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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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38話 まだまだ森の中

やっとサンマを説得して瓶に水を湧かせてもらい、一息ついた。

これでしばらくは大丈夫だと画面の前の井出も安心する。

また時計に目をやるとまだまだラヒム達がログインしてくるまでは時間がある、

それまでこの珍妙な魔術師と一緒というのも悲しくなってくる。


隣に腰掛けた顔色がとことん悪い魔術師は時折ときおり卵を見ては、

気味の悪い笑みを浮かべる。とてもじゃないが、

先程まで珍妙な口調で喋っていた女と同一人物とは思えないだろう。

今は両手の指を絡め合ってはぼーっとしながら、

卵と共にラヒム達がログインしてやってくるのを待っている。


「ところで・・お前 峠の騎士共を殺ったんだってな。」


突然サンマは指を絡めながら、視線は自分の手を見たままで呟いた。

何故知っているのかと卵が少し狼狽しながら聞くと、

彼は薄気味悪い笑いを含みながら答えた。


「なに、しばらく騎士共が峠道にいたものでそこの道が通れないから、旅人が大勢俺のところに流れ込んできたって事さ。 あそこはそこそこ旅人が結構行き交う場所だったからな。 旅人共はお前らが殺ってくれたものだから、大喜びだが俺は商売上がったりなんだよ。」


と最期のあたりはとても憎たらしく吐き捨てた。

薄い笑いを顔に浮かべてはいるが、内心どうやら金の話をフイにしてしまった俺達が少々憎いらしい。


「なんで俺達が殺ったと?」

「あくまでここはゲームさ、現実みたいに・・いやどちらにしろ、隠しおおせることじゃないのさ。特に俺にはな。」


とより一層薄気味笑いを強くしてサンマは言った。

確かにコイツは地獄耳と言えるほど情報通だ。多方商売相手は旅人だけではないのだろう。

とても便利な転移魔法をただ単純に旅や輸送目的だけの為に使う客の方が少ないかもしれない。

中にはきっと組合で罪を犯した連中の高飛びや、窃盗などの助けにもなる。

もしかしたら騎士の移動などにも一役買っているのかもしれない。

とすれば彼が様々な情報を知っていることは何も不思議ではなかった。


「それにな・・」


と少々もったいぶってサンマは呟きに間を置いて


「下っ端ならともかくお前らが殺ったのは騎士団の副長辺りだろ?それだけでも傭兵組合にでも行けば報奨金とか出るだろうな。」

「だから、なんでそこまで詳しく知ってるんだよ?」

「・・・『巫女攫い』が何かすればすぐにわかるのさ」


今度は意味ありげな笑みを浮かべてサンマは愉快そうに言うと、

また指を絡め始めた。もうそれからしばらくは卵が何を言ってもサンマは反応しなかった。


またそれか と画面の前で井出はため息をついた。

『巫女攫い』と別に自分らで名乗った訳ではないのだが、

何時からか他人から卵達はそう呼ばれるようになってしまった。

4年前のことだが、古参のプレイヤーの大多数はその事件を覚えている。

シシャモやサンマやフレークなどの様々なキャラがその事件に携わったのだが、

後味の悪い騒ぎだったため井出はそんな思い出したくなかった。


少々苦い思い出に浸りながら森の中で切り株に腰掛けて待っていると、

やっとラヒムがログインしてきたらしく、

茂みの中からこちらに手を振りながら現れた。

井出もそっちの方に意識がいき、苦い思い出を忘れてラヒムに手を振って返した。

だが、彼はこちらまで近づいてきてサンマの姿を見ると一瞬たじろいでしまった。

なにやらとても怪しい者を見るような目で、

多少距離を置いて卵に専用チャットを使って話してくる。


「・・すいません 卵さん 横の人は誰です?」

「誰って・・お前らが相談して呼ぶことにした・・えーと・・なんだ・・マジカル系だよ。」

「それはわかってますが・・けど・・なんかリビさんが教えてくれたアドレスのブログで写ってたキャラと違う気が・・」

「これが正体って奴だ」


彼の少し気落ちする姿を見て、

会話を見られたわけでもないのにサンマは愉快そうにラヒムをあざけり笑った。

卵はサンマの変貌を目の当たりしていたし、別段驚くわけでもなかったが、

何やら彼は淡い期待でも寄せていたらしかった。

少し同情でもしてやりたくなるが、今はそれほど親切な気にもなれなかった。


しかし、いつまでも落胆している訳にもいかずラヒムは思い出したかのように、

今度は通常チャットに切り替えた。


「卵さん 護衛者を一人追加することができましたよ。」

「おう どんな奴だよ。」


どうやらシシャモはラヒムにも護衛者を頼み込んだらしい。

ラヒムは傭兵組合を抜けた身だが、腕が立つ知り合いも多いかもしれない。

もしかしたら、ラヒムより腕が立つ奴が来るかもしれない。

少し心を躍らせ彼にどんな者なのか聞くが、

どうも彼は、はっきりとした説明をしない。

少し乱暴に問いただすと、

どうもよくわからないと言うので恒例のごとく頭を小突いた。


「仕方ないじゃないですか!だってロストしたばっかでキャラ作ってる途中だって話で・・」

「そんな適当な奴勧誘したのか?あぁ?」


未だに指を絡めて暇を潰す魔術師の前で、異種格闘技戦が繰り広げられる。

どうやら小男の方が圧倒的に不利のようだ。

小男が白目を剥きかけたあたりで、彼らの前にリビとシシャモの二人が現れた。

だが、二人共目の前で展開される一方的な試合に興味はないようで、

少し言葉を交わすと、彼女は魔術師の前で服を正してお辞儀をした。


「こんばんは 依頼したリビというものですが・・」


日頃の粗暴さが嘘のように腰を低いリビの態度に、

争っていた卵とラヒムは目を丸くして取っ組み合いをやめた。

普段は隙あらば投げナイフを投げてくるような女だ。

きっとそれほど普段の態度を変えるほど転移魔法が必要なのだろう。

バストロクへ行って一体なんの用があるのかは知らないが、

その用とは妹とするユエがいなくてもいいものなのだろうか。


ラヒムは気にするかもしれないが、卵とシシャモにとってはどうでもいいことだ。

念のためということで護衛者もラヒムの中途半端な努力の為に増えてしまったが、

転移魔法が上手くいけばバストロクに到着すれば払うと約束した報酬とはいかずとも、

そこそこの額は払ってくれるだろう。

その払われた報酬から少しその増えた護衛者に払えば問題ないだろうと、

卵は簡単に考えた。


リビとサンマは商談をしているらしく、

最初のうちはお互い紳士的な会話だったのだが、

転移魔法の代金をサンマが提示した途端に急に荒っぽくなった。

無理もないだろう。

どれほどリビが銀貨などを所持しているかは知らないが、

サンマが提示した転移魔法の代金は当初の予想を遥かに上回り、

卵等一人の報酬の3人分だったのだ。

幾らなんでも法外過ぎると先ほどの丁寧な仕草はどこへやら、

少々語気を荒くして彼女は魔術師に詰め寄るが、

こういう手合いにはなれているのだろう。

サンマは適当な言い訳でのらりくらりとリビの文句を躱し、

代金を下げることはしないようだった。


これは長くなりそうだと、卵とラヒムは二人の値段交渉を見守った。


扇風機がオーバーヒートしそうなぐらい暑いですね。

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