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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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59話 詩人の村⑬

 

 「あっ・・・」


 思わず、卵はしまったという顔をするが、

ラヒムの肩に深々と刺さってしまった事実は変わらない。

 矢に刺されてしまった彼は、専用チャットで激痛を訴えた。

だが、そのチャット文を井出は意に反さず、すかさず


 「・・・畜生。仲間を盾にしやがって、卑怯な奴っ」


 突然の事だったので、理解が追い付かない詩人に向かって、

指をさして怒鳴った。なんともいえない卵の図々しさに、

後ろにいたシシャモも何も言う事が出来ず、

卵をまるで、汚らしいものを見るかのような視線で見つめている。

 しかし、卵としてもとりあえず怒鳴っては見たものの、

そこから先はどうすればよいか。考えていた訳でなかったので、

詩人に向かい合ったままだが、特に何もできそうにない。

 装填に手間のかかるクロスボウを置いて、

腰に差したピックを抜き、詩人を襲うこともできなくはないが、

狭い通路内でピックを振り回すのはどうも危ない。

しかも、人質に取られたラヒムをまた盾にされれば、

矢傷ならまだ何とかなるだろうが、

彼の頭をもし、手違いでカチ割ってしまったら、とても手におえない。


 「シシャモ、なんとかしてくれ。」


 と、思わず卵は後ろにいる、今の一部始終を眺めていたシシャモに声をかけた。


 「・・・さっきは一人で仕留めて、報酬貰うって息巻いていたじゃないか。」

 

 とても面倒臭そうに彼は言って、冷たい視線を卵に送っている。


 「駄目。無理。頼む。」


 しかし、有効な攻撃手段であるクロスボウを失った今、

そんなことこだわっている場合ではない。


 「・・なんだよ。そんな目で見るなよ。」

 「後で、謝っとけよ。」


 クロスボウの装填に一旦下がった卵の後ろから、

シシャモが彼の肩を少し慰めるように叩いて、前に出た。

手には普段通り槍を携えているが、今は両手で構えるのではなく。

面倒臭そうに片手に持っている。

 この狭い路地裏で槍のようなリーチの長く、狭い通路につっかえて、

使いにくそうな得物ではあるが。

馬鹿とはさみは使いようとはよくいったもので、

彼はその槍を片手で振りかぶると、穂先を詩人の頭へと狙いをつけた。

 どちらかと言うと、クロスボウよりも質の悪い攻撃方法ともいえる。

しかし、装填にてこずって詩人に何かされても困る。

そんな彼の無情な動きを見て、ラヒムがまた何だかチャットで叫んでいるが、

卵は極力見ないことにして。

クロスボウに矢をできる限り素早く込めようと、手を動かし始めた。

 


 今まさに詩人の盾として使われているラヒムとしては、

状況が全く読み込めなかった。

先ほどまで宝箱を見つけ、とてもいい気分であったのに、

この落差はなんだろうか。

別に傭兵組合に所属している際にも同業者の不手際による、

誤射はそれなりにあったが、こうも目の前から放たれるのは初めてだ。

 しかも、今度はクロスボウではなく、

シシャモが自分の目の前で、槍を振りかぶっているではないか。

クロスボウとて胸や頭部などに命中すれば即ロストになるが、

少しでも急所からずれてくれればまだ、応急処置によっては助かる。

現にいま肩に突き刺さった矢も、手当を適切に施せば、酷い傷にはそうそうならない。

だが、槍は別だ。

クロスボウの矢と槍とは見ても分かるように、

威力に雲泥の差がある。

また外されたら、とてもじゃないが、自分は助からない。

そう思うとラヒムの顔は矢が刺さった際にも青ざめたが、

槍を振りかぶるシシャモを見ると、なお一層酷く青ざめた。

必死に専用チャットでやめてくれと叫ぶが、

当の本人はまるで何も聞こえないかのように、

こちらを静かに見つめている。

 そして、青ざめたのは盾になったラヒムだけでなく、

彼を人質としていた詩人も同じであった。

槍など投げられたら、もう既に人質も何も関係ない。

仮にまた人質のラヒムに間違って命中したとしても、

槍は勢いよく、彼の体を貫通するだろう。

 そう思うと、詩人は青ざめながらも、できる限り冷静に、

またリュートを手に持った。


 だが、その詩人の動作をシシャモは見逃さなかった。

以前、卵が魔術師を相手にしたことがあったが、

その時は、魔術師の口を開かせ呪文か何かを唱える前に、

仕留める必要があった。

 シシャモには、この路地裏で人質となっているラヒムとニッキに何があったのか、

知る由もない。

だが、自らのキャラを自由に動かせずに人質となっているということは、

あの詩人が何らかの魔術などの類を使用したということは、容易に推測できる。

 とすれば、詩人に何か不審な動きをされてはいけない。

動いたらすぐに仕留めに掛からなければいけなかった。

 別に今人質となっている二人とは特に何か縁もあるわけでもない。

一応、護衛依頼の仲間としての認識は多少あるが、

そんな些細な事を気にして、槍を投げることを躊躇するほど、

シシャモはぬるいプレイを今までしたことが無い。

 そして、彼は槍を詩人がリュートを動かす仕草を見ると、

すぐさま間髪入れずに、振りかぶって槍をまっすぐ投げた。



そのシシャモの非情さが槍の軌道を正確にさせたのかはわからないが、

槍は鋭い音を立て、ラヒムの耳をほんの少しえぐったものの、

詩人の頭部に乾いた音を立て突き刺さった。

 槍は勢いよく飛んだため、詩人の小さな頭を貫通し、

穂先が後ろにいたニッキの固い肌に、少々傷をつけた。

 詩人はもう歌うことも弦を弾くこともできずに、

頭部から噴き出た赤い鮮血に衣を染めながら、

そのままニッキの前に崩れるように倒れた。


 「よし。」


 槍を投げたシシャモは上手く命中したことに、少し満足そうな顔をすると。

まるで何事も無かったかのように平然と詩人の死体まで歩いていき、

グロテスクな音を立てながらも、素早く槍を頭部から引き抜いた。

 しかし、危うく詩人共々頭部を貫かれるところであったラヒムは、

詩人がロストしたことによって、すぐ体の自由が利いてきたが、

矢が刺さったことや槍が自分のすぐ横を飛んで行ったことに、

肝を潰し、その場で気絶した。



 「ふぅ。助かったぜ。」


 そんな気絶したラヒムとは対照的に、ニッキの方は気が強いらしく。

体の自由が利き出すと、卵たちの方へ気絶したラヒムを軽々担いで、

血で汚れた槍を携えたシシャモと共に歩いてきた。


 「危うく、殺されるところだった。ありがとよ。」

 

 こちらまで来るとニッキは、卵とシシャモに向かって皮肉たっぷりに嘲笑うと、

二人の前に気絶したラヒムを乱暴に置いた。


 「助かっただけ、ありがたいと思えよ。」

 「知るか。お前らの誤射で死ぬより、あの女に殺された方が幾分かマシだ。」

 

 ニッキは不満な顔で腕を組み、崩れ落ちた色々な意味で一層赤くなった詩人を見た。

手にはリュートを抱き、死体の周りには血に染まった衣服などが散乱している。

不満そうな彼女に何故こんなところにいたのかと、卵が聞くと、

彼女は先ほど見つけた宝箱から、今までの過程を簡単に話した。

それを聞くと卵は、少々渋い顔になった。

 

 「雑貨屋の店員が言っていた通り、イカれていたみたいだな。」

 「・・店員?何の話だよ。」

 「あぁお前には関係ない話だ。」

 「なんだよ。気になるじゃないか。」


 詩人を殺す依頼についてニッキに話すと、

分け前がどうこう言いだすかもしれない。

これ以上、金が無くなるのは御免だった。


「しかし、なんで・・・。」

「考えるなよ。面倒臭いことになる。」


 何故、詩人が宝箱に血痕の付いた衣服を仕舞い込み、隠して。

それを見つけた二人を殺そうとしたのかはわからないが、

別に自分らは余所者よそものなのだから、

報酬さえ貰えれば、詮索する必要は無いだろうと制した。

 


 血に染まった路地裏を4人は後にした。

通路にはロストしたものの、異臭と異物に混じって、

まだ詩人の死体が残っている。

 『Lamia?』の路地裏はどこの町や村でも、大体こんな感じだ。


大分更新に日が空いてしまい申し訳ないです。

長々と詩人の村編を続けましたが、次回が最後で、また新しい話が始まります。

もっと話の構成を上手くできるように頑張りたいところです。

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