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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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37話 追い剥ぎ魔術師 サンマ

「鎧変えたの?」


目を輝かせて近づいてきた彼女は卵の甲冑に興味があるらしく、

ジロジロと見てくる。


「拾った」

「またまたぁ~結構凝った作りしてるよぉ~ ねぇねぇどのぐらいしたの?」


本当のことを言っているのだが信じてくれない。

まぁ追い剥ぎの身だが、まだ盗んだと言われないだけマシかもしれない。

気持ち悪いぐらいにサンマの奴は卵を観察すると、

しばらくしてやっと満足してくれたのか、

近くの腰をかけるにはちょうどいい切り株を見つけ、

そこに腰を下ろした。


「まぁ立ち話もなんだよねぇ 座りなよ☆」


一々何故語尾に☆を付けるのかは理解できないが、

喉も乾いて疲れていたので、卵もその場に腰を下ろした。


「それで・・依頼者はあんただけじゃないわよね?」

「俺も含めて6人だが・・そのうち2人が・・」


中々行方不明だとは言いにくい。

なんとか誤魔化したいが、うまい言葉も見つからなかった。


「ちょっと待ってよ 今6人って言った?」


しかしサンマが反応したのは6人の部分で、

少々狼狽した顔をして聞き返してきた。


「あぁ6人だ」

「・・そんなに大勢は無理だよ~」

「無理?どうして」

「そこまで私の魔術を都合のイイもんだと思っちゃいけないわ」


そう言うとサンマの奴は頬を膨らまして、

魔術にうとい卵にもわかるようにと説明を始めた。

そもそもサンマに言わせれば、

このゲームにおいての魔術の行使とは、

プログラムを打ち込んで実行させるような作業となんら変わりなく、

素人には詠唱がとてつもなく難解なものと思われがちだが、

実はそうではないということ。

だが唯一の問題はそのプログラムは素早く正確に打ち込まなければ、

魔術は上手く作動するどころか、

以前の自分に起こった事故の様にロストしてしまう危険があるということ。

その危険性さえかえりみずに慎重に挑めば、

大体の魔術は成功するそうなのだが、

転移魔法で6人を送るとなると詠唱がとても複雑になるらしい。

しかも一回の転移魔法を行使する事に詠唱者であるサンマも同行せねばならず、

何度も何度も対象者を送ってから6人を送るまで往復するのは、

時間が掛かりすぎて困るとサンマは告げた。


「私だってぇ慈善事業でこんなことやってるわけじゃないんだからねぇ~」

「それはわかってるが・・」

「大事なのはコレよコレ」


そう言ってサンマは親指と人差し指で丸を作って卵の前に見せた。

以前からコイツは金に汚いとは分かっていたのだが、

こうなってしまったからにはコイツを頼るほかどうしようもなかった。


「それに君たちの他にも転移魔法の予約はたくさんあるんだからさぁ~☆」

「予約制なのか?」

「そうよ~けどそれでもわざわざ時間割いて来てやったんだから、有り難く思いなさいよねぇ☆」


珍妙な口調で畳み掛けるサンマに卵は辟易へきえきするが、

つい気になっていたところを聞いてみる。


「・・それは有り難いが・・なんでそんなキャラにしたんだ?」

「この方がほいほい客がつくの~」


ブログにも記載があったが、

サンマは転移魔法などを駆使して旅人相手などに商売をしているらしい。

価格は恐ろしく高いのだが、このゲームの特性上気軽に旅などできたものではない、

その為、サンマを頼ってくる客は絶えず、嘘か本当かどうかは知らないが、

3人ほど待たせているらしい。

確かにむさ苦しい男より、少女の方がいいかもしれない。

顔の造形に大分時間を使ったのか、サンマの顔はとてもよく出来ている。

だが、追い剥ぎ組合の頃のキャラの方が個人的に好きだったと井出は思った。

確かに美男とは決して言えなかったが、

組合で世話になっていた頃のサンマのキャラは背が卵より少々高くて、

やせ細った蛇のような男だったが、瞳だけは異様にギラギラ輝いていた。

今思えばそれは魔術を使った商売に対する野心の様なモノが、

瞳の奥で光っていたのかもしれない。

ロストしてから組合の方に顔を出していないようだったが、

最近どうしていたのかと思い切って聞いてみると、

本格的な転移魔法の鍛錬が忙しくとてもじゃないが顔を出せる暇がなかったと

また珍妙な口調で答えるのだった。


「・・・そういえば水持ってないか?」


魔術の事やら最近の身の上などを話しているうちに、

喉が乾いてきてしまった。

画面の前で操作する井出は適当にまた缶コーヒーをすするが、

卵は脱水症状の危険がある。


「ん~?いいよ~」


そう言ってサンマは水の入った瓶でもポーチから出してくれるのかと思ったが、

そうではなく、彼女は自分の手を卵の前につきだして水を掬う形を作った。

勿論手のひらに水などない。


幾らなんでも巫山戯ふざけちゃいけないと、

卵が怒ろうとすると彼女は卵にウィンクをして何やら詠唱を始めた。

そしてしばらくすると、彼女の手のひらの中でまるで泉が湧いたかのように水が吹き出してきた。

これに卵が驚くと彼女はしたり顔で、転移魔法の応用だと説明した。

何も転移魔法は人を何処か目的地へ移動させるだけでなく、

物を指定の場所へ持ってくることも可能で、

寧ろそっちの方が人を動かすより遥かに容易だそうだ。


「まぁこれは自宅の井戸から持ってきた水よ~冷たくて美味しいよ~☆」

「・・・・このまま飲むのか?」

「その通り~☆早く飲んでぇ~」


そう言ってサンマは卵にさっさと水を飲めと勧めてくるが、

女の手のひらの水を飲むのもなんとも言えない気分になる。

そもそもコイツは以前までガリガリの蛇野郎だったのだから、

なんだか媚びた声音でもとても気持ち悪く感じる。


「どったの?飲まないの?」

「い・・いや・・」


そうやって卵が口篭るとサンマは苛々しながら睨みつけてくる。

だが、しばらくすると彼女は何故卵が気不味くしているのか気付いたらしく。


「あっ・・そうかぁ~わかった☆」


と顔に満面の笑を浮かべ、ニヤニヤしている。

これがコイツの客なら喜ぶのかもしれないが、卵には気持ち悪いだけだった。

だが、こちらの不満を一応わかってくれたようで、

安堵した卵は少し引きつった笑を返す。

今度は瓶にでも水を出してくれるのかと思ったが、

残念なことに卵の予想は大きく外れ、

サンマは手のひらの水を捨てるとポーチから何やら小さい紙切れを取り出し、

素早く顔に貼り付けなにやら詠唱を初めた。


なんだか嫌な予感がしながらもそれを見守っていれば、

突然紙切れは徐々にサンマを覆うように大きくなっていき、

しまいには彼女全身を包み込んでしまった。

一体何が起こったのか理解できずに卵はその場で立ちすくんで、

どうしようもなく見守っていたが、

しばらくするとサンマを覆っていた紙はさなぎの様になり、

そして亀裂ができ徐々に割れて崩れていってしまった。

口をポカンと空けてその奇妙な光景を眺めると覆われた紙の中から、

サンマが出てきた。

だが、先程とはだいぶ違った。

服装は変わらないのだが、先ほどより異様に痩せたようでローブの袖から覗く、

手は革と骨だけのようにやせ細り、

髪は長いままだが先ほどの二つに束ねた髪型ではなく、

ひどく乱れた髪型になっている。

そして顔が先程書いたような以前追い剥ぎ組合に所属していた頃の顔になっていた。


「・・こっちのほうがお前は良かったかな。悪いな、仕事上 女になっていたほうが楽なのでな」


口調まで年をだいぶ食った老人のようなものに変貌している。

いや、以前の形に戻ったといったほうがいいかもしれない。

確かにこちらのほうが卵はいいのだが、俺が言いたいのはそこじゃない。

その以前のやせ細った体でも手のひらに水を湧かして飲めと勧めてくるのではなく、

瓶に移せばいいのだということだった。


これ以上女子は増やさないよっ 疲れるからねっ

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