、モステトを舐めちゃぁあかんぜよ!(きらーん)

常に身の危険が側にあるものとして、モステトはみーんな生きる術を持っとるのでござんす!


左右に頭を振ると、左にはベッドの脇に備え付けられたレトロなチェスト、右を向けばランプの置いてある机。後ろにはふっかふかのドデカい枕三つ。

おおう…コレあれだね。王道やんけ。主人公助けられてるか利用されるかのどっちかやんけ。

私はとにかくそうとしか考えられなかった。と言うかそれしか考えられない。ミソが足らんのです。


ほわー、なんて口を開けていたけれど、そんなのすぐに現実に戻された。だってそうでしょ。倒れて意識飛んで目覚めたら豪華な部屋。


はいもう危ない匂いしかしないー。


王道だろうが何だろうが知りませんけどね、今時の二十歳舐めんといてくださいな。ちゃんと現実見てますから。

私はそーっとベットから降りて、足踏みをしてみる。

……うん、変な魔法は使われてないみたいだ。

あ、そう言えばこの世界魔法使えるんだよね。私も使えんのかね…。今更ながらに思ったよ…これもっと早く気付いてれば、モステト生活楽だったんちゃうんかね…


なんてそんなん思ってたからだろうね。


部屋に人が入ってくるのなんて、気付かなかったよ。

















もっふもっふもっふ


がつがつがつがつがつ


ごきゅごきゅごきゅん



目の前に並ぶご馳走をナイフとフォークで素早くかき込み、高速で噛み砕き、喉の奥へと押し込んでゆく。

手前の皿が空になると、素早く隣の人が交換してくれる。

フランス料理っぽいな、うん。

今この部屋にいる人は、給仕してくれる人と、向かいに座る人、そして私。先ほど私が足踏みをした部屋に入ってきたのは、この二人だった。怪しかったけど、少年の綺麗さに惹かれました。はい。あふまないねー。

ま、そんなことは置いときまして、私はほかに二人いるなんてことは考えず、とにかくかきこんだ。


だって。この世界にきて、初めてのご飯。温かいご飯。腐ってないご飯。

ちゃんとした、ご飯だから。ここには他の強いモステトも、盗み先の店主もいないけど。やっぱりかき込んでしまう。


お腹が一杯になってきた。けど、私はさらに詰め込もうと口元を押さえながら次の皿に手を伸ばす。

と、そこへ。

澄んだ声が発せられた。心が落ち着くような、そんな声で。



「そんなに焦んなくても、大丈夫だよ」



ついっと目線をあげれば、向かいに座る人──少年。

綺麗なイエローブロンド、アクアマリンのような丸くて大きな瞳、蜂蜜を垂らしたミルクのような白い肌。


私を、拾ってくれた子だ。



「………ぅん」



「あれ、お腹いっぱい?」



な、なに?!なぜ分かったのだショタくん…!まあナイフとフォークを置いちゃったからだろけど。

ソレをみると、少年は残念そうに眉を下げた。



「そっか。家のデザートは自慢なんだけどな…」



「食べます!」



条件反射ね、うん。もちろんのこと、少年は目を丸くして驚いたけど、私の目のきらきら具合にやられたのか、ふはっと笑って給仕の人に持ってこさせてくれた。



少しして目の前に出されたのは、薄いピンクの山、多分ソルベかな?周りにはふんだんにベリーが飾られていて、すっごかおいしそう。


恐らく目をきらきらさせて、私は小さなスプーンでその山を掬った。そっと口元に運ぶ。



「あっ」



思わず声が…!なんと中には瑞々しいアプリコットのコンポートが!つるりとしていてとてもデリシャス!!


ぱくぱくと食べていると、なぜか塩の味がしてきた。

それと同時に、少年が焦ったように立ちあがる。



「どうしたの?!」



「え?…」



「…泣いてるよ?」



少年に指摘されて、初めて気付いたのです。そっと頬をなぞると、指先に濡れた感触。

それを呆然と眺めていると、途端に私の涙腺は決壊した。

きっと、初めて美味しいもの食べたからだろうな、初めて優しくされたからだろうな。



「えっ、えっ?!」



目の前で少年があわあわと行ったり来たり。少年は無意味に手を上げたり下げたりして、私の顔をのぞき込んだ。…わぁ綺麗な顔。



「大丈夫?」



その問いは私にはあまりにも無垢で、汚れがないように思えて。だからこそ嬉しくて。私はにっこりと笑って答えた。



「大丈夫だよ」



その子が余りにも綺麗に安心するから。私は思わず笑っちゃった。


あー、この少年は優しいんだな。

しみじみと私は思ったのですよ。

そんなことを思ってると、少年はさらに顔をのぞき込んできて。



「ねぇ、名前は?」



そんなことを言うのであった。当然戸惑うわけでして。



「え?私?」



「そうだよ!俺はアシュマルって言うんだ」



言い終わると不安そうに私をみるアシュマル。え、なんか想像できるなぁ。っていうか『俺』。なんか笑える。



「あ…、もしかして、名前ない?」



やっぱりな!

けど大丈夫。私には記憶があるから、今の私には名前があるのさ。



「ううん、あるよ。私はユズって言うの」



彼はふんわりと笑って。握手を求めた。

さらりと揺らぐ髪に目がいく。次に、透き通るような青い目に。

彼はゆっくりと言葉を紡いだ。



「よろしく、ユズ。友達になろ?」



もちろん、そんなの決まってますとも。私はにかっと笑って手を握り返した。



「もちろんっ!よろしくね?」













彼の第一印象は、綺麗な少年。


彼の第二印象は、優しい少年。


私が泣いたのはある意味アシュマルのせいだけど。


『友達になろ?』そんなことを言う人が、悪い人なはずないでしよ?






私はこの日、綺麗で優しい少年に恋をした。








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