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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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48話 詩人の村②

 村は近づくにつれて、よく見えてきた。

村の周りは先日に立ち寄った集落よりも塀が低い。

いや、塀というよりあれでは柵と言った方が正しいだろう。

民家か商店かはここからではわからないが、

何軒か建築物が建っているのが見える。

村の入り口も見えたのだが、門番らしい人影は確認できない。


 外敵に対しての防御に対しては意識が薄いようだ。

しかし、元々旅人もさほど通らなそうな場所だ。

さほど意識がないのも当然だろう。

下手をすると森賊とも関係のある村なのかもしれない。

森にも近く、盗品などの取引などもあるだろう。

その点については先日の集落とさほど変わらない。

 だが、問題は村に森賊がいるかもしれないということで、

森であんなに暴れてしまったのだから、卵やシシャモはともかくとして、

ニッキとバックスについては完全に広まっていると考えていい。

となれば、二人には村の外で待機してもらった方がいいだろう。


 そんなことを考え、早速二人に掛け合ってみた。

しかし、バックスは納得して道の傍らの石に腰を下ろして待機することにしたが、

どうもニッキの方が納得してくれない。

何故だか知らないが、

好奇心の強い奴のようで、どうしても村を見て回りたいと主張する。


 「一体なんなんだよ コイツは・・・」

 「変なとこだけ女の子らしさがありますね。」

 「やめろ。気持ちわりぃ・・・」


 外見はどうにも少女などよりは恐ろしくかけ離れているというのに、

心だけはそうしていたいのかどうかは知らないが、

うっとうしいニッキに辟易して、彼女を誘った張本人であるラヒムに愚痴た。

 だが、そんな彼女もバックスの奴がたしなめると、

黙っていう事を聞き、彼と同じく傍らの石に腰を下ろした。


 「すみませんね」


 とにこやかにバックスが頭を下げた。

お前は彼女の保護者か何かなのかと聞きたくなるような状況だが、

やっぱり行きたいと大女がほざき始める前に、村へと急ぐことにした。


 辺りには強い陽の光が射し、甲冑を着込んでいる卵には辛い。

どこか適当な日陰にでも入りたいが、今は我慢するしかなかった。

先ほどはニッキの奴がどうとか言ったが、

今は後ろで妙にイチャイチャしている二人もどうかしていると感じる。


 「なぁ、卵よぉ俺思ったんだけどさ」

 「あ?」

 「あの女ってネカマじゃねぇのかな。」


 とそんなことを専用チャットでシシャモが、

後ろの二人を後目しりめで眺めながら、話しかけてきた。

卵から言わせればシシャモ自身も『ネナベ』と言うやつではないかと思うが、

本人にその自覚はないようだった。


 「だったらどうしたんだよ?」

 「いや・・・もしそうだったらなんか・・・なぁ」

 

 シシャモが何を言いたいのかはなんとなくわかる。

だが、ユエがネカマであるのかどうかの確証は何もないし、

仮にあったとしてもそれをラヒムに教えるつもりもない。

彼らは架空の物を楽しんでいるのだ。

それを邪魔して一体なんになるのだろう。


 「気にするなよ。・・・あと少しだぞ」


 少し顔をしかめたシシャモを見ながら、卵は村の入り口を指差した。

先ほどより近づいたのでよく見えるが、やはり門番らしい者は見えない。

いや、それどころか柵の向こうに立ち並ぶ建築物の合間にも人影は見えなかった。

どうやら相当ログインしているプレイヤーの少ない村の様だ。

別にそこまで珍しいことじゃない、

バストロクのような都市と比べると、辺境の村なんてこんなものだ。

人口が都市に集中して村の人口は減る、

その点については現実もゲームも変わらないというのは、

皮肉だと思いながら卵等は村へ足を踏み入れた。


 村は一本道を囲むように建築物が立ち並んでいる。

宿場町のような形をとっているが、

人影が見えないところを見ると、限界集落と言ってもいいぐらいだ。

だが、今のところ村人が一人も見ないというのは幾らなんでもおかしい。

まだいちゃついている二人を余所にシシャモと卵は辺りを見回すが、

人がいないというのに廃墟らしさを見せない小奇麗な小屋などが、

不気味なほど静かに建っているだけだった。


異様な静かさを醸し出す村の光景を眺めながら、

井出はまだ痛む腹をさすりながら思案し始めた。

キーを叩いてキャラを前進させて、カメラを僅かに移動させ、

見逃したところはないかと確認してみる。

だが、人影は見えない。

本当に誰もログインしていないのかもしれない。

そう思うと少々良からぬことが思いつくのが人間というやつで、

誰もログインしていない村に、

追いはぎ組合に所属しているようなキャラが来たら何をするか、

それは獅子の入った檻に兎を投げ込めばどうなるかという問いと同じように簡単だ。

だが、今は依頼を引き受けている身だ。

残念ながら略奪に勤しむ時間はない。

せっかくの良い場所なのにと、悔しそうに卵は舌打ちをした。


 「驚いたな。門番すらいねぇとはな。」

 「シシャモ、ここに住んだらどうだ?門番好きだろ?」

 「ぬかせ」


 シシャモと冗談を言い合いながらも村の中を探索することにした。

後ろにいたカップルは人気が無いことをいいことに、

どこかへ楽しそうにフラフラと行ってしまった。

護衛対象が何処かへ行ってしまうかもしれないが、

連れのラヒムを信用することにして放っておくことにした。

それに文で表現するにも青臭い二人の会話文を見るのは、

卵もシシャモも辛いものがあった。

 

 しばらく村を探索すると、雑貨屋と思わしき小屋が見えた。

カウンターを路上に向けて、そのカウンターの上に品物を乗せている。

店員らしき人影は見えなかったが、その雑貨屋を見つけた卵の目をひいたのは、

カウンターの上に乗せられた、

汎用的でこのゲーム内で大量に流通しているクロスボウであった。

追いはぎに盗賊や傭兵、旅人だって使用することだってある。

耐久性威力共に信頼できる飛び道具であり、

しかも、先日に卵が騎士を殴打して壊してしまったクロスボウと、

同じ形をしていた。

柄にもなく卵はそのカウンターに小走りで近づいて、

クロスボウを早速手に取ってみた。

ゲームなので質感を味わえる訳はないのだが、

感覚的に手からまるで木製品独特の温もりが、

伝わってくるような気がした。

ピックも悪くはないが、

やはり飛び道具が良いと卵はそのままクロスボウを背中にしょいこんだ。


 「いいだろ?別に誰もいないんだ。」


 クロスボウを自慢げにシシャモに見せながら言ったが、

彼はなぜか首を横に振った。


 「なんだよ。いいじゃねぇか一つぐらい。別に。」


 不満そうに卵が睨むが、彼は『察しろ』というような顔をする。

だが、一体なんのことかわからない。

次の瞬間何か小さいものが、卵の兜に当たって音を立て弾けた。

いきなりの事だったので、一瞬何が起きたのかわからなかったが、

すぐさま何かが飛んできた方向へ頭を向けた。


 「・・・たかだか一つでも大事な商品なんですけどね。」


 と、カウンターの奥から声が聞こえた。

訝しげに目を凝らすと小さい椅子に腰かけた小柄な人影が見える。

小柄な人影は椅子から腰を下ろすと、こちらにゆっくりと向かってきた。

そして陽の光があたる場所まで来ると、

万引き紛いの事をした卵に、また何かを投げつけてきた。

どうやら先ほど投げつけてきたのは何かの木の実らしく、

実は卵の顔面に命中し果汁が弾けて、彼はうめき声をあげた。


 「第一村人発見だな」

 

 と木の実をぶつけられ呻いている卵を、

愉快そうにシシャモは見下ろした。


2度と次回予告は書かないっ

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