表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
64/149

64話 夢中④

 「どうしたもんか、逃げてもやられちまう。」


 卵は近くのその軽装の男に言った。

村の周りは背の高い草原に囲まれてはいるが、自分らが立ち上がれば、

立ち並ぶ民家などから隠れて矢を放ってくる連中から、

目をごまかすことはできるだろうが、

屋根に登っている連中からは丸見えだ。

 

 「その弩使えよ。何のために持ってるんだ。」

 「やだよ、一発撃てば10本返ってくる。」


 軽装の男が卵に応戦するように催促するが、

そんなむざむざ、気さくな重騎士の様にハリネズミにはなりたくない。

 すると、軽装の男が匍匐前進で、こちらの近くまで這ってきた。

その動きのため草むらが揺れ、それを見てとった村の連中が、

こちらに向かって矢を数本飛ばすが、

そんなこと全く意にも返さず、軽装の男は卵のすぐ隣にやってきた。


 「俺が囮になるから、まずは屋根に登っている連中を撃て。そうすりゃ、何人かでまとまって村の中に入れる。中にさえ入れればこっちのもんだ。」

 「危なすぎないか?」

 「危ないくらいが、俺らにはちょうどいいんだ。」


 軽装の男はまたしたり顔でそんな事を言うと、卵の制止も聞かず、

素早く立ち上がり、村の方へと突進していく。

上手いことでも言ったつもりなのだろうか。

 とため息を出しながらも卵は、

また、ハリネズミを増やすわけにもいかないので、

 仕方なく卵は、弩を村の屋根へと向けた。

兜は既に防御の意味をなさないだろうと、その場にほおり投げた。

視界が急に広がり、屋根の上に弓矢を持った連中が数人見える。

 民家の窓から矢を放ってくる連中は、影の具合で見えないが、

まず仕留めるべきは屋根の連中だ。

 

 囮になった軽装の男に向かって矢が何本も放たれるが、

彼はそれを素早い身のこなしで、躱して民家の壁を遮蔽に取る。

 そして、腰にさした長剣を抜くと、その民家の窓から中へ入っていき、

直様その民家の中から悲鳴などが聞こえだした。

 まさか、矢を放つ自分らに向かって、

こんな素早く近づかれるとは思っていなかったのだろう。

剣がぶつかる音すら立てず、悲鳴だけが村に木霊する。

 その悲鳴を聞くと、村の連中達の動きに変化が起きた。

男が入っていった小屋に増援に向かう者や、

一方的にできた攻撃を狂わされた為に取り乱す者など、

全体の動きが急に乱れ、飛んでくる矢の本数が確実に減りだした。

 それを合図として、卵の周りに身を隠していた徴収部隊の連中が村に突入した。

戦闘の流れなど些細なことで、一転二転簡単に変わるものだ。

 だが、まだ突入していった連中を屋根の上から狙いすましている連中がいる。

それを片付けなければ、仲間がまたハリネズミになると、

卵は素早く狙いをつけた。


 卵から見て、正面の民家の屋根に身を乗り出して、

突入した仲間を矢で射ようとしている、狩人風の姿をした男が見える。

横にも今まさに矢をつがえている村人らが見えるが、

先に仕留めるべきはその狩人風の男だと、卵は狙いをつけると素早く矢を放った。

 普段からクロスボウばかり、使っているせいかどうかは分からないが、

矢は正確に、その狩人風の胴に突き刺さった。

男は一瞬何が起こったのか理解できないまま、屋根を転がり落ち、

地面に叩きつけられ、動かなくなった。

 きっとリーダー各の男だったのだろう。

屋根の周りにいた他の射手はこれに動揺し、

村の連中はさらに動きに乱れが生じた。

 既に屋根から飛び降りて逃走を図ろうとしている者も、ちらほらと見える。

だが、そんな無防備な者を徴収部隊の仲間が容赦する訳もない。

 既に3人ほど奴らにロストさせられているのだ。

先に仕掛けてきたのは奴らであるが、

元々は自分らがこれと同じようなことを、する予定だったのだ。

だが、そんなまどろっこしい事を置いて、

徴収部隊の仲間達は烈火の如く怒りに身を任せ、

逃げようとしている村人達に襲いかかった。

 村はすぐに血の海と化した。

 

 卵が立ち上がり、村の中に入って来た時には、

もう矢を自分らに向けて放つ者は誰一人いなかった。

 屋根の上で殺された者、路上で無残に切り刻まれた者、

民家の室内で殺された者。様々な死体で村は埋め尽くされた。

 そんな死体などを見渡していると、横から不意に物音がしたので、

卵は慌ててクロスボウを、その音のした方に構えた。

 照準の先にいたのは囮として、

真っ先に切り込んでいった軽装の男だった。


 その村の中で生者として、立っているのは徴収部隊の中でも二人だけだった。

卵と先程の軽装騎士である。

 村人も死に物狂いで抵抗したらしい。

元々こちらより人数は上回っていたし、

甲冑を着込んだ手練の騎士といえども、数人に取り囲まれ、

しかも、死に物狂いで抵抗してくるとあれば、無理もない話かもしれない。

ちらほらと仲間の死体が、辺りに転がっている。



 「・・・終わったな。」

 「あぁ。」


 軽装の男はまるで人仕事終えた後のように、

額の汗を拭う様な仕草で、額に付いた血を拭った。

大分激しい戦闘だったのだろう。

軽装の男が携えた長剣は既に刃こぼれどころの話ではなく、

既にもう使い物にならないぐらいに劣化していた。

 きっと、鍛冶組合に持ち込んでも、すぐには直らないだろう。


 「手ひどくやられたな。10人程で押しかけて、生き残りは2人だけか。」

 

 男に対して構えたクロスボウを下げて、卵はため息をついた。

 ロストしてしまった他の仲間は、

きっと、騎士としてプレイする気はもうないだろう。

 一度でもロストし、転生して組織に戻れば、

階級は一気に下がってしまう。

 例え先日まで隊長を務めていた者でも、

ロストで、三下扱いになるのもザラだ。

 

 「いや、一人だけの様だ。」

 

 そう吐き捨てると、軽装の男は長剣を地面に突きたて、

それをまるで柱にするかのように、

長剣にすがりつきながら崩れ、

そしてそのまま動かなくなった。

 よく見ると、彼の体には大小の傷が多くあった。

致命傷と言えるほどのものはないが、装甲が薄い鎧が仇になったのか、

卵の着込んでいる鎧なら簡単に防げるような攻撃に対し、

彼の鎧は全く意味を持たなかったようだった。


 卵は自分以外、全て死体しかいない村の中で立ち尽くした。

そして、虚無感に包まれ始めると、景色が牢獄の中に戻った。


どんどん涼しくなってくるっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ