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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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9話

酒場には一瞬不穏な空気が漂い、怯えた女 いや少女は男の顔を見てまるで恐ろしい魔物にでも遭遇したかのように体をこわばらせ怯えてしまった。

それは横に座っていた彼女の姉らしき女も同様で、しかし 年上のせいなのか妹よりは肝が座っているらしく。こちらはまだ話ができるぐらいの怯えだった。

しばらく妙な沈黙が続いたが、しばらくして姉の方が先に落ち着き払って

「・・・失礼」

と妹の非礼を詫びたが、姉の顔にも怯えの色が隠しきれないでいる。

そんなに俺の顔は恐ろしいかと隣のラヒムに小声で聞くと、言葉では言わなかったが首を激しく縦に振った。

「いえ、こちらこそ 怯えさせてしまって・・」

何で顔を見られてこちらが謝るのか釈然としない部分もあるが、相手は幼気な少女だ。

プレイヤーが男だろうが女だろうが関係なく肝心なのは、そのキャラが女性だということでできる限り紳士的に男も軽く頭を下げた。

それを見て女はこの恐ろしい顔をした男が意外にも礼儀があると少し驚いたようで、これも何かの縁とお詫びとしてこちらで一緒に一杯飲みましょうと言った。

女性と飲む事が酒を美味くさせるとラヒムも男も快諾したが、親切に微笑む姉の横で嫌嫌と首を必死に横に振って姉の提案を無かったことにしてくれと懇願する妹が見えたが。

姉はそれを残酷に無視して、妹の座っている横の席に男を座らせた。

横で怯えた小動物の様に震える妹を尻目に男とラヒムは酒を煽ると、姉らしい女が陽気そうに話しかけてきた

「・・弩を持っているとこからして狩人さんみたいだけど、ここの森で狩りをしているの?」

「えぇ、それなりに良い獲物が沢山いましてね」

酒に少し酔っているのもあって男は機嫌よく女と話す、勿論狩人というのは嘘だが作り話に花が咲いていた。それにラヒムも混ざって姉らしき女と男とラヒムの三人で陽気な時間を過ごす、その間妹はずっと震えていた。

「だけど、その顔じゃぁ・・狩人っていうよりも盗賊の方が向いているかしらね」

不意に姉らしき女が顔を少し赤くして言った。井出もしばらく面白い会話に熱中して注意力がなくつい

「盗賊?失礼な 俺は追い剥ぎですよ」

と自己申告してしまった。

これにはラヒムも酔いが一気に冷めて、男を黙らせようとしたが手遅れだった。

しかし、井出は少しも失言をした自覚は無く酔ったまぎれのいい台詞が打てたとその時だけは間抜けにも納得してしまっていた。

「何?追い剥ぎ なのあなた?」

女が少し驚いたような顔をして、ラヒムはしまったと脂汗を顔に出しているが、男は気にせず返答した。

「えぇそうです。横にいるのはラヒムって名前でしてね、俺の相棒で結構良い仕事するんですよ」

と男は呑気にラヒムの頭を酔って撫でる始末。

今度はラヒムが横で震えている妹らしき女と震える番だった。姉らしき女の武装を見てラヒムはこの女は賞金稼ぎであるかもしれないと思ったのだ。そうじゃなければこんな寂れた集落に来る理由があるだろうか、それに見る限り投げナイフを使うとなるととても厄介な相手だし、ラヒムはまだ昨晩の殴られた痛みがまだ体のあちこちに残っていて素早い動きがしばらくはできなかった。

そして妹らしき女はこの怖い男が追い剥ぎと知ると余計に怖がり、ラヒムとは別の理由だが二人は恐怖に震えだした。

「あぁそうなの じゃあそれなりに腕も立つの?」

しかし、姉らしき女の反応はいたって平凡で少し酔ってはいるが、さもありなんと聞いてきた。

「クロスボウの方は得意だ 剣とかもいいが、今は生憎これしかないんでね」

と井出も己の失言に気づくことなく当然のように返し、男は自慢げにクロスボウを姉らしき女に自慢するように見せた。

「へぇ・・それは助かるわね」

と女は一旦ため息をついて続ける

「ねぇ あなた 追い剥ぎなら、それなりの場数を踏んでいるのでしょ?」

「あぁ 」

「だったら仕事があるのだけど・・手伝ってくれないかしら?」

姉らしき女の顔には既に酔った色はなく、目は真剣に男を見つめている。

ラヒムは今にも女が素早くナイフを彼と自分の眉間目掛けて投げてくるのではないかと、気が気じゃなくヒヤヒヤと見守っている。


しかし、ここでずっと横で震えていた妹らしき女が

「姉さんっ 私は嫌よ こんな化物とだなんてっ!死んでも嫌っ」

と急に横から叫んだ。急に叫んだ妹らしき女にラヒムは驚いたが、それよりもっと驚いたのは姉らしき女が妹の眉間に目にも止まらぬ速さでナイフを突きつけ、無理やり黙らせたことだった。

「黙りなさい ユエ 姉さんは今大事な話をしているの」

と小さい子をあやす様な笑みを浮かべたが、ナイフを突きつけられ黙らない小さい子は中々いないだろう。

「それで 仕事ってのは?」

男は今のできごとを気にも留めず、姉に続きを促した。

「えぇ・・・それよりまず自己紹介しときましょう 私はリビ 旅芸人って奴よ」

「旅芸人?こんな辺鄙な場所でか?」

「私は気の向くまま行きたい場所へ行ってするだけなのよ」

「その妹さんもか?」

「えぇ 彼女は軽業が得意でね 私は投げナイフが得意なの」

と少し自慢げにリビという女が微笑むと、彼女は妹に突きつけていたナイフを頭上高く振り上げ男の横を掠めるように素早く投げた。

男が驚いて投げられた方に振り返ると、先程まで自分らが座っていた席のテーブルの上に置いた空のコップにナイフが刺さっている。

見事なものだと男はリビを思わず褒めた。

「投げナイフなら自信があるのだけど、私 剣とかそういうのには滅法弱くてね。甲冑の隙間に当てるなんてそこまで高度な芸当はできないし、妹は力がなくてねぇ・・・だからちょっと護衛して欲しいのさ」

追い剥ぎにか と男は笑ったが、リビはそれでも真面目な顔で続ける

「だからこそよ、それにあなたが知っているかどうかはしらないけど。最近は追い剥ぎ組合より厄介なのが、道にはたくさんいるのよ」

「騎士・・か?」

「そう!よくわかったわね」

不安げに返した男に対し女は少し驚いたような声を上げた。


騎士 本来なら礼節を重んじ、騎士道やらを貫く誠実な人間と思われがちだが、この「Lamia?」ではある意味中世の現実に近い存在だ。

奴らはそれこそ実力のある集団だが、追い剥ぎが潜んでいるというだけで村を焼き払うこともあれば、ただの通行人から金を剣で奪い取ることさえある。

大体は追い剥ぎ組合と変わらない存在に思えるが、奴らの質が悪いことはどっから持ってきたよくわからない官軍意識というものがあって、まるで自分らがこの「Lamia?」の守護者や唯一の正義の使者あるいはGMの様な存在だと盲信している節があり、その点既に開き直っているような追い剥ぎ組合よりも数段質が悪い。

しかも盲信によってよく統率された集団で、装備も追い剥ぎの男達と比べれば遥かに質の良い物を使っていて おまけに練度も高い。

追い剥ぎ連中はまだ人間味があるというか、まだ多少通行人が必死に頼み込めば見逃すまではいかずとも少しの通貨で勘弁してもらえたりもするが、相手が騎士と言ったらそうはいかない。

奴らにとって剣で奪うことは一種の寄付の様なものだと信じている節があり、寄付をしないものは殺して構わないと恐ろしく野蛮だ。

聞いただけでも反吐が出ると男は渋い顔をした。

「あいつらのことはよく知っているよ。村を平気で焼き払って、面白半分に人を・・いやゲームだからいいのか。」

「だとしても追い剥ぎのあなたより百倍質が悪いわ」

女も少し渋い顔をした。

騎士道と武士道の違いがよくわかりません

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