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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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55話 詩人の村⑨

 彼女が手にしているのは手頃な石だ。

大きすぎず小さすぎず、手にちょうどよく収まっている。

別に無理に開錠を試みる必要はなかったのだ。

物事とは意外と単純なものなのだと、

彼女はその石で見事に南京錠を叩き割って見せた。


 「開いたぜ。」


 そういうとすぐさま彼女は思い切って、

宝箱の蓋を勢いよく開けた。

村に何故おいてあるのかは知らないが、

多分この宝箱は大方キャラの仮倉庫のようなものだと、

ラヒムは傍らで考えていた。

このゲーム内では家などの建築物を建てることができ、

その中に家具などを設置して装飾することができるのだが、

家というのは中々金がかかるもので、

建てたら経てたで村や町の組合に、

金を納めなくてはいけない場合が多い。

森の奥地や荒野にひっそりと建てることもできるが、

そんな家や小屋などラヒムのような者達に、

襲ってくださいと言っているようなものだ。

その為、むしろ家を建ててもメリットがさほどないので、

大半のキャラはこのように重たい荷物ではあるが、

馬車などに乗せれば移動させることができる、

宝箱を重宝したりするのだ。


 「何が入ってるかなぁ~」


 と楽しそうに彼女は丸太のような腕を、

宝箱の中身に突っ込んで中を引っ掻き回している。

ラヒムも中を漁りたかったが、

宝箱を見つけたのも開錠したのも彼女の功績なのだから、

自分は何も分け前が無いのではないだろうかと、

彼は今更になって気付いた。


 「なぁ、俺の取り分はあるのか?」


 一応彼女に聞いてみると、

ニッキの奴は少し面倒臭そうな顔をして、

適当に宝箱の中身を見もせずに、一つ掴んでラヒムに投げた。

いきなり彼女が投げてきたので取り落としそうになったが、

なんとか受け取った。

ニッキは彼が投げた物を手に取るのを見ると、

また宝箱の中に腕を突っ込み始めた。


 「取っときな。」

 「・・・おい。」

 「なんだよ。ラヒムは何もしてねぇだろーが、それで充分だろ。」

 「そうじゃねぇよ!投げたもん、見てみろ。」


 ニッキは当初、なんか安っぽいものでも当たったのだろうと、

相手にしなかったが、しつこくラヒムが見ろと五月蠅いので、

仕方なく振り向いて見てやった。

 ラヒムの手に握られていたのは安っぽい衣服だった。

なんだそんな事かと、呆れて彼女は目を宝箱に再び戻そうとしたが、

ふと、その衣服のおかしい点に気付いた。

生地は白く地味でそこらの村人が着るような服なのだが、

ラヒムが手にしている部分から少し視線を下にずらすと、

赤い斑点模様が付着していた。

いや、そんな生易しいものではない。

赤い斑点はよく見ると生地の全体に散らばるように付着していて、

なんだか嫌な予感がニッキの脳裏に走るのを察したのか、

ラヒムは持っていた衣服を少し広げて、

何か鋭利な物に刺されてぽっかりと空いた穴と、

その穴の周りにまるで液体が飛び散ったかのような、

血の模様を見せた。



 「中々来ないな。」


 村の広場に置かれていた木箱に、

卵とシシャモ バックスの3人が腰かけている。

傍から見れば、ローブを着込んだ男と緑色をした皮鎧の男の二人は、

まだ十分に多少の武装をした冒険者や旅人に見えなくもない。

だが、問題は木箱の端っこに腰を置いている。

猛犬を模した甲冑を全身に着込み、

クロスボウを力強く握りしめている男だ。

温度差と言えばいいのか雰囲気と言えばいいのか、

自分とシシャモの二人とは明らかに違うものを感じ、

その卵の傍らでバックスは悩んでいたが、

その違いについて答えは出そうにない。


 「・・・あの・・卵・・さんと呼べばいいでしょうか?」

 「あっ?・・・あぁ別に構わねぇよ。」

 

 少々腰を低くしてバックスが卵に話しかけると、

彼はチラッとこちらを見たが、またすぐに視線を前に戻した。

どうやら、彼は少し神経質になっているのかもしれない。

先程シシャモさんがこの依頼は罠かもしれないという発言に、

そんな気にしていないように見えたが、

実際のところ結構、考え込んでいるのかもしれない。


 バックスはこの二人について、ろくに知らないが、

以前にフレークに二人の事を聞いたことがあるのを、

彼は少し思い出した。

確かフレークが言うようには、

3年前に騎士団の本部で相当暴れたらしい。

原因が何かは未だに知らないが、そのせいで本部は大きい損壊を被り、

現在は廃墟となっている話だ。

しかも、当時、総大将であった騎士団長も彼らに討ち取られ、

混乱はより一層酷くなり、一時的に騎士団は崩壊したらしい。

その後、転生した総大将がまた新たに組織を作るという話を1・2年前に聞いたが、

それが成就する前に自分とフレークは辞めさせられ、

その後本部の残りなどと再編成したと、

最近まで所属していたニッキに聞いたことを思い出した。


 もう一度、バックスは横の二人を眺めてみたが、

何処をどう見てもどこにでもいるようなゴロツキの類にしか見えなかった。

フレークはきっと彼らを、相当買い被っているのだろう。

そうでなければ、4年前に騎士団を一時的に崩壊させたような連中が、

大女とはいえ、ニッキのような奴に簡単に投げ飛ばされるとも思えない。

きっと何かの噂話に尾ひれでも付きすぎたのだろうと、

バックスは心の中で納得した。



 「なんだよ、これ。」


 ラヒムの手にした血が大量に付着した衣服から、

ニッキは目を離せなくなっていた。

こんなようなものをつい先日見たばかりだった。

あれは森の中で女が倒れていた馬車の横に、

転がっていたような肉塊のようなものだ。

何故、血痕が残るのだろう。


 「他にも見てみた方がいいよ。」

 「そうだな・・・。」


 とラヒムに言われ、ニッキは恐る恐る宝箱の中を探っては物を取り出してみた。

しばらくの間宝箱の中身を取り出していくと、

どれもこれも、切り傷や血痕が大量に残った衣服や装飾品ばかりだった。

それも一人だけの荷物ではないらしい。上着やズボン、

スカートなど、対になるような物を数えてみれば十数人ほどの衣服が出てきた。

それをざっと広げてみて、

その何とも言えぬ異様さに二人は顔を見合わせた。


 「これは一体どういう事だよ?」

 「俺が知るもんか。・・・だが、なんかやばい気がしてきた。」


 こうも酷い有様ではこの衣服はとてもじゃないが、

売り物になりそうにはなかった。となれば、

中の物をそっと宝箱の中へ戻しておきたいが、

鍵を見事に破壊してしまっては意味がないだろう。

どうしたものかと二人が頭を悩まし始めると、

今まで宝箱に夢中で背後の警戒がおろそかになっていたのか、

ふと後ろから声がかかった。


 「そこで何をしているのですか?」


 驚いて二人はその声のした方を見ると、

路地裏の入り口に先ほどの吟遊詩人が立っていた。


 彼女が身に纏っている赤い衣服は、

よく見ると宝箱の衣服の血痕と同じような色だった。


 


最近、中々忙しいです。

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