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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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43話 小屋の中

3人を素手で殺した彼女は、

戦闘の際に発生する異様な興奮状態に身を預けながら、

仲間が殺され戦慄し逃げていった森賊たちを追撃しようと、奥のドアに手をかけた。

だが、ドアノブをいくらひねっても、

戸を押しても引いてもドアは開かない。

どうやらドアの向こう側で森賊達が素早くバリケードを設置したようだった。

シャラ臭い と一言憎々しげにニッキは言い捨てると、

彼女はありったけの力でドアにタックルを食らわして、

ドアもバリケードも吹っ飛ばし、奥の部屋へと侵入した。

戸やバリケードが壊され、日頃から掃除もしていなかったせいか粉塵が舞い、

その中から現れたニッキを見た森賊達は、

まるで彼女が鬼神のように思えたのだった。


 

 そろそろ深夜0時を回ろうとしている時計を眺めながら、

画面の前で井出は少々憂鬱ゆううつな気分になっていた。

森の中でユエを探し始めてからもう2時間ほど経過していたからだ。


 何かこう森賊でも襲ってくれば張り合いでもあるのだが、

どうやら今晩は休業しているらしく、全く襲いかかってくる気配がない。

当初のうちはラヒムがもっともやる気を出していたのだが、

先程用事を思い出したと言ってログアウトしてしまった。

あれほどまで搜索にやる気を出していたのだから、

本当に用事でも入ったのであろうが、

最も躍起になっている奴に抜けられるのは痛手だった。

今ではやる気が二人共低い方ではあるがシシャモが先頭に立って、

カンテラを持って自分らを照らしている。

明日も仕事がある点は井出もシシャモのプレイヤーである吉沢も同じではあるが、

自営業のように少々気が楽な点がある分、

プレイ時間に比較的吉沢の方に余裕があった。


「なぁ今何か聞こえなかったか?」


 とシシャモが急にこちらを振り向いた。

卵は何も聞こえなかった。動物の鳴き声などは時々聞こえるものだが、

それ以外不自然な音は聞いていない。

 何も とぶっきらぼうに卵が答えると、

シシャモは ならいい とまたカンテラを照らして、前進を始めた。

しかし、卵の返答に納得しなかったらしく


「猛獣地味た声がしたんだけどなぁ」


 とこぼした。



 奥の部屋はさほど広くもなく、

牢の前に見張りが座っていたような椅子が6つほどと少し大きいテーブルがあり、

先程連れてこられた時には意識しなかったが、

きっとテーブルの上で軽い賭博でもするのだろう。

サイコロやカードが放置されている。

そして、そのテーブルの下にはバリケードとドアの残骸が散らかり、

玄関となるドアに森賊が慌てて逃げ出そうと群がっている。

しかし、ドアを突き破ってきた大女を見ると、

最早逃げられぬと悟ったらしく、

必死の形相で二人の森賊が斬りかかってきた。

一人は長剣でニッキを刺そうと突進し、

もう一人は遠巻きに仕留めようというのか、

懐から投げナイフを取り出して、彼女に狙いを定める。

長剣を持った森賊より先に投げることができればよかったのだろうが、

投げナイフを持った森賊はさほど投擲術に精通していないと見えた。


 怒号を上げて突っ込んでくる森賊を軽く横にかわし、

無防備な頭上に容赦なく肘鉄を食らわす。

頭が割るような音が室内に響き渡り、長剣を強く握ったまま森族は崩れた。

仲間が崩れる様を目の当たりにしながらも健気に抵抗しようと、

投げナイフを持った森賊は直様ニッキ目掛けて投げようとしたのだが、

狭い室内で飛び道具を使うのは下策であり、

森賊の手からナイフが放たれるより先に、

森賊の頭が胴体からズレる方が若干早かった。

一瞬のうちに目の前で仲間をいとも簡単に殺されたというのに、

一人残された例の見張りの森賊はこんな時でも落ち着き払っていた。

ニッキは直様出口のドアに手をかけていた見張りの森賊に蹴りをお見舞いした。

見張りの男は最後まで落ち着いていた。


 怒号と悲鳴、そして何かが壊れる音が鳴り止むと、

牢屋へ繋がるドアがあった場所から、

バックスとユエが恐る恐る顔を出して部屋の惨状を見ていた。


「終わりましたよ。バックス殿」


 返り血に身を染めた大女がこちらを見ると、胸を張って報告した。

よくもまぁここまでむごく殺せるものだと、バックスはため息をついた。

顔面を本人でも判別できないほどに無茶苦茶にさせた拳や、

頭が胴体から垂れ下がるような一撃を平気で繰り出し、

牢の部屋もここもあちらこちらに血が飛び交い、赤くなっていた。

それに対してユエはバックスの横で酷く怯えていた。

無理もないだろうが、これはゲームだ。

其処ら辺の区別は付けていただきたいものだと、

バックスはユエにその場に待たせて、

凄惨な部屋の中で元上官に直立不動の姿勢をとるニッキの前まで歩いて行った。

機嫌を損ねて自分がこの哀れな森賊達の様にならない為にも、

正直な気持ちもあるが、

この大女を褒めておいたほうがいいとバックスは思った。


「ご苦労さまでした。見事なものですね。」

「あっありがとうございます!」


 褒められるとニッキは顔を真っ赤にして、慌てふためいている。

不細工とは口が裂けても言えないが、

少なくとも返り血で染まった女性を美人と言うのには、

いささか無理があるとバックスは思った。


「なぁ、やっぱりなんか声がしたぞ。」

「・・・そうだな、やっぱりなんか声がしたな。」

  

 また、すぐにシシャモが卵を見て、今度は自信ありげに言った。

今度は卵の耳にも確かに遠くからではあるが、

人のものとは思えないような声が聞こえた。

昨晩には犬の鳴き声で迷惑させられたと思えば、今度はなんだろうか。

本当に猛獣の類だろうか、今までこのゲームでそんなモノは見たためしがないが、

ここのところ異様に図体の大きいキャラや、

人の体を食いちぎるようなキャラなど異常な事ばかり起きるので、

別にそこまで不思議というわけでもないが不気味ではある。

だが、いくら異常といえども、

それは全て今卵が持っているピックにことごとく粉砕されたのだ。

何もそこまで恐れる必要はない。


 声のした方へ二人が歩いていくと、森の中に小屋が建っているのが見えた。

灯りが窓から漏れて、暗い森をほのかに照らしている。

「この森に猟師や樵の小屋があるとも思えないよな。」

「あぁ十中八九森賊のだろうな。」


 森は森賊の術中にあり、猟師や樵がおいそれと入れる場所ではない。

できたら避けて進みたいが、依頼内容がユエの捜索であることから、

森をしらみつぶしに探さねばならず、

それはあの小屋とて例外ではなかった。

まず、二人はどちらが先にあの小屋に入るかを相談し始めた。

最初にあの小屋へ侵入するのには多くの危険が伴い、

軽装の俺にはとても無理だとシシャモは嫌がった為、

仕方なく卵が重装である点を活かし先に小屋へ入る事にした。

一斉に飛び込んでも良かったが、それをするには小屋のドアは少々小さく、

長身のシシャモにはやや難があった。


 大きな音を立てて小屋の中にいるであろう森賊達にバレないよう、

慎重に卵がドアまで近づいていき、その数歩後ろでシシャモが槍を構える。

ドアの前までたどり着くと卵はピックを取り出し、

ドアを蹴破って踏み込もうと、勢い良く足を蹴り込んだ。


 だが、足がドアを蹴破ることはなかった。

蹴破ろうとする寸前にドアが開き、そして直後に痛々しい悲鳴が響き渡る。

勢いそのままに繰り出された蹴りは他人の足に直撃していた。

その足は何も防具を身につけておらず、

直接蹴りの衝撃が伝わってしまったことだろう。

卵は思っていた結果ではなかったが、

森賊の一人にダメージを与えることが出来たと思い、

直様ピックを振り上げ、追い討ちをかけようとした。

しかし、ピックを振りかぶった途端に卵の体は宙に浮いた。

そして、ドアから吹き飛ばされるような形で地面に叩きつけられた。

シシャモは吹っ飛ばされた卵には目もくれず、

いきなり現れた脅威に槍の穂先を向け対峙した。


 穂先の向こうには卵に弁慶の泣き所に蹴りを入れられ、

少々目に涙を潤ませつつも、全身を真っ赤な血に染めた大女が立っていた。


夏といえば海!けどこの小説に海は出ません

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