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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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65話 夢中⑤

 異臭漂う牢獄の中で、卵は先ほどのことを思い返していた。

あの村に一人だけ残された自分は、おめおめと一人だけで戻るわけにも行かず、

税というよりも村人達の所持品であった物などを持てる限り、馬車に載せていった。

 帰りの道中はとても虚しかった。


 当初は大量の略奪品を上に収めれば、略奪と卵以外の徴収部隊全滅の件は不問にしてくれると思っていたのだが、残念ながらそうはいかなかった。

 元々、卵が言い出した訳ではないのだが、死人に口なしとはよく言ったもので、

査問委員会まで開かれ、その場にて卵自身が徴収部隊を扇動し、

一連の略奪行為を引き起こしたと結論づけられた。

 自分は今回の件は村に到着するまで知らなかったと言い張ったが、

焼け石に水だった。査問委員達の目には、

自分が言い逃れをしているようにしか映らなかったらしい。

 上の連中は徴収した物だけ収めれば不問にすると思っていたのだが、

今回の件は村自体を全滅させてしまい、これ以上徴収することができないという問題と、

例え相手が多数存在しても、騎士達が村人程度に遅れをとり、

騎士の権威を失墜させたことが問題となった。

 いくら場数を踏んだ騎士とは言え、不意打ちに適切に対処できるかと言われれば、

とても難しい事だが、上の連中にはそんなことは関係無く、

騎士という強力な組織の名を貶める様な行為には、厳しく対応したのだ。


 だが、唯一この事件に関して生き残ったのは卵のみで、

残りの徴収部隊の仲間たちは、皆ロストしたまま『Lamia?』に戻ってこなかった。

 査問委員等はロストした彼らが、

すぐにまた、のこのことログインしてくると踏んでいたのだが、

徴収部隊の仲間らは卵よりも賢かったようで、

戻れば自分らがどの様な扱いを受けるかはよく知っていた。

その為、彼らが騎士団に戻ってくることはなかった。

しかし、騎士団としては村人風情に全滅の憂き目にあった連中を、

同胞と認めるのを嫌になった為、査問委員会の閉廷後に、

上層牢獄行きとなった卵以外の徴収部隊の仲間達の記録を全て消してしまった。

 元々徴収部隊の連中は代表的な騎士達と違い、汚れ仕事が多かった為、

内部の騎士達と関わりが薄かった分、

卵以外の徴収部隊員の事を、皆が忘れるのに時間は掛からなかった。

 だが、逆にこのことは騎士団の中に置いて、

唯一、存在が残ってしまった卵の存在感を高める結果になった。

 


徴収部隊が卵以外、存在していなかった事に公式上なってしまった為に、

査問委員会の閉廷後に、彼の罪状を聞きにきた噂好きな騎士がいたらしく。

その噂好きの騎士に、よく査問内容を暴露していた騎士は、

騎士の名誉を失墜させる件だったこともあり、話を大分盛って『卵が単身、狂気を起こし、村で殺戮を行った』と噂好きの騎士に話してしまった。

 これが騎士団内において、異様なまでに噂が広がり、

一目、卵を見ようと、上層牢獄内にわざわざやってくる物好きな騎士まで現れた。

 これに対し、上の連中は牢獄内において、

もし、卵が騎士達に事の真相を言ってしまったら、

騎士内において不和が広がってしまうと危惧し、

上層牢獄の入室を決められた者以外、急遽禁止にして、

事なきを得ようとした。

 だが、その上層牢獄の閉鎖が、

卵をとても重要な人物なのではないかという噂を、

騎士団内に広げる始末だった。

 卵はその時一躍『時の人』というものになった。

実際は異臭漂う牢獄内で、ぼんやりと外の景色を眺めているだけだったのだが、

上層牢獄の下では、卵の蛮勇を讃える声が広がり、

鬼神の様な強さを持つとまで噂が異様に濃くなっていた。


その当時、『Lamia?』内の隅々まで掌握していた騎士が、

地方ごとを治める騎士団を創設しようという企画が挙がっていて、

時の人である卵を、地方を治める複数創設する予定である騎士団の一つに、

団長としては任命してはどうかという話が、

事の真相を知らない大半の騎士達の間で話題になった。

 これに騎士達をまとめる、上の連中は大いに頭を悩まし、

いっそのこと真相を打ち明けてしまったほうが、いいかもしれないと思ったが、

そうすると、騎士達の士気を下げてしまうとも危惧し、

ここは卵を名ばかりの騎士団の団長に収めて、士気を維持することとした。

 あまりにも滑稽な話かもしれないが、事実は大体滑稽なものでもある。



 

 今にも壊れそうな椅子に腰掛けながら卵は、

いつになったら夢が醒めるのか、退屈になってきていた。

どうやらこの夢は騎士だった頃の記憶を辿っているらしい。

 今まで、会社を辞めたりなどして、ゴタゴタしている間に、

そんな昔のことはほとんど忘れかけていたのだが、

人間何がキッカケで昔の事を思い出すかなど、わかったものではないようだ。

 まさか、現在まで一気に記憶を辿るのかと、少々不安になった。


 「おい。」


 そんな卵に声を掛ける者があった。

やっと昼飯でも届けに来たのだろうか。

 ゲームの特性上、食事を取らないと生命を維持できない。

それなら、ログインしなければいいと思われるかもしれないが、

刑期を査問委員会がはっきりと提示しなかったので、

もしかしたらちゃんと牢獄内にいれば、釈放してくれるのではないのだろうかと、

当時の卵は楽観的に考えていた。

 だが、今となって思えば、刑期をはっきり示さなかったのは、

釈放する気など最初からなかったからなのだろう。


 そんなことを考えながらも、卵は昼飯を受け取りに、

鉄格子の扉へ向かうと、いつもなら鉄格子の隙間に、

粗末なパンが置かれるのだが、今回はそれがなかった。

 これはどうしたことだろうと、顔を自分に声をかけた者に向けると、

そこには異様な甲冑を身につけた男が立っていた。

 卵とて十分異様な甲冑を着込んではいるが、

その者の甲冑は彼と比べ、遥かに神聖的とも言うべきか幻想的とも言うべきか、

なんとも形容し難い形をしていた。


 兜は龍の頭部を模していて、胴体もそれにならい、

卵の甲冑よりも2回りも大きくいかつい。

全身を暗闇のように黒く染めて、

兜の隙間からは爛々(らんらん)と眼光が赤く光っている。

卵の甲冑とは対照的にその者鎧は多くの突起に包まれ、

いかにもドラゴンを上手く擬人化させたような風貌であった。

 

「おい、『卵かけご飯』・・・いや、井出。」


 幻想的な騎士はあまりにもファンタジー色の欠片もないような事を言うと、

静かに卵を見据えた。

そんな、幻想的な騎士から卵の正式なユーザー名を呼ばれると、

何か色々と台無しになってしまうし、本名も呼ばれるともっとひどくなる気がする。


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