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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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40話 牢の中

なんでこんなことになってしまったのかと、

薄暗い牢の中で細身の男が呟いた。

彼は薄いボロ切れの様なツギハギだらけの衣服を纏っている。

この牢に入れられる際に武器は取り上げられ、

ただでさえ貧相な姿はより一層その色を増している。


 その隣には男と同じほど貧相で小柄な少女が、

淋しげに牢の冷たい床に腰を下ろしている。

そして、時々姉の名を呟いては涙を流しては、顔を両手で覆っている。

誰も見もしないというのに臭い演技だと『バックス』は嫌気が差した。

何度か話しかけようとはしたが、泣くのに夢中のようで返事はなかった。


 思い返してみれば峠での死闘を生き残り人数が減り、

取り分が増えて自分はとても運が良かったと思ったのも束の間でこの様だ。

この森に賊がうようよいるのはよく知っていた。

だからこそ、馬車を飛ばして急いで走り抜けてしまおうとした。

その途中薄暗くて見えなかったらしく、

何か岩の様な物にあたって投げ出された。

無様に地面に叩きつけられて痛がりながら立ち上がってみれば、

目の前では依頼主であるリビの腕に何かが食いついていた。

だが、そんな状況でも彼女は何が起きているのか理解できず、

バックスと同じように投げ出された地面の上で動けないまま腕を食われている。

とてつもない悪寒がその時バックスに走り、思わず投げ出された事にしか意識が回っていない近くでうずくまっていた依頼主の妹を抱えてその場を逃げ出した。

リビの腕は既に食いちぎられかけていたので、ロストは確実だと見切りを付け、

これ以上この依頼に付き合う必要はないと判断したのだ。

だが、ユエは連れていけば少なくとも多少の報酬は払ってくれるだろうし、

駄目なら丁度良い場所で身ぐるみを剥いで殺すだけの話だった。

しかし、悪いことは続いて起こるもので、

悪寒を走らせた何か得体の知れない化物から逃げるのに必死になっていたせいか、

二人共森の中で待ち伏せしていた森賊に呆気なく捕まってしまったのだった。

殺されてしまうとまたバックスの背中を悪寒が走ったが、

森賊達はユエとバックスの姿をよく見ると急に何か良からぬ事を思いついたらしく、

得物だけを捨てさせ二人を縛り付けた。

このような時だけバックスの容姿が役立つことにとても不快に感じた。


 ふとバックスは自分も落ちぶれたものだと、

牢の小さい格子のある窓から見える月を見た。

騎士の頃は良かったと頬杖ほおづえをついて項垂うなだれる。

この『Lamia?』をプレイしだした頃は剣の鍛錬に勤しんだものだったが、

途中から上司に取り入って地位を徐々に上げていく方が面白く感じていた。

それを少々やりすぎてこのような現在に至っている。

まぁ騎士の頃の上司である『フレーク』も道連れにできたのだから、

そこまで悪くなかったかもしれない。


チンピラに落ちぶれはしたものの、

強請りや盗賊紛いの事をして今までロストを凌いできた。

だが、それもここまでだ。月をしばらく眺めたあと、

バックスは何か自害できるようなものはないかと探すことにした。

そこまで広くない牢にはヒビが入った陶器を乗せた小さいテーブルと、

座ると軋んだ音を立てる椅子、隅っこには異臭がするバケツがある。

極力バケツには近づきたくなかった。

ユエのような少女キャラをもこの様な場所に入れるということは、

森賊には最低限のマナーもないらしい。


 小一時間程かけて何か鋭利な物を探したが、中々見つからない。

陶器でも割ってその破片を使おうと試みたが、

陶器は割るとグラフィックごと跡形もなく消え去ってしまった。

こんなところだけゲームらしくしなくてもいいだろうと悪態をつくバックスを見て、

鉄格子の向こうで退屈そうに椅子に腰掛けて、安酒を傾けている見張り番の森賊は閉じ込められていることに癇癪かんしゃくを起こしたのだろうと気にもとめなかった。

だが、ずっと泣いていたユエはいい加減に苛々して、

このバックスと言う細身の優男が怒り出したと思ったようで、

より一層酷く泣き出した。


 これには参ったと何とかしてバックスはユエを宥めようとするが、

中々上手くいかない。こちらの言葉を全く聞いていないようだった。

一体どんなユーザーが操作しているのか別の意味で苛々してきそうだった。


 

 「卵さん、行けども行けども森ですね。嫌になります。」

 「そりゃ森だからな、仕方ないよ」


 なんとも間抜けな会話をしながら、

リビの妹であるユエを見つけるために3人は森の中を彷徨いていた。

しかし、ただ当てもなく森の中で少女一人を見つけるのは本当に骨が折れる作業だ。

専用チャットが通じればいいのだが、

何故なのかはわからないが先程から何度呼びかけても応答がない。

ログインはしているようだとリビは言っていたが、そんなもの信用しても仕方ない。

いい加減きっと森賊にでも襲われてロストしたのではないかとシシャモと愚痴を言い合えば、直様横からラヒムの奴がそんなことはないと突っかかってくる。

相当彼女に惚れ込んでいるようで、困ったものだと卵とシシャモの二人は当惑した。


「こんな広いとこでどうやって女一人見つければいいんだろな」

「一人だけじゃない、もう一人いる。二人だ。」

「バックスってやつだっけか?フレークの相方かなんかで元騎士とか言ってたよな。」

「胡麻するのがとても上手い奴だよ。それにあの外見だしな。」


シシャモの最後に言った言葉に対して、

卵は一瞬何を言っているのかわからなかったが、

シシャモが妙な笑みを浮かべているところを見ると察して何とも言えない気分になった。

どういうことなのかとラヒムがまた割って入ってくるが、

お前にはまだ早いとシシャモが軽くラヒムの頭を叩いた。


 

 もうバックスはユエが泣き止ませるのを諦めた。

これ以上やっても無駄だと壁に背中を当てて不貞腐れた。

そして、しばらくそうしていると妙に鉄格子の向こう側が騒がしいことに気づいた。

見張りが座っている場所より奥にあるドアの向こうから、

誰かが激しく悪態を叫んでいる。

それに対して先程からぼんやりと未だに安酒を傾けている見張りは、

肝が座っているのかただ単に鈍感なのか、多分後者だろう。

森賊に対するものであろう悪態は徐々に酷くなっていき、

ついにその悪態を叫んでいた主がドアを開けて姿を現した。


「離せよ!糞野郎っぶっころされてぇのか?!」


叫んでいたキャラは縛られてもなお、

相当力が強いのか、森賊4人が必死で取り押さえながら、

こちらの牢に向かってきた。


「別嬪さんだな おい」


とぼんやりしていた見張りがその主を見て、目をパチクリさせる。

どういう趣味をしているやつなのだろうと、バックスは主と見張りを見ながら困惑した。

そして4人が必死にその叫ぶ奴を力づくで牢の中へ押し込むと、

これ以上かかわり合いになりたくなかったのか、

そそくさとドアの方へ引っ込んでいった。


「クソッタレ」


今まさに押し込められた本人は奥に引っ込んでいった森賊に対して、

また叫ぶようにしばらく悪態を叫び続けたが、

いい加減疲れたのかその場で横になってしまった。

牢内の同居人であるバックス達には、

悪態を叫ぶ事に意識が言っていて全く気づいていないらしかった。


「良かったな、ハーレムってやつだぞ」


不意にぼんやりしていた見張りがバックスに向かって皮肉を言った。

確かに言われてみればハーレムとも言えなくもない光景かもしれないが、

生憎自分には己より遥かに背が高く、

筋肉隆々でゴリラの様な女性をそう見れる自信が無かった。


私は筋肉も好きです

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