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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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72話 田中② 登校②

 「それでですね、新しい話ってのは騎士の事なんですが・・・。」

 「またかよ。」


 缶コーヒーをすすって一息ついた田中の一言に、思わず井出は顔を苦くして食いついた。

 ここのところ何かと騎士連中と関わりが多い気がする、一体自分が何をしたというのだと不平を口にしたが、番犬の切り込み隊長と副隊長をロストさせれば、嫌でもかかわり合いになるだろうと田中は冷静に返した。


 「一応、井出さん達の動きはモニタリングしてますんで、何しているかは大体わかるんですよ。」

 「モニタリングって4年前に騎士にいた時だけじゃないのか?」

 「当たり前じゃないですか、大事なテストプレイヤーですからね。・・・そうそう、昨晩は中々見ものでしたね。」


 田中の発言に井出は絶句する。

 まさか、テストプレイヤーとなって4年も経つのに、未だに監視されているとは梅雨にも思っていなかった。

 田中の言葉が本当なら、今までの行動は全て見られていたということになる。

 追い剥ぎや窃盗もあれば、時には放火もした気がするが、なんだか恐ろしく不安になってきた。


 「あそこの村の詩人はそれなりに有名だったんですよ。悪い意味で ですが。」

 「悪い意味?」

 「そうです。幻術魔法で客を眠らせてスパッと首を斬るんですよ。」


 そう言うと田中は、井出の前で手を刃に見立てて自分の首を掻っ切るような仕草をしてみせた。

 そして、気持ち悪い仕草をして喉が渇いたのか、また井出の缶コーヒーを啜ると話を続けた。


 「どこで幻術魔法を習得したかは知りませんが、おまけに刀剣の腕も中々だ。よくぞ一人もお仲間ロストさせずに切り抜けることができましたね。」

 

 そう感心したように田中が言い、並の連中ならあっさり全滅ですよ と付け加えた。


 「俺は何もしてないぞ。」

 「わかってます。クロスボウを撃って外してましたね。ああいう場面なら命中するような気もするんですが、現実上手くいかないもんですね。」

 

 そうはっきり物を言われると、なんだか悲しくなってくる。

 だが、少し苦い顔をする井出とは対照的に田中は明るく続ける。


 「まぁシシャモさんがいて助かりましたね。井出さんは何故だかいつも有能な仲間を従えていますね。」

 「成り行き上ついてきちまっただけだよ。」

 「そうでしょうか?」


 そう不思議そうに田中は言うと、急に真剣な顔になって、井出の顔を覗き込んだ。

 井出の顔を覗き込むように見る田中の瞳は、好奇心に溢れている。

 そんな瞳を見て井出は4年前に彼がテストプレイヤーを頼んできたときも、こんな無邪気な子供の様な瞳だったと思い出した。


 「成り行き上・・・井出さんは4年前も同じことを言って、巫女を連れ去っていきましたよね。」

 「あれは本当に成り行きだったんだよ。」

 「私はそうは思いませんね。」


 田中はきっぱりと言ってまた缶コーヒーを啜り、終わるとまた勝手に箱から持ってきた。

 止めようとしたが、どうにも田中が真剣な雰囲気を醸し出すので言い損ねた。

 そして、缶コーヒーを持ってくると、また一つプルタブをひねって啜り、今度は真剣な表情で井出を見た。


 「巫女の誘拐、守人達全員による暴動騒ぎ、モーレ城塞での行動・・・他にも沢山見てきましたが、この4年間の出来事全て成り行き上でそうなったと結論づけるつもりですか?」

 「その通りだ。」


 田中が不審がるのも、無理がない気がすると井出は思った。

 でも、どの出来事も自ら引き起こそうと思ってしたことは何一つない。

 どれもこれも、本当に偶然で突然に発生したことばかりなのだ。

 

 「・・・井出さんは本当に不思議なことをいいますね。」


 井出があっさり返すと、田中は呆れたようにため息をついた。


 「まぁいいです。井出さんがそういうのならそうなんでしょう。まぁ今までずっとモニタリングしてて退屈したことはありませんが、時々何かに動かされているような気がしてならないのですよ。」

 「何かってなんだよ?」

 「わかりません。ただゲームを作った俺にでもわからないことはあるんです。」


 そう言うと、また田中はため息をつき


 「すみません。大分話が逸れてしまいましたね。戻しましょう。」


 と言い、缶コーヒーを飲み干した。

 一人だけで既に3本ほど飲み終わっている。

 こいつは本当のところ、ただ缶コーヒー欲しさに自分の部屋に押しかけてきたのではないかと、井出は別の意味で不安になってきた。



 面倒臭い坂道を登り終えると、小林達が通う高校が見えてきた。

 高校の周囲は住宅団地に囲まれている為、道はとても狭く、また学校の敷地内はグラウンドの類は無い。

 体育の授業は体育館を使い、運動系の部活動をする際は、遠くの他校のグラウンドを借りるなどそれなりに苦労している。

 建立する頃はまだ周囲には畑が広がっていたのだと、たまに年配の教師が愚痴っているのを聞くが、一体それが何十年前だったのか定かではない。

 もとよりそんな事、小林には関係ないし、知ろうという気も起きない。

 ただ小林が知っていることがあるとすれば、それはこの高校がとても平凡で素っ気ない存在であるということである。

 

 「あっ、あれ長谷川じゃね?」


 米山が横で急に素っ頓狂な声を出した。

 住宅に囲まれた狭く長い通学路を他の生徒達共に歩いていくと、急に横にいた米山が少し遠くに冴えない後ろ姿をした生徒見て、走り寄っていった。

 その長谷川であろう生徒は小林の目には少し遠くてよく見えないのだが、米山は目がいいらしく、少々離れていてもすぐにわかったらしい。

 その長谷川と思わしき姿は、一度後ろから走り寄ってくる米山を見た。

 それを少し遠くで見ていた小林は、意外と米山は長谷川と仲がいいのかと和やかな気分になった。

 だが、長谷川に米山が近づくと、長谷川は一目散に高校へ逃げていったので、和やかな気分は無残に消え去った。

 しかし、米山はその逃げていく長谷川を走って追いかける。

 そんな光景を見て、小林はいつぞや野生動物を観察する番組にて見た、シマウマを追いかけるライオンの図を連想し、一人で納得した。

 


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