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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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42話 森と牢

 体術使いという単語を卵が用いたが、

それは文字通り素手などで戦う者達を指す言葉で、

得物を用いるわけではないので遥かに鍛錬を積むのには安上がりなのだが、

相当長い鍛錬が必要で大体のプレイヤーはそれなりの実力になる前にロストしてしまうのが常だ。

 しかし、極めれば甲冑を着込んだ相手にも勝てるなどと聞いたことがあるが、

詳しいことまでは井出自身知らなかった。

確か追い剥ぎ組合にも何人か所属していたはずだが、

そんな大した連中でもないだろう。


 「いや、待て・・・・・・体術なんて上品なものじゃないかもしれない。」

 「どうした?」

 「よく見ろよ 強い力で折られたんだ。ただの力技さ。」


 そう言うとシシャモがまだ一応生きている森賊を乱暴に持ち上げて、

明後日の方向に向いてしまった関節を見せた。

シシャモの言うとおり関節技で折られたというよりは、

なにか強い力で無理矢理に折られた様に見えた。


「となるとただの筋肉達磨の仕業か」

「だろうな、だがなんでまた3~4年前ぐらいならまだしも、甲冑とか武器が普及した今頃、肉体技なんて使うんだろうな。」

「山篭りでもしてたのかもな」


 軽装の森賊相手なら有効とまではいかないが、対抗する可能だろう。

だが、頭のいい手段とは言えない。

きっと得物などを何らかの理由で無くしてしまい、

この様に徒手空拳としゅくうけんで挑むしかなかったのだろうと、

二人は結論づけた。

こんな森の中で得物も無いとは可哀想な奴だな と卵は呟いたが、

まさか、その徒手空拳の主であるキャラの甲冑を拾って着込んでいるのは、

卵自身知る由もなかった。



 しばらくの間、牢の中で以前バックスが所属した騎士団にいたというニッキと名乗った筋肉女の土下座は続いた。

しかし、このままにしておくわけにもいかないので、

バックスは少々戸惑いながらも面を上げてくれとニッキに言うと、

彼女は恐る恐る面を上げた。

その表情には先程までの荒々しいモノはなく、

外見は粗雑ではあるが、

顔には番犬騎士らしい従順な犬のような顔になっていた。


「元とはいえ、同輩に会えるのは嬉しいのですが、一体あなたはどの様な経緯でこの牢に入れられたのですか?」


 とバックスも先ほどより態度を少し変えて、

ニッキと接することにした。彼女は先程先日まで番犬騎士団に所属していたと言った。

となると自分と同じように何か間違いでも犯したのだろう。

しかも、本来女人禁制である騎士団であるにもかかわらず、

女性キャラを使用しているということは、

一度ロストして転生したと考えられる。

となれば敵前逃亡や味方殺しなどの罪だろう。

しかし、バックスが騎士団を辞めさせられたのは大分前の事であったせいか、

生憎このニッキと言う所属騎士の名は知らなかった。

自分が辞めさせられた後に騎士団の方針が大きく変わったとも考えられる。

ただ偽っているとも思えない、

騎士の名を騙っても特に何か特があるわけないのでもないのだ。


 バックスにここに来るまでの経緯を聞かれ、ニッキは洗いざらい話した。

峠での戦闘から、森でのことも包み隠さずに話した。

峠ではバックスも参戦していたので、姿を見ていたかもしれないが、

あんな乱戦の中で一人だけの顔を注視出来るわけもない。

だが、そんな彼女の話の中で一番気になったのは、

ディンゴの兜を被った切込隊長のことだった。

確か騎士団創世記からいる古参騎士だったが、腕はお世辞にも良いとは言えず、

切り込み隊はおろか事務処理などの仕事をしていたキャラだったはずだ。

そんな奴が切込隊長とは笑わせてくれるとバックスは微笑を浮かべたが、

話を続けるニッキの言葉を聞くうちに笑ってもいられなくなった。


 聞くところによるとソイツは人の腕を噛みちぎったらしい。

一体どの様なことをしたらそんな口になったのかはわからないが、

バックスは自分が辞めた後の騎士団は、

そこまで変わってしまったのかと不安になってきた。


「もういい加減にそのアイツに殺されたときはゲームをやめようと思ったのですが、偶然知り合いに誘われて、今こうして転生してこのゲームに戻ってきた次第なのです。」


 とニッキは今までの事を語り終えると静かに立ち上がり、

これからどうするのかとバックスに聞いてきた。

どうするも何もこう牢の中ではどうしようもない と答えると、

彼女はバックスに向かってニコリと笑い、鉄格子を向いた。

バックスはなんだか悪い予感がして、何をするのかと聞こうとしたが、

既に手遅れだった。


 一瞬ニッキの体が震え、次には丸太のような腕が鉄格子をつかみ、

彼女は雄叫びにも似た気合を発し、鉄格子に力を加え始めた。

今までずっとぼんやりしていた見張りもさすがにこれには驚いたのか、

席を立つと直様慌てて奥のドアへ走っていってしまった。

きっと仲間でも呼びに行ったのだろう。

よしたほうがいいとバックスは夢中で鉄格子を掴んでいるニッキに言ったが、

聞く耳を持たなかった。



 いい加減に森族の待ち伏せを警戒しながら、

ユエを探す事に疲れだした井出はそろそろログアウトしたいとシシャモとラヒムに言ったが、ラヒムは見つけるまで気が済まないらしく、

中々ログアウトさせてくれない。


「俺抜きで探せよ、眠いよ」

「ダメですよ卵さん。そんなこと言うと報酬貰えませんよ。」

「金より睡眠だよ」

「そんなこと言うと、おいていきますよ?」

「チェッ」


 確かに置いていかれるのは不味い。

だが、言ってこのまま見つかりもしない可能性の方が大きい捜索に、

時間をかけるのも辛かった。

ラヒムは聞く耳を持たないのでシシャモにログアウトしてもいいかと聞けば


「別に構わないけど、わざわざログインした場所まで迎にはいかないからな。」


と返ってくる始末で、仕方なく卵は舌打ちをしてぶつくさ言いながら歩き、

井出は画面の前で眠たい目をこすって意識を集中させることにした。

ろくでもない休日だと小声で井出は画面の前で呟いた。



 鉄格子は耳障りな音を立てながらまるで針金を曲げるかのように

簡単に捻じ曲げられ、バックス達が通れる程の隙間になった。


「どうです?これで牢を抜けられますよ。」


 自慢げにニッキは胸を張ってバックスに言うが、

これは事態を悪化させてしまっただけではないかと彼は思った。

そして、そう思った瞬間奥のドアが開き、

森賊が6人各々棍棒や短剣で武装して飛び出してきた。

得物など無いバックスとユエは牢の壁にへばりつくように身を引いたが、

ニッキは自らが捻じ曲げた鉄格子の隙間を抜けて、森賊達と対峙した。

先程まで4人がかりで抑えていたまるで野獣のような女が、

牢から解き放たれれば一体どうなるのか。


 一人の森賊は勇敢にも短剣を構えてニッキに襲いかかったが、

顔面に強烈な拳の一撃をくらって昏倒した。

 また一人の森賊はもう一人も森賊と二人がかりでニッキを仕留めようとしたが、

棍棒や短剣の刃が触れるよりも先に彼女の蹴りが炸裂し、

鈍い音を立て二人共その場に呻き声を上げながら崩れ落ちた。

それを見た森賊達は皆恐れおののいて、我先に逃げようとする。

だが、それを逃がすほど彼女に慈悲の心があるわけでもなく、

体をまるで動物のように素早くしならせ、森賊達に襲いかかった。


 目の前で繰り広げられる一方的な戦いにユエは恐怖したが、

バックスは騎士団を辞めさせられて以来消えていた闘志が再燃するのを感じた。


素手で瓦割るってスゴイですよね

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