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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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53話 詩人の村⑦

 「おい・・・、何も俺はお前が誰を殺しても、ああだこうだ言う気はないけどな。何も別の依頼やってる最中にやることはないだろ?」

 

 シシャモは頭を面倒臭そうに掻きながら、卵と向かい合った。


 「そもそも、なんであの女をロストさせる必要があるんだよ?あの店員は」

 「あ~・・・ちょっと待ってろ過去ログを見るからよ。」


 先ほど聞き流してしまった店員の一連のチャットを見ながら、

井出は面倒臭そうに、それをまたシシャモらにわかるように割愛して文に書いて、

チャット欄に打ち込んだ。


 「なんかあの店員は最初村人が減った理由がどうとか言ってたよな。」

 「?あぁ、確かになんかそんなこと言ってたな。有名な詩人が減ったとこかどうとか、それがあの女とどう関係するんだよ?」


 事情を知らないもののバックスは、

横槍を入れる訳でもなく黙って聞いていた。

ラヒムあたりなら馬鹿の一つ覚えの様に、

すぐに疑問符を打ち出すところだ。


 「それなんだよ。あの店員が言うようには、あの女が出てきてから村人が減り始めたそうだぜ。」

 「・・・じゃあなんだ?その女が村人を・・・なんだ。追い出したとでも?」

 「当人はそう信じ込んでいるみたいだな。」

 「まともな姿して、あの店員も相当イカレテいるようだな。」


 シシャモは呆れたといわんばかりに溜息をついて、

雑貨屋を一瞥いちべつすると卵に向き直った。


 「けどもまぁ、ああも毎度毎度演奏し終わるとネチネチ来るもんだから、嫌になってくるのかもな。」

 「毎度?旅人がそんなしょっちゅう来るのか?」

 「いや、誰もいなくても定期的に演奏しているらしいぞ。」

 「・・・。」


 確かに店員のいう事が過去ログの通り本当ならば、

確かにうっとうしく感じるし、これといった理由もなくゴロツキである卵に、

ロストを依頼する気持ちがわからないでもない。

別に現実で誰かの命を奪うって訳じゃない。

だが、モラル的にはどちらにしろ好ましい事ではないだろう。

しかし、そんな事いちいち気にしていては、追剥ぎなどできるものじゃない。


 「・・・で、本当に殺すのか?」

 「前金も貰っちまったしな、クロスボウ使えば一発さ。」


 そう言って卵は自慢げに先ほど代金も戻り、

無料で手に入れた、クロスボウを構えてみせた。


 「しかし、その詩人の女性が原因って確証はないのでしょう?」


 ここでバックスが少し不満げな声を上げた。

少々、元ではあるが、副団長の身分にあった彼には納得しかねるかもしれない。

だが、そんな彼の声を聞きながら、

卵は慣れた手つきでボルトの装填を始めた。

そしてすぐにその作業を終えると、

クロスボウを彼に向けて素早く構えた。


 「問題はそこじゃねぇ。金が貰えるかって貰えないかってところが肝心なんだよ。」

 「しかし、貴方も以前は騎士だったのでしょう?」

 「騎士だからなんだって言うんだ。横にいるシシャモも同類だぜ。」

 「私が言いたいのは、金の為に無抵抗の女性を射殺そうとするあなたの行動の事ですよ。」


 彼は女装のせいで辞めさせられた癖に、

変なこと言うものだと卵はポカンとした。

騎士とは名ばかりの実情は追いはぎ組合とさほど変わらないものなのだが、

彼の場合は多少『騎士道』のようなものを重んじる気があったとは、

少々意外だった。


 「抵抗してきたら、いいんだな?」

 「屁理屈はやめてくださいよ。」

 「悪かったよ。ほら、別に独り占めしようって訳じゃねぇんだ。」


 そういうと卵はシシャモとバックスの二人に、前金である銀貨を手渡した。

そこまで多い額ではないが、あの店員にしては頑張った方だろう。

シシャモは静かに銀貨袋を受け取り、

てっきりバックスは何か文句でも言うと思ったが、


 「わかればいいんですよ。」


 と普通に懐に押し込んだ。




 「なぁニッキ。あんたさっき村の外で待っているって事じゃなかったか?」


 村の入り口で小柄な男女二人と、対照的な大柄な女が立ち話をしていた。

気弱そうな少女は小柄な男の背中に隠れているが、

小柄な男は自分よりも遥かに大柄な女を、臆せずに問い詰めていた。


 「いやぁ・・・つい、なんか村から音楽が聞こえてきたもので何事かなぁって・・・。」

 「色々とあんたは外見に合わないことばかりするんだな。」


 プレイヤーがどのような人物かそれなりに知っているラヒムにとっては、

これほどひどいギャップを持っているキャラも、相当珍しいと感じていた。


 「・・・まぁそれは置いとくとしても。一緒にいたバックスって人は?」


 彼女のお守りの様な存在である、彼はそれなら一体何処にいるのだろう。

まさか、一緒に音楽を聞きに来るほど、

間抜けそうなキャラには見えなかったのだが


 「・・・あっ」


 彼女は今やっと気付きましたと言わんばかりの顔をして、

辺りを見回した。勿論バックスさんはいない。

そんな彼女を見ておかしかったのか、

ラヒムの背中に隠れていたユエはクスッと笑ったが、 

それに気付いたニッキに睨まれると、慌ててまたラヒムの背中に隠れた。


 「おい、脅かすなよ。」 

 

 今度は少しラヒムがニッキを睨むと、彼女は少したじろぎ、

面白くなさそうにそっぽを向いた。

しかし、しばらくしてもニッキは向いたそっぽから顔を動かさない。

意固地な奴だと、ラヒムは相手にしないでその場に座ろうとすると、

彼女は急に彼の体を摘んで片手で持ち上げた。

宙にいきなり浮いた体に少し驚きながらも、

すぐに下ろすように彼女に怒鳴るが、

返事の代わりに彼女は、指をさした。

一体何事かと思い、その方向をラヒムも眺めてみる。



「・・・その金であんた、なんか得物でも買いなよ。」


 と懐に金を普通に仕舞い込んで、黙りこくったバックスに卵が言った。

いい加減にみすぼらしい装備のままでも困る。

その金で適当な装備でも見繕えば良いのではないかと続けると、

彼は黙って頷いて雑貨屋に向かっていった。


 しばらくすると、今までのボロの衣服とは、

打って変わった姿のバックスが戻ってきた。

あの雑貨屋に置いてある品物はどれもこれも、

価格をいやに水増ししたようなものばかりだが、

その中でもできる限り良品を見定めてきたらしい。

その証拠に腰に吊るした銀貨袋はまだ大分膨らみがある。


 ゆったりとした薄い灰色のローブを纏い、

腰には装飾などは一切施されていない、細見の長剣が差されている。

それと肩から掛ける型の大きめのポーチを購入したようだった。


 「皮鎧は買わなかったのか」

 

 とシシャモが傍から不思議そうに聞いた。

バックスの得物は今まで短剣や棍棒であったのだから、

もう少し前衛に必要な鎧を買うものとばかりに思っていたからだ。

それに対してバックスは


 「はい、鎧の類は昔から苦手なんですよ。重いですし、それに私は貴方たちほど筋力に自身のあるキャラではありませんからね。」

 

 と言った。

それについては個人の好き好みもあるわけだし、

それ以上とやかく言うのも悪いと思い、

卵もシシャモも何も言わなかった。

これで、バックスの装備は整ったが、

まだ一人残っていたことを卵が思い出して、

彼に問いかけた。


 「そういえば、ニッキとか言ったあいつも装備を整えた方がいいんじゃないか?」

 「いえ、ニッキさんには必要ありませんよ。」

 「なんでだ?」

 「彼女は肉体そのものが武器と防具を、兼ねているようなものですからね。」


 そうバックスが事もなげに言うと、

森での出来事を思い出し、とても納得した。



早く涼しくなーれっ

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